Pick of the Week


Recovering The Satellites
Counting Crows
(DGC/Geffen)



 ひと月くらい前に日本盤も出ているので、今さらって感じではありますが。近ごろ、じわじわハマってます。

 こいつらがシングル「Mr. Jones」とアルバム『August and Everything After』を売りまくったのが2年前。売れに売れたもんで、中心メンバーのアダム君はけっこう大変だったんだなぁってことがひしひし伝わってくる一枚だ。

 ちっちゃなクラブ・サーキットで「いつかボブ・ディランみたいになってやる」とか思って歌ってた、そんな無鉄砲な情熱を詰め込んだだけのファースト・アルバムのときと違って、今や何百万人のファンが新作を待ち焦がれている状態。注目の新人アーティストならば誰もが体験することなんだろうけど。アダム君の場合は、売れ方が尋常じゃなかったぶんプレッシャーもそうとうキツかったみたい。

 「Have you seen me lately?」って曲があって、その歌詞を眺めていたらすごかった。“最近、なんだか自分が消えつつあるような気がする。ラジオで自分の歌声を聞くときみたいな感じだ。君はぼくのことを最近見たかい?”みたいなこと歌ってて。大変だねー、スター・バンドは。でも、売れなくなるのがいやだとか、そっちのベクトルじゃないようだ。自分のために曲を作り続けて、歌い続けて、それだけでもいいはずなのに、実際には自分の気分とは別のところでその曲を待っている様々な人たちがいて、そういう状況のもと、自分をいったいどんな位置に置いて、どんなふうにコントロールしていけばいいのか……って感じ。

 ポール・バックマスターのアレンジによるストリングスも導入した「I'm Not Sleeping」って曲では“ぼくはもうそんなに無垢じゃないんだ”とか歌っていたり。

 カート・コバーンと同じ悩みなんだろうね。それをわりとストレートに盤面に記録してしまうところが、アダムらしいのかな。まじめだなぁ。精神的な面で、その辺、折り合いがついているといいんだけど。

 と、様々な悩みも内包したセカンド・アルバム。でも、音のほうは相変わらずごきげんです。ボブ・ディラン、ザ・バンド、ブルース・スプリングスティーン、REM、U2といった先達の要素を彼らなりに消化した音作り。ファーストに比べてギターがラウドになっている曲が多かった。オルガンとギターの絡みもさらに有機的に。前述した「I'm Not Sleeping」や、ヴァン・モリソンっぽい「Goodnight Elisabeth」、切ない「A Long December」とか、泣けるメロディも多い。アダム君の深い深い悩みもものともせず、かなり手応えあるセカンドを作ってみせたなって感じ。やっぱりただ者じゃない。

 まあ、歌詞的には何度も書いたように、けっこう複雑に悩んでいる様子が見え隠れする一枚だけれど。「A Long December」に“たぶん今年は前よりはましだと思うよ”みたいな一節があって。これが妙に心を震わせてくれたりもする。

 REM、パール・ジャムともども、信じられるバンドだと思う。きっと。