Reviews   Music


Perfect From Now On
Built to Spill
(Warner Bros.)


 Kレーベルに在籍するハロー・ベンダーズのメンバーでもあるアイダホ出身のダグ・マーシュ(って読むのかな? Doug Martshです)によるプロジェクト。過去インディーズから出したアルバムは、彼が自分のコンセプトを形にするために多重録音したり、曲によって違うメンバーを集めたりして作ったものだったみたい。ぼくは聞いたことないんだけど。

 でも、今回メジャーに移籍してリリースされた本作から、どうやらバンド・メンバーがパーマネントなものになったようだ。ダグ君の作る物思いにふけったような、なんとも内省的な美メロを、力強くはあるけれどどこか不安定なサウンドでがっちりバックアップしてみせる。

 どの曲も長くて、ほとんど6分以上。えんえんと同じビートとフレーズを繰り返す中で奇妙に求心力のあるグルーヴが生まれていて。そのグルーヴを縫うようにダグ君の胸しめつける歌声が舞う。

 静かな興奮に満ちた一枚って感じ。



The Beauty Process: Triple Platinum
L7
(Slash/Reprise)


 なにやら、ようやく時代と折り合いがついたというか。5作目にして、ついに最高傑作の登場だ。

 ロサンゼルスのガール・ロック・バンド、L7の新作。ベーシストだったジェニファー・フィンチが抜けてしまい大ピンチに直面したはずの彼女たちだけれど、とりあえずギターのドニータ・スパークスがベースを弾いたり、ゲスト・ベーシストで急場をしのいだりしつつ、よりでっかいサウンドをぶちかましてみせた。災い転じて……ってやつだ。

 プロデューサーはグリーンデイとかを手がけるロブ・キャヴァロ。ジョーン・ジェットあたりの現代版と考えるのがいちばん手っ取り早いのかもしれないけれど、それよりももっと昔、シャングリラスとか、あの辺のちょっと不良っぽい60年代ガール・グループの雰囲気を今ふうにリメイクしたバンドとして理解したほうがぐっとくる。

 ドニータ・スパークスとスージー・ガードナーというギター&ヴォーカルの2枚看板がそれぞれ単独で、あるいは共作でいい曲をたくさん書いてます。かっちょよいおねーたまたちだなぁ。今は元ベリーのゲイル・グリーンウッドを新ベーシストとして迎え、ばりばりやってるとか。よかったよかった。



Show World
Redd Kross
(This Way Up/Mercury)


 中心メンバーのジェフ・マクドナルドって、元ゴーゴーズのシャーロットと結婚したんだって?

 そんなことは置いといて。レッド・クロスはいいよねー。ジェリーフィッシュはそこそこ日本でもウケたのに、こいつらがなんで今いちウケないのか、不思議です。91年の『Third Eye』も93年の『Phaseshifter』もぼくにとってはごきげんな仕上がりだった。どうなんだろう、世の中的には(笑)。

 まあ、確かに、今も60年代や70年代のロックが誰からも深く深く愛されているようなパラレル・ワールドで暮らしているみたいな連中だから。現実感がなさすぎるのかもしれない。

 でも、オアシスがあんなに売れる世の中だから。その勢いにのって、レッド・クロスも売れちゃえばいいなぁ。ビートルズっぽさにかけちゃこいつらのほうがずっと古株なんだし。屈折率はこっちのほうが断然高いけどね。

 ジェフ君のジョン・レノン声炸裂のバラードもあり。



Moonbathing On Sleeping Leaves
Sky Cries Mary
(Warner Bros.)


 ローリング・ストーンズよりも、坂本龍一よりも、佐野元春よりも早くインターネット上でライヴをぶちかましたことで知られるスカイ・クライズ・メアリーの新作。ついにメジャー・レーベルに移籍しての意欲作だ。

 以前よりもエッジがシャープになった感じ。インダストリアルっぽさは今も残っているけれど、ギター中心のミックスがなされ、かなりポップになってきた。ギターを担当するマイク・コッジの才能が一気に開花した感もあり。

 アルバム・タイトルと関連した「Moonbathing」って曲あたり、やる気のないB52ズみたいで面白い。アコーディオンや12弦の生ギターが印象的に使われた「Gliding」って曲とかも、往年のイッツ・ア・ビューティフル・デイみたいなサイケデリック・フォークっぽさが漂っていて悪くない。暗いけど(笑)。

 リード・ヴォーカルのアニサさんの歌声もますます沈鬱。みがきがかかってきてます。



Secret Samadhi
Live
(Radioactive)


 ポストREMとか言われているんだっけ?

 94年に出たセカンド・アルバムが95年になってからじわじわ売れ続け、アメリカでは600万枚に達したバンド“ライヴ”、久々のサード・アルバムだ。前作の大ヒット以降、やっぱ凄絶なツアーを続けてきたのかな。太さ、メリハリが一層増した感じ。

 アメリカのチャートでやたら名前を見るようになってから、セカンド・アルバムを購入したのがぼくのライヴ初体験。そのときの正直な印象は、なんだか妙に“まじ”なバンドだなぁ……ってものだった。まじだから悪いとは思わないけど、なんとなく、こう、無口そうで笑わなそうな重い雰囲気が、ぼくの趣味に今ひとつハマってくれずじまい。

 そんな印象はこの新作でも基本的に変わらないのだ。でも、今回のほうがすんなり楽しめたのはなぜ? 3年の歳月が彼らをより一層タフにしたからかな。ヴォーカルのエドワード君の歌声もますますドラマチックになっているし。ストリングスとノイジーなギターとが妖しく交錯する曲とか、アレンジ面でもいちだんと成長しているみたいだし。

 確かに相変わらずREMクローンっぽい作品も多い。パール・ジャム、カウンティング・クロウズ、レディオヘッドといった連中からの影響も少なくないようだ。ビートルズっぽいニュアンスも曲によっては見え隠れする。それも含めていい曲ぞろいのいいアルバムに仕上がってる。

 もう売れてるみたいね。けっこう。