またもや傑作を作ってくれました。ジェフ・マルダー。
これまた傑作だった前作は、ちょうどバタバタしていて更新できない時期に出たもんで、本ホームページでは紹介せずじまいだった。おかげで、健太さん、ジェフ・マルダー嫌いなんですか……なんてメールも何通かいただきました。そんな。嫌いなわけ、ないじゃん。
というわけで、今回は忘れずに取り上げておきましょう。
冒頭の1曲が、テネシー・ウィリアムズの詩にジェフ・マルダーが曲をつけたもの。ラストがブラインド・レモン・ジェファーソンに捧げた曲。この2曲のオリジナル以外は、スリーピー・ジョン・エステスやら、ベッシー・スミスやら、チャーリー・パットンやら、スキップ・ジェームスやら、ブラインド・ウィリー・ジョンソンやら、ジミー・ロジャースやら、エリック・フォン・シュミットやら、いかにもジェフ・マルダーらしいカヴァー・ヴァージョンがずらりと並んでいる。
バックアップするミュージシャンにも胸がときめく。ジム・クウェスキン・ジャグ・バンド時代からの仲間、フリッツ・リッチモンドがジャグをぶーぶー言わせていたり、やはりその当時からの仲間であるボブ・シギンズがバンジョー弾いていたり、ポール・バターフィールズ・ベター・デイズ時代のバンド仲間ビル・リッチがベースを担当していたり、マッギャリグル姉妹が見事なハーモニーを聞かせていたり、ヴァン・ダイク・パークスがアコーディオンやパンプ・オルガンで参加していたり、デイヴィッド・リンドレーがラップ・ギターをずりずりさせていたり、ジョン・セバスチャンがハーモニカを吹いていたり……。他にも、マイク・フィニガン、ボブ・ニューワース、リチャード・グリーン、グレッグ・レイズ、デイヴ・アルヴィンなど、この種のアメリカン・ミュージックが好きな人間にとってはたまらない顔ぶれが総出演。ジェフさんの人徳か。
そうそう。娘さんのクレア・マルダーとデュエットした曲もあって。ベッシー・スミスも歌っている「アット・ザ・クリスマス・ボール」のカヴァー。マリア・マルダーそっくりのクレアの歌声を、リッチモンド、シギンズらとともに懐かしのジム・クウェスキン・ジャグ・バンド・スタイルでバックアップした逸品だ。高校帰りに小川町のハーモニーで初めてクウェスキン・ジャグ・バンドのアルバムを買ったあの日のことをまざまざと思い出します。
サンフランシスコ・オペラの木管セクションだけをバックに歌われた「ビューティフル・アイル・オヴ・サムホエア」も胸にしみる。ジミー・ロジャースの「プレイリー・ララバイ」のカヴァー再演もうれしい。こちらにもその木管セクションが参加して、えもいわれぬ哀感を演出している。
ブルース、スピリチュアル、トラディショナル、フォーク、ジャグ・バンドなど、アメリカ音楽の魅力的な源流を、時代を超えていきいきと伝えてくれる1枚。年輪を重ねて、ジェフさんの歌声もさらに熟してきた感じ。素晴らしいです。
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