Reviews   Music

Golden Mercury Girls!

It's My Party/The Mercury Anthology Lesley Gore
The Best of The Angels
The Best of The Shangri-Las
(Mercury/PolyGram)


 ポリグラムの“クロニクル・シリーズ”といえば、エリック・クラプトンとかオールマン・ブラザーズ・バンドとかロイ・ブキャナンとか、その種のロック系アーティストや、ピーチズ&ハーブやアイザック・ヘイズ、JBみたいなソウル系の連中の充実したベストを次々リリースして、オールディーズ・ファンの間でも定評がある再発シリーズ。そこがついに、満を持して、60年代ガール・グループものの再発に手をつけた。うれしいじゃありませんか。

 まあ、今さら特に珍しいラインアップというわけじゃない。今回リリースされたレズリー・ゴア、エンジェルス、シャングリラス、ともに既発のベストCDはたくさんある。レズリー・ゴアなんか、ドイツのベアファミリーからボックスまで出てるし、エンジェルスもコレクタブルから、シャングリラスに至ってはもうあちこちのレーベルからばんばん再発されていて。でもね、今回はやっぱりモノホンの在籍レーベルがオリジナル・マスター・テープからリマスターした音源でのベスト編纂だからね。この機会を逃しちゃダメです。絶対。

 レズリー・ゴアの盤だけ2枚組。彼女が1963年から67年にかけて放った全米ヒット19曲はもちろん、シングルB面の名曲とか、貴重曲あわせて全52曲を収録。最初の特大ヒットにあたる「涙のバースデイ・パーティ(イッツ・マイ・パーティ)」、ビヴァリー・ロスがらみのセカンド・ヒット「ジュディーズ・ターン・トゥ・クライ」、キャロル・キング&ジェリー・ゴフィン作の名曲「ジ・オールド・クラウド」、つちやかおりのカヴァーでもおなじみ(なんだそりゃ)「恋と涙の17才(ユー・ドント・オウン・ミー)」、エリー・グリニッチ&ジェフ・バリー作のドライヴ感あふれる「ルック・オヴ・ラヴ」や「メイビー・アイ・ノウ」……といった、初期のクインシー・ジョーンズ・プロデュースによる作品群はもちろん、 66年ごろのボブ・クリューのプロデュース作品、67年ごろのスティーヴ・ダグラスのプロデュース作品、そして68年のケニー・ギャンブル&レオン・ハフのプロデュース作品まで。たっぷり。こりゃ断然おすすめですわ。

 エンジェルスのほうは、おなじみの「マイ・ボーイフレンズ・バック」のほか、ジャン&ディーンのジャン・ベリーがアーティ・コーンフェルドと共作したごきげんなティーンエイジ・ポップ「アイ・アドア・ヒム」など、全21曲。きゃぴきゃぴのガール・グループ・サウンドが味わえる。シャングリラスも1枚もので全25曲。エンジェルスよりぐっと不良っぽいっつーか、ヤンキーっぽいっつーか、そういう持ち味が楽しい。このコたちはマーキュリーではなく、ジェリー・リーバー&マイク・ストーラーが設立したレッド・バード・レコードで、フィル・スペクター門下生のシャドウ・モートンのプロデュースのもと、エリー・グリニッチ&ジェフ・バリーの溢れる愛を受けながら大活躍。その音源の集大成だ。シングルB面ものも9曲、アルバム・トラックも3曲。

 アメリカの1960年代ガール・グループ/ガール・シンガーの音楽ってのは、ホント、いいねー。刹那っぽくて。その一瞬一瞬が切り取られているっていうか。男性ティーン・アイドルとかの場合は、やっぱり成長したあとのことが気になるでしょ。将来どんなふうにしてショービズの世界で生き残っていくか、みたいな。だから、たとえばポール・アンカとかさ、フランキー・アヴァロンとか、誰でもいいんだけど、50〜60年代の男性ポップ・アイドルたちってのは、のちのナイトクラブ・シンガーとしての姿が透けて見えるような気がする。それに対して女の子たちは、もう、今しかないって感じ。その瞬間、どんな男の子が好きで、どんなデートをしたくて、どんなキスをしたくて、どんなおしゃれをしたくて……。それがすべて。ここがいいんだよね。

 そんな刹那のときめきを、時代を超えて味わえる3枚の再発盤。やー、ありがたいありがたい。



追記(1996.7.25)

 なーんて書いてからしばらくして、同じシリーズから、とんでもなくごきげんなオムニバス盤も出ていたことが判明。すっかりハマってます。タイトルは『Growing' Up Too Fast / The Girl Group Anthology』。ダイアン・リネイのヒット曲のタイトルを冠した素晴らしいCD2枚組オムニバスです。上記3アーティストはもちろん、パリス・シスターズ、コニー・フランシス、ハニービーズ、ロイヤレッツ、ダスティ・スプリングスフィールド、シークレッツ、ジニー・アーネル、ケニ・ウッズなどなど、有名無名入り乱れての鋭い選曲。幻のピクシー・スリーによる幻のシングルB面曲なんてのも入っていて。おーっ、なんだ、あの人のあの曲はこいつへのオマージュだったのか……! とコーフンしちゃいます。

 つーわけで、上記の最後の文章を書き換えましょう。

 そんな刹那のときめきを、時代を超えて味わえる“4組”の再発盤。やー、ありがたいありがたい。