The Wilsons The Wilsons (Mercury)
ブライアン入りの親娘3人組で契約した……とかいうニュースも流れていたけれど、結局はカーニー&ウェンディのデュオだったみたい。パパ寄りの視点で接すると、特に興味深いのが名曲「ティル・アイ・ダイ」のカヴァーと、ブライアン&トニー・アッシャーという“ペット・サウンズ・コンビ”による「エヴリシング・アイ・ニード」の2曲かな。「ティル・アイ・ダイ」のアレンジは、んー、ちょっと無理してる感なきにしもあらずだけど、「エヴリシング・アイ・ニード」のほうはいい曲ですよ。その他、パパはキャロル・キング作の「マンデイ・ウィズアウト・ユー」と親娘共作曲「ミラクル」の4曲で元気なヴォーカル/コーラスを聞かせている。
まあ、そんなとこです。わりといい曲もあるけれど、ぼんやりした曲も多い、と。それなりに好意を抱きつつ聞かないと、なんてことないフツーのポップスって感じかも。ウィルソン・フィリップスのころもそうだったんだけど、個人的にはあまり盛り上がらない仕上がり。やっぱ、パパの新作を待ってます。
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Moon Hut Kim Fox (Dreamworks)
ドゥワップの名曲「テル・ミー・ホワイ」のオリジネイターとしてオールディーズ・ファンにはおなじみの白人黒人混合ヴォーカル・グループ、ザ・ロブロイズのリード・シンガーだったノーマン・フォックスの娘さんなんだと。ドリームワークス・レーベル初の女性アーティストとしてデビュー。
もともとはクラシックをやっていたそうで、その後ジャズにも手を染め、ポップ・フィールドに進出してきたのは3年ほど前からだそうだ。とはいえ、やっぱ血筋がモノを言ってるのか、ローラ・ニーロとかキャロル・キングとかパティ・スミスとか、ニューヨーク出身のシンガー・ソングライターが否応なく持っている“あの感触”――ソリッドさとスウィートさが交錯するあの感じが根底に流れているみたいで。悪くない。
正式なクラシック教育を活かしたアレンジも、ジャズ時代に培った歌心も、全部まとめて彼女ならではの音世界へと結実させている。内省的で、かつ表現力にも富んだ歌詞も印象的。ブルース・スプリングスティーンの「アトランティック・シティ」のカヴァーなんかもあって。いい感じっす。
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The Lateness Of The Hour Eric Matthews (Sub Pop)
セカンド・アルバム。95年の『It's Heavy in Here』はかなりオーケストラ色の濃いアレンジになっていたけれど、今回はわりとフツーのコンボ・バンド編成で聞かせる曲も目立つ。とはいえ、幻想的なストリングスが入った曲もあるし、本人のフリューゲルホーンをはじめ洗練されたホーンのフレーズをうまく導入した曲もあるし、さらに本人はハープシコードとかも弾いているし。バンドっぽい曲でもエコー感とかエフェクト類をうまく使いながら豊潤な音像を構築。ちょっとくぐもった感じのエリックさんの歌声とあいまって、なんとも深い世界を作り上げている。
突き抜けない歌声にフラストレーションを覚える瞬間もあるにはあるけれど、曲もそこそこうまく作られているし、アレンジも緻密だし、まあ、歌声もサウンドのひとつとして楽しむべき1枚か。ジェイソン・フォークナーとスプーキー・ルーベンもバックで参加。
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Seen A Ghost The Honeydogs (Debris/Mercury)
ミネアポリスを拠点に活動するハニードッグズの3枚目。待望のメジャー・デビューだ。リプレイスメンツ、ソウル・アサイラムといった先輩ミネアポリス・バンドの持ち味を受け継ぎつつ、ボブ・ディランやザ・バンドの伝統にも目を配り、ウィルコを筆頭とする最近のオルタナ・カントリーの味や、ジェイソン・フォークナー的なパワー・ポップ感も取り入れ……という、なかなかにしぶとい音作り。
アル・クーパーが数曲、キーボードで参加している。ちょっと皮肉っぽい歌詞も、雰囲気です。
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The Dance Fleetwood Mac (Reprise)
いきなり全米1位になっちゃって。おー、リンジー・バッキンガムとスティーヴィー・ニックスが戻って、黄金期のメンバー勢揃いかぁ……と、輸入盤屋さんで勇んで買い求めたものの。聞いていてあまり盛り上がらない。おかしいなと思ったら、そうそう、ぼくは昔からあんまりマックのこと好きじゃなかったのでした(笑)。
MTVアンプラグドのための再結成ライヴ盤だけど、同じ趣向でリリースされたイーグルスの盤のほうが個人的には興奮したな。体験の薄さが原因だろう。好きだった人にはこの上ない贈り物だと思う。イーグルス同様、完全にアンプラグドというわけではなく、わりとフツーにバンド演奏してます。
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The Big Picture Elton John (Rocket)
ちょっと不謹慎な言い方ですが。今、世界でいちばん“おいしい”男となったエルトン・ジョンの新作。例の替え歌は入っていないけれど、売れるだろうなぁ。全曲、朋友バーニン・トーピンの作詞、エルトンの作曲、クリス・トーマスのプロデュース。黄金のラインアップで堂々と迫る。
でも、売れて当然というか。特に新たな刺激はないけれど、出来自体はかなりいい。ミディアム以下の荘厳な曲が多いのは最近のエルトンの持ち味。彼ならではのゴスペルっぽさ、ソウルっぽさも盛り込まれてはいるものの、全体の手触りはかなりクラシカルだ。パバロッティとのデュエットで既発の「リヴ・ライク・ホーシズ」の単独ヴァージョンも聞ける。
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