Unplugged
Alice In Chains (Columbia)
今年の4月にMTVで収録されたというアンプラグド・アルバム。新曲がひとつ。MTVで放映されたビデオよりも3曲多く収録された完全版だとか。アンプラグドにつきもののカヴァー曲とかがないので、ちょっと残念かな。
で、この盤、好むと好まざるとにかかわらず、絶対にニルヴァーナのアンプラグド盤と比べられるわけじゃないですか。そういう面では、あらかじめかなり分が悪いような気もしないではないけれど。それにしても、けっこう聞かせます。かなりいい。レインの震え声も全開。ジェリーのどこかおセンチなギターも、アコースティックなもんだからいつも以上に目立つ。アリス・イン・チェインズの本質を味わうためのごきげんな副読本となりそうだ。
ただ、やっぱりニルヴァーナのこと持ち出しちゃうんだけどさ。ニルヴァーナのアンプラグド盤が、通常のエレクトリック系スタジオ盤とはまったく別の次元で、それ自体が名盤に昇華していたのとは違って、アリス・イン・チェインズのほうは、そこまで行っていない、あくまでも副読本/参考書的な手触りがあるような気がする。企画もの、ね。
いや、まあ、アンプラグドなんてもともと企画ものでいいんだろうけど。そんな企画ものを超えて名盤にまで昇華したニルヴァーナ盤とかがあったもんだから。この人たち、ちょっと損しちゃったかも。
なんて言いつつも、よく聞いてます。余計な装飾を取り払った、曲そのもの、声そのものの魅力がダイレクトに伝わってくる一枚。しかし、アメリカのミュージシャンは、若い世代でもちゃんとブルースとかフォークをベースにした生ギター・プレイを聞かせるよね。ジェリーもかなりやるもんだ。もちろんカート・コバーンに比べたら見劣りするけど……って、また比べちまったよ。すまん。
Beats, Rhymes And Life
A Tribe Called Quest (Jive)
サンプルの渋い選び抜き方といい、それを構成するうえでの緻密さといい、センスよく配されたローズをはじめとするキーボードの音といい、ドラムマシンのグルーヴといい、見事なまでに成熟したヒップホップを聞かせてくれる久々の新作だ。ずいぶん長いこと待たされたよ。でも、フツーのヒップホップ・アーティストには致命的とも思えるこの長いブランクをものともしないんだから。全米チャート初登場ナンバーワンだとかで。やっぱりすごいね。みんなトライブが次何をするか、固唾を飲み込んで待ってたってわけだ。もちろんぼくも待ってたひとり。
ファットでクールでジャジー。このテーマを見事に全うした仕上がりだ。歌詞についてはまだてんでわかってないので(笑)、でかいことは言えないけど。声高にメッセージを連射するのではなく、より抽象的に内的なソウル・スピリットを表現しているような。なんかそんな手触りです。Qティップがすごい。やっぱり。
ヒップホップもすっかり時代のメインストリームに位置してしまって。けっこうぬくぬくとその位置どりに甘えているアーティストも出てきた。けど、こいつらとかデ・ラとか、ヒップホップ大攻勢の基礎を作った連中がむしろ状況に甘えず、新鮮な活躍を見せてくれているのはうれしいやね。
メンバーのほうは、あとマイク・ホサックと、キース・ヌードセンが古株。中途加入組からはジョン・マクフィー、コーネリアス・バンプスが参加してる。残りのメンバーはよくわかりません(笑)。