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 おすすめアルバム編のほうでカヴァーしきれなかった曲について、簡単にまとめておきます。アルバム編では、アルバム全体がソロ・アーティストとしてのブライアン色を強くたたえたものを選んだわけですが、他の、むしろバンドとしてのビーチ・ボーイズ色が強いアルバムの中にも、随所にブライアンのソロっぽい楽曲が見受けられます。その辺をまとめてリストアップ。『イマジネーション』を聞いてブライアンのことが気になりはじめたなんて方は必聴っす。もちろん、すべてのブライアンの名曲を網羅したわけじゃなく、あくまでも『イマジネーション』につながるかな、とぼくが思った曲をテキトーに並べただけです。あしからず。


 

From the album "Surfin' U.S.A."
  The Beach Boys (Capitol) 1963

Lonely Sea

 ブライアンとゲイリー・アッシャーが出会ったその日に共作した曲と言われるビーチ・ボーイズ初の3連バラードだ。ブライアンも敬愛していた天才プロデューサー、フィル・スペクターが在籍していたテディ・ベアーズの曲調を意識したコード進行をともなった沈静した雰囲気が印象的。自分のもとを去ってしまった恋人に“君はまるで日々姿を変える寂しい海のようだ”と歌いかける内容だが、太陽と自然を謳歌するサーフィン・ミュージックを売り物にしていたと思われがちなビーチ・ボーイズは、初期の段階からこうした厭世観に貫かれた作品を作り上げていたのだ。

 

 

From the album "Surfer Girl"
  The Beach Boys (Capitol) 1963

In My Room

 実父、マーリー・ウィルソンの独裁的な姿勢に対する確執から自分の部屋に閉じこもってしまったブライアンの心境が託された名バラード。“闇がやってきた。ぼくは一人きりだ。でも、怖くないさ。ぼくの、この部屋にいれば……”という歌詞がしみる。聖歌を思わせるクールなハーモニーに彩られた、鎮静した表情が印象的な曲だ。やはりブライアンとゲイリー・アッシャーの共作。

 このアルバムには、他にもタイトル・チューンである「サーファー・ガール」やブライアンのソロ・ヴォーカルが楽しめる「サーファー・ムーン」「ユア・サマー・ドリーム」といった名曲も多く収められている。さらに、ブライアン・ウィルソン名義による初プロデュース作でもある。

 

 

From the album "Shut Down Vol. II"
  The Beach Boys (Capitol) 1964

Don't Worry Baby

 ブライアンの最高傑作のひとつ。敬愛するプロデューサー、フィル・スペクターが手がけたロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」を意識して書かれたメロディだ。大編成のミュージシャン群を駆使しながらフィル・スペクターが作り上げた、いわゆる“ウォール・オヴ・サウンド”を表層的に模倣するのではなく、むしろスペクターとは正反対の簡素なコンボ演奏に乗せて、豊かなふくらみを持ったコーラスで音像をバックアップしている。

 ブライアンのロマンティックなファルセット・ヴォーカルも素晴らしい。“いつごろからかわからないけれど、ぼくの中でその思いが強くなっているんだ。なぜかはわからないけれど、何かいけないことが起こりそうな気がする。でも、彼女はぼくの目を見て、こう言ってくれるんだ。ドント・ウォリー・ベイビー……”という1番の歌詞は、ティーンエイジャーにとって永遠のテーマを歌っているかのように思える。

 

The Warmth Of The Sun

 ブライアンが95年、アルバム『駄目な僕』でもカヴァーした名曲。ケネディ大統領暗殺のニュースを聞いた翌日、ブライアンとマイクが書き上げたと言われるバラードだ。めまぐるしく短三度の転調を繰り返しながらも、まったく無理を感じさせないブライアンの作曲能力に脱帽。

 “別れ際、「私はあなたと同じように思わない」と彼女が告げたとき、ぼくは泣いた”と歌うブライアンの声はこの上なく切なく、内省的に響く。

 

Keep An Eye On Summer

 ブライアンの初めてのルームメイトでもあり、「ユア・サマー・ドリーム」の共作者でもあるボブ・ノーバーグとの共作曲。今回の『イマジネーション』でもカヴァーされているが、サビのメロディが一部違っている。

 

 

From the album "All Summer Long"
  The Beach Boys (Capitol) 1964

I Get Around

 ビーチ・ボーイズにとって初の全米ナンバーワン・ソング。ブライアンとマイクの共作だ。全体的な手触りは従来通り、一点の翳りもないティーンエイジ・ライフを題材にした鉄壁のポップ・ソングだが、のちに開花するブライアンならではの画期的なベース・ラインがきわめて明解な形で初めて提示された曲でもある。

