1997.10.10

When Disaster Strikes...
Busta Rhymes
(Elektra)
 詳しくは今月出る『ミュージック・マガジン』誌のアルバム・ピックアップに書いたので、そちらを参照していただくとして。

 ウータン・クランか内輪もめでぼろぼろになりつつある今日このごろ。次を狙ってるのは、間違いなくこいつだね。バスタ・ライムズ。自ら率いるフリップモード・スクワッドを次代のウータンにすべく、ちょっと前にリリースされたランページのアルバムと、このセカンド・ソロで大進撃……って感じ。

 ファースト・ソロのときの大バカ・パワーは、たぶん意識的に抑え目に。DJスクラッチやパフィなど、多彩な外部プロデューサー陣を迎えて、まるでア・トライブ・コールド・クエストみたいにクールなオケを聞かせたり、エリカ・バドゥとスウィートなデュエットを聞かせたり、フリップモード・スクワッド総出演でまさにウータンなみのドープでダークな世界を作り上げていたり。飽きさせません。が、個人的ベスト・トラックはバスタ本人のプロデュースによる「ターン・イット・アップ」だなぁ。アル・グリーンの定番ネタを使いながらファンキーにごつごつキメてくれる。

 しかし、この人のラップのタイム感って、抜群だね。


Umpteen
Ross Rice
(E-Squared)
 注目のブラッド・ジョーンズがプロデュース。もちろんレコーディングはナッシュヴィルにあるブラッドのスタジオ“アレックス・ザ・グレート”で。

 ってことしか情報がないですが(笑)。ロス・ライスって、あのメンフィスとかのシーンでちょくちょく名前を見るロス・ライスなのかなぁ。エイドリアン・ブリューのアルバム『ヒア』で「アイ・シー・ユー」ってバカ・ポップな曲を共作していたロス・ライスかなぁ。よくわかりません。

 でも、さすがにブラッド・ジョーンズと組むだけあって、ソウル、パワー・ポップ、カントリー・ロック、フォーク・ロックなどなど、その辺の魅力がたっぷりの佳盤。アメリカの、しかも南部のポップス好きによる1枚って感じです。ぐー。


Peace And Noise
Patti Smith
(Arista)
 前作『ゴーン・アゲイン』が8年ぶりの新作だったことを考えると、今回は驚異的なハイスピードでのリリース。1年ちょっとのブランクで登場したパティ・スミスのニュー・アルバムだ。

 『ゴーン・アゲイン』は亡夫フレッド・スミスや故カート・コバーンに捧げられた1枚だったせいか、あるいは久々の1枚だったせいか、今にも壊れてしまいそうな緊張感に貫かれた傑作だったけれど、今回のアルバムはぐっと力強さを増したバンド・サウンドが楽しめる。復活後のツアーなどの成果かもしれない。夫を亡くしてから、パティさんはデトロイト郊外の家を離れ、ふたたびニューヨークへとやってきたのだとか。そんな意欲が詰め込まれた仕上がりだ。

 マイケル・スタイプが客演した「ラスト・コール」って曲では、例のヘヴンズ・ゲイトの集団自殺のことを取り上げていたり、「デス・シンギング」って曲ではエイズの犠牲者のことを歌っていたり、「デッド・シティ」なんて曲があったり。“死”にまつわるイメージが全体を覆ってはいるけれど。しかし、パティ・スミスは今とてもポジティヴだ。外に向かってきっちりと自らを表現しようとしている。

 ギンズバーグの詩を引用した曲や、スタジオでの一発インプロヴィゼーション曲もある。やっぱり並みじゃないです、この人。


With A Twist...
Todd Rundgren
(Guardian)
 おいおい。

 もう、フツーのCD出すの、やめたんじゃなかったっけ? 通常のアルバム形式で新作を発表するのはやめて、すべてをインターネット上から発信するとか言ってたような気がするトッド・ラングレンですが。出ました、新作が(笑)。

 といっても、純粋な新作じゃないから、いいのかな。「アイ・ソー・ザ・ライト」やら「ハロー・イッツ・ミー」やら「キャン・ウィー・スティル・ビー・フレンズ」といった自らの代表曲や、マーヴィン・ゲイの「アイ・ウォント・ユー」などを、すべてボサ・ノヴァでリメイクした1枚です。裏ジャケに、“俺はまじだぞ”という文章も載ってますが、その横の写真は、素っ裸で水につかってるトッドさんです。アルバム・タイトルは、ちょっとひねりを入れました、ってとこか。

