Reviews   Music


Billy Breathes
Phish
(Elektra)


 前作が2枚組ライヴだったけど。あのアルバムでぼくはようやくフィッシュの本領というか、どこが人気の原因なのかをわかったような気がした。この人たち、やっぱりREMをはじめとする多くのアメリカのバンド同様、タフなバンドなんだね。レコードで聞いていると、つい、もっと繊細な、弱々しいメンタリティを持った連中なのかなとか、ひねくれたノヴェルティ・バンドみたいだなとか思うけど。そんなことはなくて。

 いや、確かに繊細なメンタリティとか、ひねくれまくりの諧謔精神とかはしっかり持ち合わせているのだろうけど、それ以上にタフ。ライヴ盤のブックレット見てたら、ドラムのやつとかハダカになってるしさぁ(笑)。カントリー・ロック・バンドかな……と思うと、曲によってはホーン・セクションなんかも導入してるし。突然ジャジーな長い長いインプロヴィゼイション合戦が展開されたりするし。そんな感じで各地をえんえんツアーして回って、気絶してでも演奏できるぐらいになっていて。そんな“強さ”と“うまさ”を下敷きにしてこそ生まれてくる繊細なロック、というか。

 要するに、チカラがあるってことですよ。で、そのチカラを、実際にライヴを体験できないぼくたちにも思い知らせてくれるライヴ盤を売りまくって一段落。また新たな一歩を踏み出し始めた7枚目です。今回はいつも以上にアコースティカルな、メロウな側面を強調した仕上がり、かな。よく引き合いに出されるグレートフル・デッドに例えて言えば、前ライヴ盤が『ライヴ/デッド』で今作が『ワーキングマンズ・デッド』って感じ。わかる人にはわかるでしょ、このニュアンス。で、『ワーキングマンズ・デッド』好きだったぼくとしては、当然このフィッシュの新作も大のお気に入りなわけです。

 これまでの彼らのスタジオ・アルバムに付き物だったひねくれ感覚はちょっと影をひそめて、作品として“いい曲”がそろってる。ピック・オヴ・ザ・ウィークにしたかったぐらい気に入ってる一枚です。



Live From Mars
Roger McGuinn
(Hollywood)


 これねぇ。

 バーズ好きとしてはですね、そりゃ買うしかないなぁと思って買ったわけですが。でね。ソロ・アルバムなわけだけど。ホントにソロなんだよ。まじに。ひとり。ひとりでギター弾きながら、昔のロックンロールとか、カントリーとか、バーズの曲とかを歌いまくったライヴ盤。自主アンプラグドとでもいうか。

 聞くところによると、近ごろマッギンさんはこういう形式で各地のクラブとかでライヴしてるらしくて。その感じを楽しめる一枚です。いきなり生ギターで「ハートブレイク・ホテル」歌ってスタート。「ベルズ・オヴ・リムニー」とか「ターン・ターン・ターン」とか「霧の8マイル」とか「ソー・ユー・ウォナ・ビー・ア・ロックンロール・スター」とか、バーズものもたっぷり。「ミスター・タンブリン・マン」なんか、アコースティック・ヴァージョンとエレクトリック・ヴァージョンと二つ入ってます(笑)。

 リッケンバッカー12弦の響きはとっぷり楽しめます。バーズが好きな人なら、それなりに興味深いかもしれない。スタジオで、ちゃんとしたバンド編成で録音された新曲も2曲入っているし。でも、お若い方々にはオリジナル・ザ・バーズのアルバムをおすすめしますよ。



Mo' Thugs Family Scriptures
Mo' Thugs
(Mo' Thugs/Relativity)

 ボーン・サグズ・ン・ハーモニーを取り巻く人脈によって設立された新レーベル“モ・サグズ”のお披露目的アルバム。

 アルバム全17曲中、レイジー・ボーンとクレイジー・ボーンをフィーチャーしたものが半分くらい。それを中心に、あの泣かせの大ヒット「クロスローズ」でも冒頭でいかしたコーラスを聞かせていた女の子3人組のトレとか、女の子二人組の2トゥルーとか、ポエティック・ハスラズとか、グレイヴヤード・シフトとか、ケン・ドーグとか、ソルジャー・ボーイとか、トムストーンとか、そういった若手サグズ・ファミリーが勢揃いしてパワーをアピール。

 ボーン・サグズ・ン・ハーモニーの持ち味である、ちょっとラガマフィンの要素を取り入れつつ、なんだかブツブツ言ってるような、こう、つぶやきシローみたいな複数ラップ・スタイルをそれぞれのやり方で発展させていこうとする意欲が楽しい。

 次なるスターがいるかもね、この中に。



Beavis and Butt-Head Do America
Original Motion Picture Soundtrack
(Geffen)



 映画になったんだね。

 当然、MTVらしいセンスを全開にした人選による派手なサントラ盤。ノッケは、映画のテーマと言えばやはりこの人……ってことなのでしょうか。アイザック・ヘイズがチャカポコ・ギターをフィーチャーして低音でナレーションをぶちかます曲でスタート。続いて、現在ヒット中、レッド・ホット・チリ・ペパーズがオハイオ・プレイヤーズの代表曲をカヴァーした「ラヴ・ローラーコースター」。この2曲の展開だけで、ゲッと思っちゃう人と、むちゃくちゃ喜ぶ人と、くっきり分かれるだろうな。

 ワタシは喜びました。お調子者ですから。

 そのあとも、ホワイト・ゾンビ、ノー・ダウト、LLクールJ、マッド・ヘッド、AC/DC、オジー・オズボーンなどなど、新旧入り乱れながらビーバス&バットヘッド好みの顔ぶれが続々。で、ラストはぬわーんと、エンゲルベルト・フンパーディンク歌うところのムーディな「レズビアン・シーガル」なる曲。念が入ってます。



NBA At 50
Various Artists
(Mercury)


 NBA50周年を祝うコンピレーション。バスケットボールおよびスポーツおよびスポーツ観戦がらみの曲のオンパレード。実に豪華なメンツがそろってます。

 ノッケは、マーヴィン・ゲイがアメリカ国家を彼独自のビート感で見事にリメイクした83年、NBAオールスター戦での伝説のパフォーマンス。続いてクール&ザ・ギャングの「スラム・ダンク」。他にも、ボビー・ウーマックがルイ・ジョーダンの「レット・ザ・グッド・タイムズ・ロール」をファンキーにリメイクしていたり、テイク6がドリフターズの「ジス・マジック・モーメント」をカヴァーしていたり、デヴィッド・サンボーンがジュニア・ウォーカーの「ショットガン」をぶちかましていたり、ノーティ・バイ・ネイチャーの「ヒップホップ・フーレイ」が入っていたり。気楽に楽しめる仕上がりです。

 新曲はクリスタル・ウーォターズ、ヴァネッサ・ウィリアムス、ジーナ・トンプソンが披露。

 でね。これ、NBA公認の通し番号が入ってるですよ。でも、その通し番号の入ったシールが輸入盤をくるんでいる薄いビニールの上に貼ってあって。破けないんだよぉ。通し番号マニアとしてはどうしたらいいものやら……。困ってます。