Brighten The Corners
Pavement
(Matador)
4枚目。
やっぱり、こいつらは深い。前回紹介したガイデッド・バイ・ヴォイシズとか、だいぶ前に紹介したセバドーとか、そういう、なんつーか、こう、内省的にあらゆる価値観を破壊するみたいなタイプのバンドの頂点にペイヴメントは位置しているのだと思う。
ものすごく思い詰めているようでいて、でもかなりクールで、なのになんとも切なくて、それでいてロック……と。やー、90年代だなぁと思うのだ。ファースト・シングルとなったアルバムのオープニング・チューン「ステレオ」とか、それに続く「シェイディ・レイン」とか、さらに短いインストをはさんで出てくる「トランスポート・イズ・アレンジド」とか、もうしみてしみて。
Comic Book Whore
Jane Jensen
(Flip/Interscope)
かなりイカれたおねーちゃんだと思います。いけます。
もともとはインディアナ出身らしいけれど、現在はニューヨークを拠点にしているのだとか。インディーズのフリップ・レコードから出たソロ・デビュー盤を、今ノリにノっているインタースコープ・レコードが買い上げてのメジャー・デビューだ。インダストリアル・グルーヴ……って感じの、少々きつめのバック・トラックに乗って、時にエキセントリックに、時にコケティッシュに、時にセンシュアルに歌いまくる。
全曲とも、プロデュースを手がけたクレイグ・カフトンとの共作。シュールで内省的な歌から、破壊的にはじけるものまで。守備範囲はけっこう広い。うまい具合に転ぶと、大当たりするかもね。女優もやってるらしいし。
Blunt Special Blends
Various Artists
(Blunt Recordings)
ロイヤル・フラッシュ、マイク・ジェロニモ、バウンティ・キラーといった、そこそこすでに名をなしている連中と、ムード、ワイルドライフ・ソサイエティ、キム・スウェインというこれからの連中とを半々に収録したヒップホップ・コンピレーション。
クラシックのようなヴァイオリンのフレーズをループさせて奇妙な浮揚感を演出するロイヤル・フラッシュ。マーヴィン・ゲイをうまくサンプリングした猥雑なオケが印象的なマイク・ジェロニモ。RZAがアレンジを手がけた“もくもくの”オケに乗って、独特のジャマイカン・スタイルのラップを展開するバウンティ・キラー(レイクウォンがゲスト参加し、対照的に切れ込み鋭いラップを聞かせているのもかっこいい)。
新人組のほうもがんばっている。ムードはキャッチーなラップ、ワイルドライフ・ソサエティは懐かしのニュー・ジャック・スウィング調のヴォーカルを絡めながらのクールなラップ、そしてキム・スウェインはお得意の歌声をたっぷり披露。
6組それぞれのニュー・アルバムへのお手軽なサンプラーってとこでしょう。
Gridlock'd / The Soundtrack
Various Artists
(Death Row/Interscope)
2パックが主演していながらなぜかオクラになっていた映画が、彼の死を経て公開されることになったらしい。
で、これはそのサントラ盤。2パックを筆頭とするデス・ロウ絡みの連中がドカッと参加していて。なんか『アバヴ・ザ・リム』とか『マーダー・ワズ・ザ・ケイス』とか、ギャングスタ・ラップがいちばん盛り上がっていたあのころを思い出すぜ。
で、当時のぼくはこういうサントラ盤を聞きながら、新しい時代のグルーヴに心底盛り上がっていたのだけれど。じゃ、この盤はどうなのかといえば、これがね、懐かしい気分にしかしてくれないのでした。
もちろん、スヌープ・ドギー・ドッグと2パックが共演する曲とか、『アバヴ・ザ・リム』のころも大好きだったザ・レディ・オヴ・レイジのルーズでファンキーなラップとか、ダニー・ボーイの胸しめつけるスウィート・ソウルとか、みんないい出来なんだけど。
でもね、やばい感じがしないんだよなぁ。こういうタイプのヒップホップってのは、今やMORなのかも。そういう耳で聞けば、いろいろバラエティに富んでて楽しいか。
この感じ、スヌープのニュー・アルバムに対して覚えたものと同じ。デス・ロウはすっかり安定期に入ったってことだね。でも、安定したヒップホップなんて、なんぼのもんだよ。ほんと、ロックと同じ道をたどってるな、ヒップホップは。
Brigid Boden
Brigid Boden
(A&M)
ケルティック・アンビエント・ハウス・ヒップホップって感じでしょうか。なんだかわかんないけど。
アイリッシュのシンガー・ソングライターだそうで。ポール・マッカートニーやエルヴィス・コステロ、デヴィッド・ボウイなどとも仕事しているキーボード・プレイヤー、ケヴィン・アームストロングがプロデュースしている。
フィドルやらバグパイプやらがひらひら舞う中、ハネぎみの打ち込みドラムがビートを刻み、ディストーション・ギターが鋭く切り込み、スクラッチがどぼどぼどぼっと炸裂し、そして軽やかなコブシをともなった独特のささやき声のようなヴォーカルが聞こえてくる、と。
けっこうベタな新旧文化の混合かなとも思うけれど、むしろこのわかりやすさが歓迎されるかも。
Freak Show
Silverchair
(Epic)
オーストラリア出身のお子ちゃまオルタナ・ハード・ポップ・バンドのセカンド・アルバム。といっても、歳月はちゃんと流れているわけで。デビューしたころ、全員15歳だった3人のメンバーも、今では17歳が二人と16歳が一人。デビュー盤が当たったために激烈なワールド・ツアーもこなしてきた。すっかり大人になったシルヴァーチェアの姿が、この新作には詰め込まれている。
もちろん、ね。歌詞もメロディもサウンドも、彼らが大好きであろうニルヴァーナとかの深みのある世界には到底たちうちできない段階ではありますが。それでもアコースティックな手触りをたたえた曲とかでの成長ぶりはうれしい。放課後ロックンロール的な青春っぽい切なさもあるし。若さゆえの暴走みたいなヘヴィーさもあるし。
まあまあ、かな。
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