神戸新聞・2003/08/31>より

 オフィス街や温浴施設などを中心に「リラクゼーション」「足つぼマッサージ」などの簡易マッサージ専門店が急増しているが、免許を持たない施術者が多いことから、兵庫県内のマッサージ師らの団体が、行政に対して取り締まりを強化するよう求めている。簡易マッサージが医療行為に当たるのかどうか、明確な線引きはなく、行政側は今のところ静観の構えだ。(森本尚樹)

 あん摩、マッサージ、指圧、はり、灸の免許を取得するには三年以上の専門教育を受け、国家試験に合格しなければならない。免許がなくてもこれらの行為ができるのは医師だけだ。

 一方、簡易マッサージの施術者は一定の研修を終えただけで、国家免許を持たない人が多い。また、あん摩など正規の施術所には広告の規制があるが、簡易マッサージは自由に広告や宣伝活動を展開。足つぼマッサージなどのほか、カイロプラクティックや整体も人気で、神戸市内だけで約二百店がしのぎを削る。

 こうした動きに、県内のマッサージ師らがつくる「無資格マッサージ・はり・灸対策協議会」では、一部業者について、保健所や県警に取り締まり強化を依頼。六月には、無免許スタッフが施術していた神戸市立フルーツフラワーパーク(同市北区)のリラクゼーションコーナーに抗議。同パーク側は正規マッサージ師のみに切り替えた。

 八月には総決起集会を開催。善積進会長は「正規の資格者の多くは視力障害者。生活のためにも、無免許営業を野放しにはできない」と徹底抗戦の構えを見せる。

 だが、行政側の反応は鈍く、神戸市保健所は「実質はマッサージでも、はっきり『マッサージ』と掲げない限り、私たちに監督権はない。資格が必要なサービスとそうでないサービスの線引きがあれば…」と話す。

 最高裁は一九六〇年、禁止処罰には「人の健康に害を及ぼす恐れがあることの認定が必要」との見解を示しており、同保健所は「無免許での施術だけでは取り締まれない」と説明する。

 全国にリラクゼーション専門店「クアシス」二十店舗を展開するガブルス・ジャパン(神戸市)の町中岳営業本部長は「治療としてのマッサージとは違い、私たちのサービスはあくまで癒やし。共存のための法整備を待ちたい」と話す。