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Find A Door
Pete Droge & The Sinners (American)

 ピート・ドロージって読むのかな。以前、1枚個人名義でアルバムをリリースしていたような記憶があるけれど、今回はピート・ドロージ&ザ・シナーズというバンド名義でのフル・アルバム。プロデュースが、今をときめくブレンダン・オブライエンで。レーベルがアメリカン・レコーディングス。てことで、ダン・ベアードとかフリーホイーラーズとかの手触りを期待して買ってみたら。

 ばっちりです。そのもの。ワウワウかましたスライド・ギターなどもフィーチャーしつつ、往年のサザン・ロック、スワンプ・ロック、フォーク・ロック、カントリー・ロックあたりの雰囲気をたたえた音作り。そいつを基調にちょっと甘酸っぱいメロディを乗せたり、一転してダークな歌詞を載せたり。なかなかやります。時にディランっぽかったり、NRBQぽかったり、ザ・バンドっぽかったり。といっても、さほどノスタルジックなわけじゃないところがいいね。

 よきころのニック・ロウとかが好きだったら、これもばっちりでしょう。どの曲もいい曲ばっか。ぼくは特にポップなミディアム「ウルフギャング」ってのとリチャード・マニュエルっぽい「ユー・シュッド・ビー・ラニング」ってのがお気に入りです。ぐー。





Dead Spy Report
Craig Ross(MCA)

 テキサス州オースティン出身だとかいう(たぶん)新人さんのアルバム。いいよ、これは。すごく。今、一緒に番組やってるボニー・ピンクに聞いたところによると、レニー・クラヴィッツんとこのバンドのギタリストがこの人と同姓同名らしくて。てことは、その人かな……とも思うんだけど、詳細は不明です。

 まあ、素性なんかどうでもいいくらいごきげんなアルバム。まだ大幅にエレクトリック・サウンドを取り入れる直前のT・レックスみたいな味もあるし、ニール・ヤングっぽい手触りもあるし、ジョージ・ハリソンっぽい雰囲気もあるし、ベックっぽい内省的攻撃性(?)もあるし。ベックやマニー・マークにも通じる宅録っぽい空気感もOK。

 60年代、70年代のロックを含むポップ・ミュージックの美学を見事90年代へと持ち込んだ佳作です。けっこうハマってます。





12 Golden Country Greats
Ween(Elektra)

 不思議な2人組、ウィーンの最新作は、なんとナッシュヴィル録音。バディ・スピッチャー、ピート・ウェイド、チャーリー・マッコイ、ジーン・クリスマンといったエリア・コード615系の人脈に加え、エルヴィス・プレスリーらのバッキングでも知られるバディ・ハーマン、ジョーダネアーズなど、ベテランのナッシュヴィル系ミュージシャンをバックに従えて、鉄壁のカントリー・サウンドを聞かせるんだけど。

 でも、ジャケットをよーく見ると、左下にラップやオルタナのアルバムでおなじみの“Parental Advisory Explicit Lyrics”の表示があったりして。いいね。完璧なカントリー・サウンドをバックに、いったいこいつら何を歌ってるんだか。「ジャパニーズ・カウボーイ」なんて曲も入っていて、サウンドの超オーソドックスさに対して、そうとうヒネたことを歌ってるみたい。

 近ごろはけっこう若い世代の間でも70年代のカントリー・ロックとかが注目されていて。そういう流れに拍車をかけそうな1枚。前のアルバムはCDはエレクトラから、アナログはビースティーズのグランド・ロイヤルからのリリースだったけど。今回はどうかな。この、どカントリー・サウンドがグランド・ロイヤルからリリースされて、若者の間で話題沸騰……とか、そういうことになれば面白いのに。





Just Like You
Keb' Mo'(OKeh / Epic)

 G・ラヴと同じ、新生オーケー・レーベルからのリリースだっただけに、この人のファーストが出たとき、けっこうオルタナな、現代的なブルースってやつを期待したものだけど。そうじゃなかったね。この人は、伝統的なブルースのフォーマットをきっちりと、壊すことなく現代に受け継いだエリートなのでした。

 そんなわけで、この新作も同様の手触り。エリートです。ほぼ1曲ごとに、バンドものと、ソロでの弾き語りを交互に並べた構成。バンドもののほうにはボニー・レイット、ジャクソン・ブラウンらもゲスト参加。そういう人なわけだね。演奏陣では、ベースのジェームス・ハッチンソン、ドラムのリッキー・ファター(ビーチ・ボーイズ・ファン、とびつけ!)あたりの名前がぐっとくる。

 実に端正なブルース/フォーク・アルバムって感じ。いい曲も多い。ライ・クーダーとか好きな人には歓迎されそうかな。ギターもバカにうまいし。ぶっこわれたところがないぶん、ぼくみたいなアホには物足りなかったりするけれど、そっちのほうがいいって人も多いだろうしね。生で見たいなぁ。生で見ると、ぜったい、もっともっとこの人のパワフルな部分が見えてくるはずだから。

 あ、ぼくはまだめんどくさいんで見てないけど、これ、CDエクストラ。CDロム・ドライヴに入れれば何か見られるみたい。





MOM Music For Our Mother Ocean
Various Artists(Surfdog / Interscope)

 その名の通り、海に代表される自然保護をメッセージするベネフィット・オムニバス盤。ビースティー・ボーイズ、コモン・センス、パール・ジャム、ラモーンズ、ペニーワイズ、シルヴァーチェア、ノー・ダウト、プライマス、ジュエル、サウンドガーデン、ヘルメット、ポルノ・フォー・パイロスなどなど、オルタナ系を中心に、今のシーンを代表する面々が結集。オリジナルに、カヴァーに、勝手にあれこれ海がらみの曲を取り上げてます。

 ブライアン・セッツァー・オーケストラが、なんとフィル・ラモーンのプロデュースのもと、往年のR&Bインスト「ハンキー・トンク」をカヴァーしたヴァージョンとか、笑えて踊れた。ラモーンズの「カリフォルニア・サン」のカヴァーも相変わらずごきげん。ペニーワイズはビーチ・ボーイズの「サーフィンUSA」をカヴァーしてるんだけど、間違ったキーで歌いだして、そのまま、演奏も歌もお互い寄り添うことなく最後まで突っ走ってて。これも破壊力抜群でした(笑)。

 再生紙ジャケットもかわいいよ。