■法規制なし/視覚障害者団体「国は対策を」


 手ごろな料金で足裏や肩をもんだりする「リラクセーションサービス」の店が急増する一方で、国家資格を取得して指圧マッサージで生計を立てている視覚障害者らから「生活が脅かされている」と窮状を訴える声が続出している。
 
 リラクセーションサービスの施術者は、養成学校などで研修を受けるだけで、あんまマッサージ指圧師や鍼灸(しんきゅう)師としての国家資格を持たない人がほとんど。
 
 「サービスの内容は国家資格が必要なマッサージと同じ」として、複数の視覚障害者団体が厚生労働省に何らかの対応を求めているが、同省は「マッサージの法的な定義はなく、資格が必要かどうかはケース・バイ・ケースで判断するしかない」と静観の構えだ。
 
 東京都港区のオフィスビルにある大手リラクセーションサービスの系列店舗。南国風の内装とほの暗い照明の店内に、ゆったりとした音楽が流れる。仕事帰りに訪れたという女性会社員(35)は「手軽に疲れが取れるし、気分転換としてもよく利用する」と話す
 
 客の大半が20〜30代のOL。30代の女性店長は「パソコンの影響か、目の疲れや腰の張りを訴える女性が多い。ストレスを解消してもらうため、スタッフは施術をしながら愚痴の聞き役に徹することもある」。

東京都港区の治療院で、
客にマッサージをする指圧師
 「癒やし」や「疲労回復」をうたったリラクセーションサービスは、足裏を押す「リフレクソロジー」や全身をもむ「ボディケア」など施術内容はさまざま。急成長の一方、サービスに対する明確な法規制がないことに、業界内からも不満や戸惑いの声が出ている。
 
 ◆国家資格あるのに
 
 こうした店は登録制度もなく、厚労省も実態は把握していない。別のリラクセーションサービス大手の関係者は「今は『玉石混交』の状態で、知識のない施術者が行うと健康被害の恐れもある。消費者を守るためにも、法整備が必要では」と打ち明ける。
 
 治療目的で客の体をもむなどすることは「医業類似行為」となり、3年以上の専門教育と国家試験を受け、あんまマッサージ指圧師の資格を取得しなければ行えない。
 
 業界大手6社が加盟する「ボディリラクゼーション従事者安全・安心機構」(BRSO、東京)は「心と体のリラックスを提供するサービスであり、医業類似行為ではない」と主張する。
 
 「資格を持つ意味は何なのか。障害をはね返そうと思って働いているのに、国はその思いを打ち砕いている」。群馬県高崎市のビジネスホテルであんまマッサージ指圧師として働く視覚障害者の女性(59)は訴える。今年になってホテルに足裏をもむリラクセーションサービスの業者が入って以降、仕事が激減したという。
 
 ◆「食べていけない」
 
 厚労省によると、あんまマッサージ指圧師として働く視覚障害者は1996年度には3万3430人だったが、2006年度には2万5462人に減少。社団法人「日本あん摩マッサージ指圧師会」(会員約2000人)は「リラクセーションサービスの影響が大きい」と指摘する。
 
 同会には会員から「開業しても食べていけない」「無資格者を取り締まるための運動をしてほしい」などの相談が相次いでいるといい、時任基清(ときとう・もときよ)会長は「技術は確かでも、昔ながらの畳敷きの治療院では、料金が安くおしゃれな店構えのリラクセーションサービスに対抗できない」と訴えている。