埼玉県警の無免許取り締まり
今年2月、埼玉県警生活経済課と川越、狭山、西入間の各警察署の
合同捜査班は、同県内や東京都内のスーパー銭湯などで知事に無届けで
施術所を開設したり、無免許者にマッサージ行為をさせたとして、
東京都福生市の派遣会社「偕州』の社長らをあはき等法違反容疑で
逮捕した。
この事件は、「苦労して免許を取った人の職域を侵し、利用者の身体にも
危険がある」と、県警が摘発に踏み切ったとして各紙が大きく報道。
無免許者の取り締まり強化を求めている視覚障害の業界関係者らは、
今回の県警の対応について、施術内容を「マッサージに該当する」と
判断し、容疑者を逮捕したことを高く評価している。
施術内容を・「危険」と判断
警察による無免許マッサージ取り締まりは、これまで頻繁に行われている。
しかし、その多くは「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」
(風営法)や、不法就労外国人を取り締まる「出入国管理及び難民認定法」
(出入国管理法)がらみでの摘発がほとんど。あはき等法違反で無免許
取り締まりを行うケースはまれであった。
ところが、昨年からの無免許業者の取り締まりでは、あはき等法違反
容疑が数多く適用されるようになった。主な事件としては、1月14日、
神奈川県警が東京都新宿区の「エーワン」の会長と社長らを逮捕
▽同日、福井県警が敦賀市のマッサージ店経営者らを逮捕▽2月10日、
奈良県警が新庄町の住職を逮捕▽3月2日、警視庁が東京都新宿区の
「早稲田東洋ひ医学研究所」社長等を逮捕▽5月25日、徳島県警が
千葉県松戸市のマッサージ師派遣業者らを逮捕▽8月19日、宮崎県警が
宮崎市のマッサージ店経営者らを褪捕――などがある。
「あはき法」で摘発評価
埼玉盲の協力を得 容疑事実 地道な捜査で
今回、埼玉県警が捜査に着手したのは昨年9月、捜査員約20人の体制で
臨み、捜査員が埼玉盲を訪問し、理療科教員からマッサージがどういう
ものかについての指導と資料提供も受けた。捜査には、捜査員が施術所へ
出向いて実際に治療を受け、治療を受けた人たちにも自称を聴くなどして、
容疑事実を固めていった。
そのうえで、同県警は10月12日付で、厚生労働省に対して具体的な
施術内容を明記し、これら行為があはき等法1条に規定する「あん摩
マッサージ指圧師免許を必要とする行為」であるかを照会。これに対し、
厚生労働省は今年1月12日付で「照会の事例は、あん摩マッサージ
指圧師が行わなければ、人体に危害を及ぼし、又は及ぼすおそれのある
行為で.同条のあん摩、マッサージ又は指圧に該当するとはんだんされる。
したがって、無資格者がこれを業として行った場合には、同条に違反
するものと思料する」などと回答。これを受けて、同県警はさらに
最終的な裏付け捜査を進め、逮捕に踏み切った。
視覚障害の業界関係者らは、今回の埼玉県警の対応について@被疑者が
施術内容を整体やボディケア、リラクゼーションなどと主張したものの、
実態がマッサージであると判断A無免許者の施術による骨折などの被害が
出たことを受けての摘発ではなかったB出入国管理法など他の法律違反を
適用せずにあはき等法のみで逮捕した――ことなどを高く評価。
また国りハあはきの会は「医学知識も無い無免許者の施術によって
引き起こされる被害から、一般国民を守ることにもつながる」として、
同県警に感謝状を手渡した。こうした反応に、同県警は「捜査員たちの
地道な努力が報われ、励みにもなる」としている。
ところで、これまでの無免許業者の摘発事例を振り返ってみると、
いくつかの課題が改めて浮き彫りとなったように感じている。
一つは、保健所など行政の具体的な取り組みについて。厚生労働省は
毎年、年度末に全国医政関係主管課長会議を開き、配布資料のなかに
「あはき無資格者の取り締まりについて」と題する項目を盛り込み、
「免許を受けないであん摩、マッサージ又は指圧を業とする者の
取り締まりについて」(昭和39年11月18日付、医発第1379号)で
示している趣旨を踏まえ、保健所等関係機関とも連携し、その徹底を
図るよう求めている。しかし、その趣旨がどこまで徹底されているのか。
二つ目は、これまでの事件を担当した捜査員の多くが「マッサージと
いうものがあまりにもあいまい」と指摘している点。こうしたあいまいな
点について今後、何らかの定義・解釈が必要となっているようだ。