Reviews   Music


Fashion Nugget
Cake
(Capricorn)


 トランペットを含む5人組のチープな絵が描かれたファーストを買ったのが、だいぶ前。もう2年くらい前なのかな。レーベルがわれらオールド・サザン・ロック・ファンにとっては抗いようのないキャプリコーンだったりしたもんだから。脳天気なテックス・メックス野郎どもか……? と思って買ったんだけど、そうでもなくて。けっこうインテリっぽい、まあ、いわばデヴィッド・バーンとか、そういうやつに通じる味が印象的だった。

 で、そんなケイクのセカンド。CMJとかのチャートでもずいぶんと目立っていたりして。ぐんと成長した音を聞かせてくれる。シングル・チャートでも健闘しているグロリア・ゲイナーのヒット「I Will Survive」のカヴァーとか、「キサス・キサス・キサス」の英訳ヴァージョンとか、ウィリー・ネルソンの「Sad Songs And Waltzes」のカヴァーをポイントポイントに配しながら、妙な吸引力に満ちた、タイトで、しかし粘っこいグルーヴを聞かせてくれる。リード・ヴォーカルがなんたって魅力的だなぁ。

 隙間だらけのくせして、ばっちし太い音像がむちゃくちゃ気分だ。ヒップホップの影響もあり、オルタナっぽくもあり、でもどこかノスタルジックで、エキゾチックで、きわどい。そうとういいですよ、これは。アルバム後半が特にぐー。



The Doggfather
Snoop Doggy Dogg
(Death Row/Interscope)


 2パックが死に、ドレが離脱し……。デス・ロウはどうなるのかなぁ。そんなことを思っていたところへ届いたスヌープ待望の新作。当然といった感じでレーベルメイトだった2パックに捧げられている。

 だから、というわけじゃないけど、2パックの『All Eyes On Me』にも通じる、なんつーか、もはやカウンター・カルチャーでも何でもない、メインストリームど真ん中のヒップホップ・シーンを象徴するような、どっかーんとした仕上がり。音のほうは相変わらずの70年代ファンクおたくぶりを発揮していて、かっこいい。トゥー・ショートと絡む「You Thought」とか、パーラメントっぽいオケがごきげんな「Snoop Bounce」とか、盛り上がるぜっ。

 ただ、ギャングスタ味は後退。そのテの曲もあるにはあるけど、どっちかってゆーとラヴ&セックスのほうに主題が移ってるみたい。おぢさんとしては、いいことだなとは思いますが。さて、ストリート・キッズたちにとってはどうなんでしょうね。



Hell On Earth
Mobb Deep
(Loud/RCA)

 続いて、モブ・ディープのセカンド。ナス、メソッド・マン、レイクウォンをゲストに迎え、ぐりぐりドープにキメてます。

 歌詞のことはよくわかってないので、なんとも言えないけど。1曲目でいきなり「こんな生き方してるのにも疲れたぜ」みたいなことラップしてたから。こいつらもこいつらなりに2パックの死以降のシーンに対して何らかのメッセージを送っているのかもしれない。音に関しては、かなりキてる。ビートの組み立て方がごきげん。キックとスネアとベースの絡みがむちゃパーカッシヴでかっこいい。

 次代をになう才能だってことを再確認させてくれた一枚。



House Of Music
Tony Toni Tone
(Mercury)



 いきなりアル・グリーンっすよ。ウィリー・ミッチェルがプロデュースしてたころのアル・グリーンみたいなメンフィス・ソウル風味ぶりぶりのミディアム・グルーヴでスタート。DJクイックのラップをフィーチャーした曲とかもあるけれど、これもかなりオールドスクールしているし。エレキ・シタールが鳴り響くスウィート・ソウルあり、往年のアース・ウィンド&ファイアを思わせるメロウでファンキーな曲あり、泣きの三連バラードあり、ジャクソン・ファイブとかテンプテーションズのよきころを思わせるモータウン・テイストもあり……。

 すっげーしみる曲ぞろい。曲作りの見事さにまず感服した。けど、この人たちって、こんなにもろ古い音だったっけ? これ、4枚目だけど、確か2枚目のころとかは、もっと、こう、なんつーか、現代の音をきっちり取り込んだ現在進行形のオークランド・ファンクみたいな感じだった記憶があるんだけどなぁ。

 いや、いいんだけどね。近ごろはなにやら“ニュー・クラシック・ソウル”とかなんとか自称するフヌケた音が蔓延していて。そんなのに比べたら百倍ごきげんだし。なんたって、打ち込みをメインにせず、あくまでも自分たちの手で演奏したサウンドを基調にしているところもうれしい。

 若いリスナーにウケるといいなぁ。ぼくみたいな古いソウル・ファンが喜んでるだけじゃ始まらないもんね。



Infinity Plus
Lois
(K)


 この人のアルバム聞いていると、その昔、チェリー・レッド・レーベルとかが注目を集め始めた時期の、まあ、ネオアコ初期っつーか、あのころの感触を思い出す。こんなワタシですが、そーゆーのも聞いてたこと、あります。で、思ってました。なんか、こう、思っきし無防備なようでいて、ずいぶんとバリアが固い音楽だなぁ、と。

 2〜3年前にこの人のファーストを聞いたときも同じような印象を抱いたわけだけど。さすが4枚目ともなると、だいぶ外に向かって開かれてきたみたい。曲がわかりやすくなったもん(笑)。以前は、おい、このコード合ってるのか? みたいな、ギター、間違って押さえてないか? みたいな感じさえしたのに。今回、そういうのはちょっとだけ。ちょっとだけあるにはあるけど、全然気にならない。でもって、メロディ自体もさらに美しく。

 でも、ヨーロッパ系のネオアコものとは一線を画す“地に足がついた”感じは、さすがアリゾナ生まれのドショッポネでしょうか。ぼくはこういうほうが断然好き。ルシャス・ジャクソンとかと同じ文脈でとらえるべき人なんだろうね。

 来日したんだよね、最近? どうだったんだろう。



Razorblade Suitcase
Bush
(Trauma/Interscope)


 最近のイギリスのバンドの中では個人的にはわりと好きなほうかな。売れまくったデビュー盤に続いてリリースされたこいつは、ニルヴァーナとかPJハーヴェイとかピクシーズとかとの仕事で知られるスティーヴ・アルビーニとタッグを組んでのレコーディング。かなりスケール感とエッジ感を強調したミックスがほどこされており、これまた売れるだろうなぁ。

 そんな感じです。そんだけなんですけど(笑)。嫌いじゃないです。