2001.5.7

The Electric Mile
G. Love & Special Sauce
(Epic)

 こいつら、アルバム出すたびに本ページで紹介している感じですが。今回もごきげん。ギター、ウッド・ベース、ドラムという変わらぬトリオ編成を基本に、曲によってジョン・メデスキのオルガンやモーフィーンのビリー・コンウェイのパーカッションをはじめ、コーラス、ラッパー、ストリングス・セクションなどをバックに配し、さらに円熟したところを聞かせてくれる。

 前作でも、ずいぶん洗練されたなと感じたものの、今回もまた一層洗練されて。その辺は、たぶんこうした多くのゲスト・ミュージシャンのおかげなのかなとは思うけれど。しかし、だからといって本盤でのG・ラヴ&スペシャル・ソースはまったくゲストに依存していない。本盤の主役はあくまでもこのいかした3人組が繰り出すグルーヴなのであって。上モノがいくら乗ろうと、こいつらのファンキー&ブルージーなビートは変わらない。

 生ギターかき鳴らしつつ、フォークっぽくスタートしながら、スパッとリズム隊が切り込んできた瞬間、ソウルフルなグルーヴへと一気に突入する「フリー・アット・ラスト」とか、今のこいつらにしか出せない奔放な味わいだろう。



Canto
Los Super Seven
(Sony)

 ラテン・アメリカのスーパー・ユニット、ロス・スーパー・セヴンの3年ぶり、セカンド・アルバムの登場だ。ちょっと前の『コナン・オブライエン・ショー』かなんかに出ていたところを日経CNBCで見ましたが(笑)。

 今回はメンバーが一部変わって。ロス・ロボスのデイヴィッド・ヒダルゴとシーザー・ロサス、マヴェリックスのラウル・マロ、カントリー畑のリック・トレヴィノ、テファノ・シーンのスターであるルベーン・ラモス、そしてブラジルからカエターノ・ヴェローゾ、ペルーの歌姫スサーナ・バーカというラインアップ。前回のフラーコ・ヒメネス、フレディ・フェンダー、ダグ・サーム、ジョー・イーリーといった臭めのテックス・メックス系アーティストがいなくなったためか、今回はラテン・アメリカ・ミュージックのぐっとソフィスティケイトされた側面を強調して聞かせてくれる。物足りないっちゃ物足りないけど、そうはいっても、さすがの顔ぶれ、存分に深いところで堪能できます。



Satellite Rides
Old 97's
(Elektra)

 一時は『フジリコ』のテーマにこいつらの曲が起用されていて。おっ、日本独自に大ブレイクか…と期待したものの、当然のごとく空振り(笑)。そんなこと関係なく、ダラス出身の轟音オルタナ・カントリー野郎たちの、たぶん通算5枚目が出た。メジャー移籍後はこれで3作目。一時のブームに乗ってメジャーに青田刈りされた多くのオルタナ・カントリー・アーティストたちが次々とリストラされている昨今、けっこう粘り腰のところを見せている。

 メジャー移籍第一弾だった『トゥー・ファー・トゥ・ケア』でのぶっといカントリー・ロック・グルーヴが忘れられないものの、今回はさすがに崖っぷちなのか、路線をパワー・ポップ寄りに修正した感じ。もちろん、これはこれで悪くない。こいつらも『コナン・オブライエン・ショー』に出てたな。メジャー・シーンで最後の勝負をかけているのでしょう。バッドフィンガー〜エルヴィス・コステロ〜マーシャル・クレンショー的なアプローチ、多し。チャド・ブレイクが手がけたミックスも好感触だ。



Roots
Blue Mountain
(Black Dog Records)

 こちらはずっとインディーズ畑みたいなものなので、相変わらず気楽にぶっとばしてます。ケアリー&ローリーの夫婦ロッカーをフィーチャーしたオルタナ・カントリー・バンドの新作。今回は4人編成で、曲によってゲストも。タイトル通り、自らのルーツ見直しをしようという意欲作だ。

