Pick of the Week


Music Evolution
Buckshot LeFonque
(Columbia)



 ウィントン・マルサリスの兄弟で、ソロ名義でスピーディでかっこいいストレート・アヘッドなジャズ・アルバムをリリースしたり、スパイク・リーの映画で音楽監督やったり、TV『トゥナイト・ショー』のハウス・バンド仕切ったり、スティングやパブリック・エネミーと共演したり……と、多彩すぎる活動を続けているブランフォード・マルサリスのヒップホップ・プロジェクト、バックショット・ルフォンクのセカンド・アルバムだ。

 もともとはDJプレミアとのコンビネーションの中で94年に誕生したバックショットだったけれど、今回はプレミアの参加はなし(日本盤にはプレミアのリミックスによる2曲も収録したボーナスCDが付いているらしい)。そのかわりなのか、どうなのか、今回はグールーや50スタイルズ:ジ・アンノウン・ソルジャーがゲスト参加。なんとデイヴィッド・サンボーンやブランフォードの弟にあたるトロンボーン・プレイヤー、デルフィーヨ・マルサリスも演奏に加わっている。

 ロンドン発のアシッド・ジャズとやらには辟易したものだけれど、あれとはまったく違う。さすがブランフォード。ヒップホップには現在進行形のジャズとしての側面もあるとぼくは思っているのだけれど、バックショット・ルフォンクは、そうした現在進行形のスタイルと伝統的なスタイルとを見事に融合してみせてくれる。

 スピーディなスクラッチとハード・バップとがごきげんに交錯する「ジェームス・ブラウン(パート1&2)」って曲とか、盛り上がるぞ。50スタイルズ:ジ・アンノウン・ソルジャーがクールなラップを聞かせるアルバム・タイトル・チューン「ミュージック・イヴォルーション」もいい。連綿と流れるアフロ・アメリカン・ミュージックの歴史にも言及した意欲的な作品だ。グールーが客演した「ブラック・マンデー」もクールでブルージーなスウィンギン・ヒップホップ。ワウ・ギターがうなる「マイ・ウェイ」はファンキーでラウドなブラック・ロック。ハード・バップ+ドラム・ン・ベースって感じの「ジャングル・グルーヴ」も、まあ、ひねりのない融合といえばそれまでだけど、ジャズ演奏のほうが本格仕込みだけにばっちり聞かせる。この曲とか「サンバ・ホップ」って曲とかは、ディジー・ガレスピーとチャーリー・パーカーがかつてトライしていたラテン・ジャズの現在形って感じもある。

 甘々の歌ものアーバン・バラードみたいなやつもあって、そういうのはぼくはちょっと……って感じなのだけれど。アルバム全体を貫く躍動感がうれしい一枚。ファースト・アルバムもまた聞き返したくなったぜっ。