Pick of the Week


Loaded Fully Loaded Edition
The Velvet Underground
(Rhino/Atlantic)



 ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの実質的ラスト・アルバム『ローデッド』の完全版だ。

 このアルバム、実はぼくにとってヴェルヴェッツの最高傑作だったりする。退廃的で妖しいポップ・センスが充満したファースト『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』、攻撃的な緊張感に満ちたセカンド『ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート』、軽快なサウンドと美しいメロディが印象的なサード『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド』に続いて、1970年にリリースされた作品。前3枚とは明らかに肌触りの違うポップなアプローチに関する賛否がファンの間でよく取りざたされたものだ。

 おなじみのエピソードだけれど、70年の夏、このアルバムがレコーディングされていたころ、ヴェルヴェッツはニューヨークの<マックス・カンサスシティ>に長期出演中。そこでの最後のライヴを終え、ルー・リードは突然バンドを脱退してしまった。結成以来5年、えんえんと続いたセールスの不調とジャーナリズムからの拒絶に疲れた……というのが脱退理由らしいけど。

 いずれにせよ、そのおかげで本盤はルー・リード抜きでトラックダウン/編集されて、リリースされた。ルー・リードはこの仕上がりを気に入っていないという話もある。確かにアルバム全体のまとまりは今ひとつかな、とは思う。

 でも、それにしたってこのアルバムは名盤だ。「スウィート・ジェーン」「ロック&ロール」という、後世に残るルー・リードの傑作曲も入っているし、一般的な評価は今いちながら「ニュー・エイジ」「トレイン・ラウンド・ザ・ベンド」「オー・スウィート・ナッシン」なども素晴らしい楽曲。冒頭を飾る「フー・ラヴズ・ザ・サン」のバカポップ・アレンジもごきげんだし。ニコもジョン・ケイルもいないヴェルヴェッツなんかヴェルヴェッツじゃない、と主張するタイプのファンの間では思っきし評価の低いアルバムだけど、ルー・リードに焦点を当ててヴェルヴェッツの歴史を振り返るならば、間違いなく本盤こそが活動のピークを記録した1枚だ。

 でもって、そんな『ローデッド』の完全版なわけです。オリジナル盤に収録されていた10曲のうち、今回は「スウィート・ジェーン」と「ロック&ロール」がフル・サイズ・ヴァージョン。「ニュー・エイジ」はロング・ヴァージョン。この3ヴァージョンは95年に出たボックス・セット『Peel Slowly And See』に収められていたのと同じものだ。

 さらに、この全10曲の別ヴァージョンががそっくりそのままの曲順で収められている。これは、別ミックス・ヴァージョン、デモ・ヴァージョン、ファースト・アレンジ・ヴァージョンなど取り混ざっているけれど、すべて今回が初出。加えてデモやら没テイクやらを含めたボーナス・トラックが全13曲。うち6曲はやはり前述したボックス・セットで聞けたものだが、7曲は初出。

 ヴェルヴェッツにとって最後のスタジオ・アルバムとなった『ローデッド』セッションの模様を、よりいきいきと追体験できる。