 ちなみにこのシングルのB面は「ドント・ウォリー・ベイビー」。ビーチ・ボーイズの歴史上、もっとも素晴らしいシングルだった。

 

 

From the album "Sprit Of America"
  The Beach Boys (Capitol) Greatest Hits Album

The Little Girl I Once Knew

 65年11月にリリースされ全米20位にランクしたシングル曲。やはりフィル・スペクターお得意の“音の壁”をブライアンなりに再構築した素晴らしい仕上がりだ。曲中に当時のポップ・ミュージックの常識では考えられないほど長いブレイクを挿入するなど、その冒険心に満ちたサウンドはもちろん、成長していくことのむずかしさを託した歌詞も含めて、明らかに翌66年にリリースされる傑作『ペット・サウンズ』へとつながるもの。にもかかわず、ビーチ・ボーイズが全米トップ10ヒットを連発していた65年にあって、この曲のみが全米20位止まりに終わったのは、ラジオでオンエアするには曲中のブレイクが長すぎ、DJたちが尻込みしたせいだとも言われている。革新的な1曲。

 

 

From the album "Summer Days (And Summer Nights!!)"
  The Beach Boys (Capitol) 1965

Let Him Run Wild

 情熱的な部分とセンチメンタルな部分とが交錯するメロディ、ユニークなコード進行とベース・ライン、スリル溢れるファルセット・ヴォーカル、ワイルドなコーラス、ホーン・セクションをはじめ、ハンド・クラッピング、ウッドブロック、ヴァイブなどが実に効果的に配置された音像。この曲における様々な音楽的試行錯誤もまた、翌年の『ペット・サウンズ』へと結実した。『イマジネーション』でもカヴァーされている。

 

 

From the album "Wild Honey"
  The Beach Boys (Capitol) 1967

Let The Wind Blow

 95年のセルフ・カヴァー・アルバム『駄目な僕』でも取り上げられた曲。ユニークなベースラインが曲想を決定づけている。全体的にR&B色が強まったといわれる本アルバムの中で、この曲と「カントリー・エアー」「ア・シング・オア・トゥー」あたりは『スマイル』〜『スマイリー・スマイル』期のビーチ・ボーイズならではの持ち味がもっとも強く盛り込まれた作品だ。ブライアンとマイクの共作。

 

 

From the album "Friends"
  The Beach Boys (Capitol) 1968

Busy Doin' Nothin'

 『駄目な僕』でも取り上げられた「メント・フォー・ユー」なども含むアルバムだが、このアルバムで展開されたアダルト・コンテンポラリーなサウンドの方向性は、確実に『イマジネーション』のサウンドのルーツとも言うべきものだろう。いい曲ぞろい。特に、ブライアンが当時の彼の暮らしぶりをそのまま歌詞に託したボサノバ・ナンバーである本曲が、個人的には大好きだ。

 外部ミュージシャンの演奏をフィーチャーした実質的ソロ曲。ブライアンの自宅までの道案内や、電話番号をなくしてしまって結局手紙を書くはめになってしまう様子などが美しいメロディに乗せてストレートに綴られている。ブライアンはバート・バカラックにもかなり入れ込んでいたようだが、この曲などバカラックからの影響を強くたたえた好例だろう。

 

 

From the album "20/20"
  The Beach Boys (Capitol) 1969

Cabinessence

 『スマイル』に収録予定だった名曲。バンジョーと“ドゥイン・ドゥイン”という不思議なコーラスに彩られた「ホーム・オン・ザ・レインジ」と呼ばれる美しくノスタルジックな、いわゆるAメロ部分と、「フー・ラン・ジ・アイアン・ホース」という重厚な3拍子の部分と、「ハヴ・ユー・シーン・ザ・グランド・クーリー・ダム」という聖歌ふうのコーラス・パートから成る組曲だ。ブライアンとヴァン・ダイク・パークスの共作。

 フェイドアウト間際に登場する“Over and over the crow cries, uncover the corn field”という歌詞は、その意味をめぐってマイク・ラヴとヴァン・ダイク・パークスが決定的な対立を迎えた曰く付きのもの。

 この曲のほか、70年のアルバム『サンフラワー』に収められた「クール・クール・ウォーター」や、71年のアルバム『サーフズ・アップ』のタイトル曲などは、『スマイル』の残骸を再利用する形でレコーディングされた必聴楽曲だ。98年6月現在この辺のCDは廃盤状態だが、今年の暮れにはキャピトルを通じてCD再発が計画されているようなので、出た暁には、ぜひお試しを。


Sunflower
The Beach Boys
(Brother/Reprise)
1970

Surf's Up
The Beach Boys
(Brother/Reprise)
1971

 

 

 

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