99年の初来日公演での「キャロライン・ノー」あたりを筆頭に、ライヴ・シーンへ復帰後のブライアンはいろいろな曲で、そういう、パフォーマーとしての柔軟な表現を聞かせてくれたものだ。この1年の間にぼくが実際に体験した中で特に印象に残ったのは、ニューヨークでの「ラヴ・アンド・マーシー」かな。以前、ニューヨーク公演を見たあとにも書いたことだけれど、あの夜、ブライアンは「ラヴ・アンド・マーシー」の2番のアタマを、"I am lyin' in my room and the news comes on T.V." と現在形で歌った。多くの人が傷ついていることを、まさに今起こっている出来事としてぼくたちに届けてきた。今回の大阪でも、今度は3番、"Oh the lonliness in this world, well it's just not fair" の部分を "Some people are rich, some people are poor, well it's just not fair" みたいな感じで歌っていたし。「ユー・アー(ワー?)・マイ・サンシャイン」でのちょっとした歌詞のインプロヴィゼーションも楽しかった。あと、国際フォーラムでだったか、名古屋でだったか、誰かに壊された君の心のかけらを拾い集める……と歌われるカヴァー曲「アイ・ウォナ・ビー・アラウンド」のあと、「ワークショップ」に入る直前、電気ドリルを顔の横に掲げたブライアンが "We're mending the broken heart" みたいなひとことを挟み込んでいて。曲の意味が一気に明解になったものだ。