 いい曲をほんわか聞かせてくれるアルバムで。当然、聞いてて楽しいです。文句はないです。別に。でもなぁ……(笑)。


One Step Up/Two Steps Back:
The Songs Of Bruce Springsteen
Various Artists
(Right Stuff)
 ソウルものからパワー・ポップまで、面白いラインアップの再発を続けてるライト・スタッフ・レーベルから、なんと2枚組のブルース・スプリングスティーンへのトリビュート盤が出た。再発レーベルらしく、2枚目のほうは全14曲すべて既発作品をコンパイルしたもの。でもって、1枚目のほうが、やはり全14曲、すべて新録だ。

 さすがに既発ものは豪華なラインアップ。ドナ・サマー、ジョー・コッカー、エリオット・マーフィー、ナック、デヴィッド・ボウイ、ソニー・バージェス、ゲイリー・US・ボンズ、クラレンス・クレモンズ、サウスサイド・ジョニー、リッチー・ヘヴンスなどなど。で、新録のほうは、マーシャル・クレンショー、スミザリーンズ、ジョン・ウェズリー・ハーディング、ニルス・ロフグレン、ジョン・ハイアット、シド・ストロー、ベン・E・キング、ジョー・グルシュキーなど……と、これまたちょっと渋めでうれしいラインアップ。

 パフォーマーとしてのスプさんは熱すぎてちょっと……という人も、これ聞けば、そのソングライティングの深い才能に納得するんじゃないかなぁ。


The Dusty Springfield Anthology
Dusty Springfield
(Mercury)
 この人のベスト盤はずいぶんたくさん出ていたけど。ようやく決定版の登場って感じ。ポリグラム・グループの意欲的な再発シリーズ“クロニクルズ”の一環として出たCD3枚組です。

 ダスティの場合、まず兄貴のトムさんたちと組んでいたフォーク・グループ、スプリングフィールズ時代があって、「二人だけのデート」とか「ステイ・アホワイル」とかポップ曲で当たりをとって、「この胸のときめきを」みたいなカンツォーネ歌手的な側面もあって、バカラック・ナンバーの歌い手としても有名で、かと思えばキャロル・キング作品でもいい味を出していて、さらにメンフィスでのファンキーな名録音もあって、近年はペット・ショップ・ボーイズとのコラボレーションもあって……と、全体像をつかむのがちょっと大変だったりするのだけれど。今回はCD3枚めいっぱい使って、その全貌をうまい具合にまとめあげている。ありがたいっす。

 これで、リチャード・カーペンターのソロ・アルバムに客演したときの曲とかも入っていれば、もう文句なしだったんだけど。そこだけ、個人的にはちょっと残念。小さい文句ですけど。


Essential The Beach Boys:
Perfect Harmoby
The Beach Boys
(Capitol)
 EMI/キャピトルの100周年記念シリーズの一環として出たビーチ・ボーイズのベスト。選曲的には、けっこう最近っぽいというか、いきなり「太陽浴びて」でスタートしちゃったりする裏ベスト的なものに仕上がっている。副題の「パーフェクト・ハーモニー」ってのがテーマなのかな。

 間もなく出る「ペット・サウンズ・ボックス」から「神のみぞ知る」のオリジナル・モノ・ヴァージョンや「素敵じゃないか」のヴォーカル・オンリー・ヴァージョンがいち早く収録されていたりするのも面白い。「ハッシャバイ」と「ホエン・アイ・グロウ・アップ」はヴォーカル/コーラスのバランスがぐっとでかいヴァージョンで収録。「イン・マイ・ルーム」もデモ・ヴァージョン。

 その他、「サーファー・ガール」「スループ・ジョン・B」「アンド・ユア・ドリーム・カムズ・トゥルー」「ドント・ウォリー・ベイビー」「アイ・キャン・ヒア・ミュージック」「カリフォルニア・ガールズ」「ドゥ・イット・アゲイン」「アワ・プレイヤー」「グッド・ヴァイブレーションズ」という選曲です。もうちょっと突っ込んでほしかった気がしないでもないけど、これはこれで……ってとこかな。

 いちおうジャケットには"Limited Edition"って書いてあります。おさえとかないと、ね(笑)。



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