2000.10.8

Little Feat Jacket Hotcakes &
Outtakes:
30 Years of Little Feat

Little Feat
(Warner/Rhino)


for Music Magazine (Revised)

 フィートが出ました。

 われらがリトル・フィートのデビュー30周年を記念するブックレット型4枚組ボックス。ディスク1と2に1970年から81年まで、オリジナル活動期の代表曲群をまとめ、ディスク3に88年、再結成以降の代表曲群、そしてディスク4にレア音源や未発表曲を詰め込んだ内容だ。

 フィート結成前のロウエル・ジョージ&ザ・ファクトリーによる音源や、ロウエルのソロ・アルバムからの音源もあり。フランク・ザッパさえあきれる、いかれたカリフォルニアのアシッド系シンガー・ソングライターだったロウエル・ジョージを核に据えたローカル・バンドが、徐々に南部のルーツ音楽の要素を取り込みつつ独自のファンキーなグルーヴを研ぎ澄まし、やがてウェザー・リポート真っ青のイマジネイティヴなインプロヴィゼーションをも繰り出すスケールのでかいアメリカン・ロック・バンドへと成長していく過程がいきいきと描かれている。

 で、再確認したのは。やっぱり70年代半ばまで。アルバムで言うと『ラスト・レコード・アルバム』までね。このボックスで言うとディスク1のフィートはすごいです。ディスク1に満載されたグルーヴは時代を超えて聞く者を震撼させる。

 それ以降、ロウエルがどんどんダメちゃん度を増していき、ビル・ペインとポール・バレールが半ば仕方なくバンド内での存在感を強めだしてからの音は、まあ、『タイム・ラヴズ・ア・ヒーロー』ヴァージョンの「ハイ・ローラー」とか、いくつかの例外を除いて今いち見劣りするというか。凄腕ミュージシャンにありがちな、余計なお世話的“洗練”のようなものが前面に押し出されすぎているというか。異論があることを承知で言えば、やはりリトル・フィートはロウエル・ジョージのやばやばな個性あってのものなのだろうと思う。ロウエルが核にいて、それに対して脇からビル・ペインやポール・バレールがどう自らの個性を主張するか…と。

 ただ、ロウエル亡きあと、解散を経て、88年に活動再開してからのフィートは、往年のロウエル入りリトル・フィートのサウンドさえをもひとつのルーツ・ミュージックと据えることで、結果的に再び核にロウエルを取り戻したかのように聞こえる。おかげで、オリジナル活動期にはやらなかったようなサザン・ソウル・タッチの曲などに挑戦しながらも、へたすると70年代後半のフィートよりもフィートっぽいというか(笑)。ディスク3の音を聞きながら、その辺の感触を再確認した。後ろ向きっちゃ後ろ向きな姿勢なので、好き嫌いは分かれると思うけど。

 そしてディスク4の未発表もの。リズムボックスだけをバックにロウエルが弾き語りする「トゥー・トレインズ」のデモ録音とか、今の時代ならローファイな傑作としてそのまま通用しちゃいそうな逸品だ。ヴァン・ダイク・パークスのプロデュースによる「ブリックヤード・ブルース」のカヴァーとか、『ラスト・レコード・アルバム』の裏ジャケでバッテンつけられて "maybe next time" と書かれていたご存じ「ハイ・ローラー」の未発表テイクとかもたまりません。

 メンバーへのインタビューをたっぷり交えたブックレットも面白い。けど、そのブックレットで披露されているヴァン・ダイク・パークスのコメント中、はっぴいえんどとのセッションに関する記述は、まあ、なんというか、ずいぶんだなぁ…と思った。年代的にもめちゃくちゃだし。はっぴいえんどに坂本龍一が在籍していたことにもなってるし。「さよならアメリカさよならニッポン」が東京でトップ10ヒットになったことになってるし。しかも、いやがるヴァン・ダイクとロウエルの顔をジャパン・マネーでひっぱたいてのレコーディングだったんだそうで。

 事実かどうかはともあれ、少なくともヴァン・ダイクははっぴいえんどのことを今なおその程度のものとして捉えているわけだね。うわー。

[ Home | Pick Of The Week | Kenta's Review ]
[ Features | What's Up Archives ]
[ Kenta's Chart | Fav Links | e-mail]


Kenta's
Nothing But Pop!

To report problems with this site or
to comment on the content of this site:
e-mail kenta@st.rim.or.jp


Copyright ©2000 Kenta Hagiwara