Reviews   Music


T.A.P.O.A.F.O.M.
George Clinton & The P-Funk Allstars (550 Music/Epic)

 同じクリントンでも、こちらはファンク大統領のクリントンさん。エピックに移籍して放った新作は、なんと、パーラメントの面々を引き連れてのPファンク・オールスターズ盤。ブーツィはもちろん、バーニー・ウォレルも参加。さらにジョージ・クリントンおよび彼のPファンクをこよなく愛する若手世代から、MCブリードとエリック・サーモンも参加。ごきげんな新旧ファンク共演を聞かせてくれる。まいったまいった。

 でも、このアルバムのポイントは、“何はなくともパワーでぶちかます音楽”みたいに思われがちなファンクってやつが、実はそうとうにクールなものであるってことを存分に思い知らせてくれるところ。もちろん、ファンクとともに歩んできた御大だからこその深い深いクールさではあるんだけどさ。ぐっと熱を内に秘めたクールさ。これこそが真のファンキーってやつなんだなぁ。

 ちなみに、タイトルは“The Awesome Power Of A Fully-Operational Mothership”の頭文字だとか。いいねー。相変わらず、チープさと雄大さをあわせもつPファンクならではのコンセプトじゃんっ。





Physical Funk
Domino(Out Burst)

 元祖ヒップホップ・ソウルって感じのドミノの新作。歌えるヒップホップ・アーティストって意味じゃ、この人がシーンに与えた初発の影響力はすごかったと思う。モンテル・ジョーダンも、ディアンジェロも、結局はみんなドミノが拓いた土壌の上にいる。 つーわけで、期待の新作ですが。何年ぶりだ? 2年? 3年近いか? 忘れましたが。基本路線はそのまま、前よりもなまめかしさを増した仕上がり。歌とラップを自在に行き来しながらクールに聞かせてくれるけど、ラップのパターンが今やちょっと古いかなぁ。でも、その“ちょっと古い”感じも含めて、むしろ爽やかに聞けるかも。ウォーの「世界はゲットーだ」のリフとフェンダー・ローズとが絶妙に絡む「マカドシャス」って曲とか、ええっすよ。R・ケリーみたいな「ヘネシー」もぐー。





Imperial Drag
Imperial Drag(Work)

 あのね、ジェリーフィッシュのファースト・アルバムが最初に日本で出たときね、ライナー書いたの、俺なのさ。サウンド最高だったし。つい引き受けちゃったんだけど、いざ書こうと思ったら、どこの誰だか、当時、レコード会社にも資料が何もなくて、まじ、困っちゃったことを覚えてるけど。まあ、それはいいとして。

 そんなジェリーフィッシュの中心メンバーだったロジャー・マニングとエリック・ドーヴァーが結成したニュー・バンドがこいつら。きっと底辺に流れる独特のひねくれたポップ感覚はジェリーフィッシュ時代と変わっちゃいないのだろうけど、 それを取り巻くサウンドがよりハードに、よりストレートに。かなりいいっすよ、これは。ものによっては、70年代のハードなグラム・ロックっぽい手触りもあったりして。かっちょえー。

 また日本で先行して売れそうな気もしないではないね。ジェリーフィッシュって、そうとうすごいバンドだったのに、結局、アルバム2枚で解散。妙なフラストレーションがぼくたち聞く側には残ってるんだけど。たぶんそれ以上のフラストレーションがやってたほうにもあるはずだし。うまいこと、その辺を爆発させてくれるとうれしいんだけどね。応援しようぜっ。





Girl Tiny Tim with Brave Combo(Ronder)

 でっかい身体にちっこいウクレレ持って、妙に低い裏声とかを駆使しながらスタンダード・ナンバーやら童謡やらを歌う“モンドな(笑)”怪人、タイニー・ティムの新作は、なーんとブレイヴ・コンボとの共演盤。

 アルバム・タイトル・チューンは、もちろん、かのビートルズの名曲。その他にも「ヘイ・ジュード」とか、レッド・ツェッペリンの「天国への階段」とか、ゴフィン&キング作の「アイ・ウォント・ステイ・ヒア」とか、さらに「バイバイ・ブラックバード」とか「ザット・オールド・フィーリング」とか「ニューヨーク・ニューヨーク」とか「スターダスト」とか「オーヴァー・ザ・レインボー」とか、そのテのスタンダード曲あたりを手当たり次第にカヴァー。タイニー・ティムもブレイヴ・コンボも、どっちも独特だからねー。ほのぼのしているんだか、やばいんだか、妙にドキドキできる佳盤が誕生しましたよ。






Load Metallica (Elektra)

 やー、久々ですなー。活動休止宣言から5年。ようやく出ました。基本的にぼくはこの種の音楽は、それほど熱心に聞いちゃいないんだけど。メタリカだけはわりと楽しみに聞く。どこか深いところに、ぐっと求心的な力を感じるし。いいよね、こいつら。

 てことで、彼ら、先日プロモーション来日してたじゃん? で、わが友人、ユースケ・サンタマリアとトータス松本が司会するスペースシャワーTVの番組『夕陽のドラゴン』に生出演してたんだけどさ(笑)。日本のバンドのビデオクリップを次々見せられて、好きか嫌いか聞かれて、のきなみバツを出していたのが面白かった。別に自虐的にじゃなく。単純に面白かった。たぶんアメリカのバンドのビデオクリップ見せられても、連中だったらのきなみバツ出すんだろうなと思うし。ウルフルズの「ガッツだぜ」にだけマルを出したんだけど、要するにチョンマゲ姿が気に入ったみたい。このカツラをつけてやるならアメリカでも売れるよ……とトータスに言ってた。





I'm Here For You Ann Nesby (Perspective)

 ジャム&ルイスのプロデュースのもと、ヒップホップ・ソウル感覚やハウス感覚を導入したゴスペル・グループとして、けっこう人気の高いサウンズ・オヴ・ブラックネスでリードをとってるおばちゃんのソロ・デビュー盤。やっぱり大方がジャム&ルイスがらみ。練り上げられたブラック・コンテンポラリー・サウンドに乗せて、自慢のノドをたっぷり聞かせてくれる。

 アルバム後半に向かうに従って、もろにゴスペル臭の強い曲が増えていって、ラスト2曲あたりが最高潮かな。ぐっときます。サウンズ・オヴ・ブラックネスのアルバム以上に、やっぱり“歌”が主役。安心して聞けますよ。