 不勉強なもんで、収録曲の素性とかはほとんどわからないのだけれど、アパラチアン系というか、スコットランド〜アイリッシュ系というか、そういったニュアンスの楽曲を持ち前の骨太グルーヴでぶいぶい聞かせる…みたいな仕上がり。かっこいい。オープニングを飾るロッキン・アイリッシュ・リール的な「ライ・ウィスキー」、不敵な2ビート・カントリー「ザット・ナスティー・スウィング」、ラストを飾る「リトル・ストリーム・オヴ・ウィスキー」あたりが目玉か。埃っぽくくすんだ音像のもと淡々と展開するマダー・バラード「レイン・アンド・スノウ」、切ない「バンクス・オヴ・レイク・ポンチャートレイン」なども胸にしみる。



musicforthemorningafter
Pete Yorn
(Columbia)

 ディカプリオとかも傘下に置くハリウッドの有名エージェントの弟なんだとか(笑)。日本では、何のことやら…って感じだけど。きっと芸能界へのパイプというか、人脈というか、そういった面で強力なコネがあるんだろうな。

 まあ、それはそれとして。けっこう聞かせるシンガー・ソングライターです。音のほうは、たとえばリプレイスメンツとかビッグ・スターとかからの影響も強く感じさせる仕上がりで。切ない美メロもそこかしこに。ペイヴメントみたいだったり、ベックみたいだったりする局面もある。かといって、個性がとっちらかっているわけではなく、内省的な歌声が全体にさりげない統一感を与えている。

 いいんじゃないすか、わりと? ちなみに、アルバム・タイトルは "Music For The Morning After" と切って読むようです。



Born To Be With You
Dion
(Ace)

 フィル・スペクター・ファンも大喜び。ディオンが1975年にスペクターのプロデュースのもとリリースしたアルバム『ボーン・トゥ・ビー・ウィズ・ユー』がボーナス・トラック満載でリマスター再発された。ボーナスとしては、76年のシングル「ベイビー・レッツ・スティック・トゥゲザー」と、76年にスティーヴ・バリ&マイケル・オマーシャンのプロデュースでリリースされたアルバム『ストリートハート』全曲。てことで、要するに2オン1みたいなものだね。英Aceからは『シット・ダウン・オールド・フレンド』と『ユーアー・ノット・アローン』の2オン1もそろそろリリースされるみたいだし。ありがたいです。

 ディオン寄りの視点で見ると、果たしてこれが名盤なのかどうか、少々複雑なところもあるのだけれど、スペクター寄りの視点では超興味深い1枚。ジョン・レノンの『ロックンロール』セッションとの関連性についても様々な謎が渦巻いているし。ハル・ブレイン、バーニー・ケッセル、ニノ・テンポ、レイ・ポールマン、スティーヴ・ダグラスといったスペクター・ファミリー系ミュージシャンと、ジム・ケルトナー、ジェシ・エド・デイヴィス、クラウス・ヴアマン、ジム・ホーンらジョンのロックンロール・セッション系ミュージシャンとが入り乱れつつ織りなす深い深いエコー・ワールド。ディオンを師と仰ぐブルース・スプリングスティーンも(たぶん手拍子で)参加し、このときのレコーディングを胸に、「ハングリー・ハート」の録音へと突入したという伝説もある。

 謎の海に溺れてみましょう。



Morning Glory:
The Tim Buckley Anthology

Tim Buckley
(Rhino/Elektra)

 もうひとつ、うれしい再発。悲劇のシンガー・ソングライター、ティム・バックリーの代表曲を網羅した2枚組アンソロジーだ。

 70年のアルバム『スターセイラー』に収録される2年前、68年、モンキーズのTVショーですでに披露されていたという「ソング・トゥ・ザ・サイレン」TVヴァージョンとか珍しい音源も収録されているけれど、基本的には既発のオリジナル・アルバム群からの代表曲をていねいにコンパイルしたもの。69年のアルバム『ハッピー・サッド』までの曲を中心に構成されているディスク1は、本当に宝のような楽曲でいっぱいだ。

 フォークからジャズまでを自在に行き来しつつ繊細に編まれたバックリィの音世界への入門編には最適だろう。




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