毎日新聞2001年5月25日東京朝刊から>



◇「国家資格ない人が施術」

 健康療法やいやしブームで、カイロプラクティックやリフレクソロジー(足裏健康法)、クイックマッサージなどの看板を掲げる店が急増している。しかし「『マッサージ』ができるのは国家資格をもった人だけなのに、無資格の人が増え視覚障害者の自立が難しくなる」と、マッサージ師の団体が25日、厚生労働省と改善策について交渉する。【小島明日奈】

 「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師に関する法律」(あはき法)は、マッサージなどを仕事とする人は、養成機関で3年以上学んだ後、国家試験に合格して得る免許が必要としている。しかし、あはき法はマッサージ自体については定義していない。

 25日交渉するのは、国立身体障害者リハビリテーションセンター(埼玉県所沢市)で学び、マッサージ師などの資格をとった中途失明者らの「国リハあはきの会」。同会はマッサージを「手指を使って人体に何らかの施術行為をすること」と解釈している。与那嶺岩夫・事務局長(58)は「カイロプラクティックもリフレクソロジーもマッサージそのもの。しかも白衣を着て応対していれば、患者は国家資格を持つ者かどうか区別がつかない。国はせめて広告などで区別ができるようにすべきではないか」と話す。現在、あはき法では、医療法と同様に広告などを制限しているが、法律の規制のない“マッサージ類似”店は、自由に治療効果などをうたってPRしている。

 日本盲人会連合などは、「国家資格のない人がマッサージなどをすると事故が起きる可能性がある」として、新たにすべての療法を包括する国家資格「手技療法師」をつくろうと、関係団体に働きかけている。

 厚生省(当時)は91年に「患者の身体に損傷を加える危険が大きい」と、カイロプラクティック療法での頸椎(けいつい)に急激な回転や伸展を加えるスラスト法を禁止した。しかし一部では、禁止された療法が今も行われている実態がある。

 あはき法が制定された47年当時は、資格者の9割以上が視覚障害者だったが、今では約3割だ。江戸時代以来、マッサージは視覚障害者の職業的自立の手段だったという背景もある。

 ◆“医療”と健康療法、線引きどうする
 ◇日本リフレクソロジー協会の藤田桂子理事長の話

 足裏の反射ゾーンを刺激する英国式リフレクソロジーの目的は、心と体のリラックスであり、国家資格を持つ人ができる治療行為とは別のもの。利用者はニーズに応じて、双方をうまく活用している。

 ◇「日本カイロプラクティック機構」設立準備委員会委員長の村井正典さんの話

 カイロプラクティックは背骨の矯正による自然治癒力の向上を図るもので、医業類似行為はしていない。職業選択の自由もある。2年後には民間資格「カイロプラクティック師」の免許試験を始めたい。

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<参考>

(福)日本盲人会連合

国立身体障害者リハビリテーションセンター

日本リフレクソロジー協会

日本カイロプラクティック機構