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Between The 1 And The 9 Patti Rothberg (EMI)

 ニューヨークのアヴェニュー・ライン1番線と9番線を結ぶ地下通路のことをタイトルに冠したアルバム。ってことからも想像できるように、ニューヨークのストリート・シンガーとして才能を磨いていたパティ・ロスバーグ嬢のデビュー・アルバムだ。系譜としては、んー、リッキー・リー・ジョーンズとかエディ・ブリッケルの流れとしてとらえられそうだけど。そこにパティ・スミスをちょいとふりかけた感じかな。このふりかけがポイントだ。けっこうキュートだったり、かと思えばわりかし不思議ちゃんだったりする歌詞を、生っぽいバックに乗せてナチュラルに歌います。ジャケットもアートしてるし。注目株です。まじ。



Waitin' For George Freewheelers (American Recordings)

 アルバムのアタマ2曲が今いちつまんなかったので、こりゃハズしたか? と思ったんだけど。3曲目以降がごきげん。ごきげんにスワンプ。往年のジョー・コッカー/レオン・ラッセルもぶっとびそうな、剛球一本勝負のホットなホットな南部ロックンロールを聞かせます。適度にハイセンスな“胸キュン・メロディ”が織り込まれていたりして。すごいすごい。音圧も圧倒的。ライヴが見たいっす。ピアノがバカうまです。グルーヴばっちしのロックを聞きたい方は、ぜひ。




Who Let All The Monkeys Out? Pee Shy (Blue Gorilla / Mercury)

 全然、どんな連中なのか知らないんですが。先日のグラミー賞でやったらたくさんノミネートされたことで一気に注目度をアップさせたジョーン・オズボーンと同じレーベル出身ってことで。買ってみたんですが。キュートにぶっこわれた女の子ポップって感じ。ヴォーカル&アコーディオンのシンディちゃんと、ヴォーカル&キーボード&クラリネットのジェニーちゃんと、ベースのメアリーちゃんと、そして紅一点ならぬ黒一点、ドラムのビルくん…という4人組。かわいらしくて、でもどっかねじれてるポップ盤です。といっても、日本やヨーロッパの同系等アーティストに比べると、やはりアメリカのバンドらしく、地にどっかと足がついてる感触はあり。その辺で好みが分かれるかも。ぼくはこっちのほうが好きです。



Legs & Arms Lode (Geffen)

 故ローウェル・ジョージの娘をリード・シンガーに据えた新人バンドのデビュー盤。なんとスティーリー・ダンとの仕事でおなじみのゲイリー・カッツがプロデュースを手がけている。4人組ながら音のほうはパパのバンドみたい。リトル・フィート・ファンとしてはそれなりに楽しめた。けど、それだったら、現在もローウェルさん抜きで活動を続けているフィートにこの娘を入れちゃえばいいのに…とか思います。乱暴かな? すんません。




Hunk Hunk (Geffen)

 上のロード同様、ゲフェンからのリリース。こちらはドン・フレミングのプロデュースによる、ロング・アイランド出身の男の子4人組バンドだ。基本的にはニルヴァーナ以降のオルタナものなんだけど、メンバーのお好みがレッド・ツェッペリンとチープ・トリックだとかで、そう言われてみればなるほど。楽曲のふしぶしにそうした要素が顔をのぞかせている。いい感じ。音圧はオルタナだけど、けっこう、メロ、70年代ポップふうだったりします。



The Golden Age Cracker (Virgin)

 元キャンパー・ヴァン・ベートーベンのデヴィッド・ロワリー率いるクラッカーのサード・アルバム。ピー・シャイのアルバムのところでも名前が出たジョーン・オズボーンをはじめ、カウンティング・クロウズのチャーリー・ギリンガム、ジョン・ハイアット・バンドのデヴィッド・インマーグラックなどがゲスト参加。カントリーやスワンプのニュアンスに磨きをかけて、いよいよカレッジ・シーンから外に向けて足を踏み出しそうな一枚に仕上がっている。ロワリーさんももう36歳だってさ。がんばってほしいよね。



Tennessee Moon Neil Diamond (Columbia)

 数年前、古巣であるブリル・ビルディング・ポップスを歌いまくったアルバムで、かなりいい味出していたニール・ダイアモンドさんですが。今回は、なんとナッシュヴィル録音。元フォー・シーズンズのボブ・ゴーディオがプロデュースを担当。ウェイロン・ジェニングズ、ハル・ケチャム、ローズマリー・バトラー、チェット・アトキンスなど、新旧ナッシュヴィル人脈の客演を得て、のびのび持ち味を発揮してます。別にカントリーやってるってわけじゃないんだけど、ナッシュヴィルという土地柄がニール・ダイアモンド節に好影響を与えているって感じ。なんでも、奥さんとの別離の痛手を癒すために…と友人のウェイロン・ジェニングズが提案したナッシュヴィル録音だったんだとか。そういう耳で聞くと、またぐっときちゃうかもね。



The Coming Busta Rhymes (Elektra)

 オール・ダーティ・バスタードの強敵登場! って感じかな。リーダーズ・オヴ・ザ・ニュー・スクールの一員としてヒップホップ・シーンに参入して以来、節目節目で様々なアルバムで名前を見掛けていたバスタ・ライムズが、単独名義でフル・アルバムをリリースした。おばかでいいです。ごきげん。イージー・モー・ビー、ア・トライブ・コールド・クエストのJD、EPMDのDJスクラッチらをプロデューサーに迎え、ぶっこわれたパワーをぶちまけます。



I Am L.V. L.V. (Tommy Boy)

 クーリオの大ヒット・ヒップホップ「ギャングスタ・パラダイス」でメロディの部分を歌っていたのが、この人。LAの凶悪犯罪地区、サウス・セントラル出身とのことだけど、いわゆるギャングスタ・ラッパーではなく、完璧なシンガーです。ギャングスタ系のヒップホップ感覚、ファンク・センスとともに、スウィートでスムーズなバラード感覚も併せ持っている。いい曲ぞろいだし。ヒップホップ・ソウルはちょっと…という方にも、こいつはおすすめできまっせ。



Kollege Bahamadia (Chrysalis / EMI)

 DJプレミアとグールーが率いるギャングスタ・ファウンデーションから登場した女性ラッパー。すでにシングル「Uノウハウウィドゥ」が大ヒットしているけど、そんな彼女のデビュー・フル・アルバムの登場だ。パワーごりおし系ではなく、“豊潤”という言葉さえ似合いそうな緻密なバック・トラックに乗ってクールで知的なラップを聞かせてくれる。スピーチにも通じる肌触りがあるんだけど。かなり気に入りました、ぼくは。




Mi Buenos Aires Querido Daniel Barenboim (Teldec)

 アメリカのクラシック界のグレートなピアニスト/指揮者として知られるダニエル・バレンボイムが、故郷アルゼンチンの音楽に挑戦した一枚。タンゴの名手、ロドルフォ・メデロス(バンドネオン)とエクトール・コンソーレ(ベース)を迎えて、ピアソラやガルデルの名曲を、ていねいに、深く演奏しています。CS放送局のスペースシャワーでぼくと一緒に『YO−HO』って番組の司会をしているボニー・ピンクって女の子が、“ごはんがおいしくなりそうなアルバムですね”と言ってた。なるほどねー。