第164回国会 厚生労働委員会 第28号
平成十八年六月十五日(木曜日)
   午前十時一分開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         山下 英利君
    理 事
                岸  宏一君
                中村 博彦君
                津田弥太郎君
                円 より子君
                渡辺 孝男君
    委 員
                阿部 正俊君
                岡田  広君
                坂本由紀子君
                清水嘉与子君
                武見 敬三君
                中原  爽君
                西島 英利君
                藤井 基之君
                水落 敏栄君
                足立 信也君
                朝日 俊弘君
                家西  悟君
                島田智哉子君
                下田 敦子君
                辻  泰弘君
                森 ゆうこ君
                山本  保君
                小池  晃君
                福島みずほ君
   衆議院議員
       厚生労働委員長  岸田 文雄君
   国務大臣
       厚生労働大臣   川崎 二郎君
   副大臣
       厚生労働副大臣  中野  清君
       厚生労働副大臣  赤松 正雄君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        江口  勤君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○社会保障及び労働問題等に関する調査
 (精神病院の用語の整理等のための関係法律の
 一部を改正する法律案に関する件)
○戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法及び
 戦没者等の妻に対する特別給付金支給法の一部
 を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○がん対策基本法案(衆議院提出)
○進行性化骨筋炎の難病指定に関する請願(第一
 三号外一〇件)
○高校・大学生、青年の雇用と働くルールに関す
 る請願(第三〇号外一七件)
○患者負担増の反対、保険で安心してかかれる医
 療に関する請願(第三九号外二二件)
○憲法第二十五条を守り、国民の命と暮らしを保
 障することに関する請願(第四〇号外四件)
○青年の雇用確保に関する請願(第八〇号外一件
 )
○安全で行き届いた医療・介護の保障に関する請
 願(第一七六号外八件)
○老後を支える最低保障年金制度の実現に関する
 請願(第二〇六号外一七件)
○憲法第二十五条を守り、国民の命と暮らしの保
 障に関する請願(第二七〇号外一六件)
○業者婦人の健康を守る施策等に関する請願(第
 二七九号外三件)
○安心できる介護制度など社会保障の拡充に関す
 る請願(第二八二号)
○年金・医療等の制度改革に関する請願(第二九
 一号)
○じん肺根絶に関する請願(第三四四号外一五件
 )
○患者・国民負担増計画の中止と保険で安心して
 かかれる医療に関する請願(第三六四号外二四
 件)
○三障害統合の美名の下に精神を含むすべての障
 害者に対する人権侵害の反対に関する請願(第
 四〇二号外一件)
○保育・学童保育・子育て支援施策の拡充と予算
 の大幅増額に関する請願(第四一〇号外三七件
 )
○安心で行き届いた医療・介護に関する請願(第
 四四六号外九件)
○患者負担増計画の中止と保険で安心してかかれ
 る医療に関する請願(第四六〇号外九三件)
○患者負担増への反対、保険で安心してかかれる
 医療に関する請願(第四八一号外二件)
○命と健康を奪う医療制度改革関連法案、患者負
 担増の反対に関する請願(第四九一号外四件)
○患者負担増の中止に関する請願(第五〇三号)
○保育を必要とする子供たちへの国からの補助に
 関する請願(第五二一号外一三件)
○パーキンソン病患者の療養生活上の諸問題救済
 策に関する請願(第五六八号外一七件)
○患者・国民負担増計画中止と保険で安心してか
 かれる医療に関する請願(第六一一号外三五件
 )
○安心して透析を受けられる医療制度改革に関す
 る請願(第六四四号外四七件)
○遺族年金の併給に関する請願(第七四七号)
○保育・学童保育・子育て支援施策拡充と予算の
 大幅増額に関する請願(第七七〇号)
○新しい高齢者医療制度の創設に関する請願(第
 八五九号)
○無免許マッサージから国民を守る法改正に関す
 る請願(第八六一号外一四八件)
○パートタイム労働者の均等待遇実現に関する請
 願(第八八四号外九件)
○男女が共に仕事と家庭を両立させ人間らしく働
 けるための男女雇用機会均等法の抜本改正に関
 する請願(第九三四号外九件)
○腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(第九
 六九号外八六件)
○小規模作業所等成人期障害者施策に関する請願
 (第一〇八九号)
○男女雇用機会均等法等の改正に関する請願(第
 一一五七号外一七件)
○患者負担増計画中止と保険で安心してかかれる
 医療に関する請願(第一一七三号外三三件)
○男女雇用機会均等法等の抜本改正に関する請願
 (第一一九四号外八件)
○カネミ油症被害者の抜本的な恒久救済対策の完
 全実施に関する請願(第一三二九号外二二件)
○障害者の福祉・医療サービスの利用に対する応
 益負担の中止に関する請願(第一三三九号外二
 〇件)
○難病、長期慢性疾患、小児慢性疾患に対する総
 合的対策に関する請願(第一三六一号外八〇件
 )
○患者・国民負担増計画の中止、保険で安心して
 かかれる医療に関する請願(第一三八二号外一
 件)
○介護療養病床の全廃、医療療養病床の大幅削減
 に反対し、療養・介護の環境及びサービスの整
 備・拡充を行うことに関する請願(第一三九九
 号外三三件)
○だれもが安心して良い医療を受けられるよう国
 民皆保険制度を守ることに関する請願(第一四
 〇一号外三件)
○医療改悪や庶民大増税をやめ最低保障年金制度
 を実現することに関する請願(第一四二五号外
 一〇件)
○助産所と自宅における出産の安全性の確保と支
 援に関する請願(第一四六八号外四件)
○はり灸治療の健康保険適用の拡大に関する請願
 (第一四九四号外九件)
○患者負担増中止に関する請願(第一四九七号外
 三件)
○命の不平等を拡大する混合診療の解禁反対、特
 定療養費制度の拡大反対に関する請願(第一五
 一六号)
○患者負担増反対、保険で安心してかかれる医療
 に関する請願(第一五九六号外四件)
○医療費窓口負担の軽減、介護保険の改善に関す
 る請願(第一六一五号)
○介護保険・障害者福祉の利用制限や負担増など
 の改悪に反対し、制度の改善を行うことに関す
 る請願(第一六一六号外一件)
○ゆうメイトの雇用を守り、労働条件の改善を行
 うことに関する請願(第一七〇七号外九件)
○医療改革法案の撤回と医療の充実に関する請願
 (第一七二〇号外一四件)
○総合的な肝疾患対策の拡充に関する請願(第一
 七八二号外二二件)
○季節労働者対策に関する請願(第一八一〇号外
 二件)
○患者・国民負担増計画の中止及び保険で安心し
 てかかれる医療に関する請願(第一八九〇号外
 三件)
○患者・国民の願いである安心で行き届いた医療
 の確立に関する請願(第一九三九号外一五件)
○無年金の在日外国人障害者・高齢者の救済に関
 する請願(第二一五六号外三二件)
○障害者自立支援法の撤廃に関する請願(第二一
 七五号)
○患者の負担増反対、保険で安心してかかれる医
 療に関する請願(第二一七七号外一件)
○医療費負担増反対、患者負担の軽減に関する請
 願(第二一九三号外二件)
○療養病床の廃止・削減及び患者負担増の反対に
 関する請願(第二二六〇号外一二件)
○公共事業における労働者と中小業者の仕事と適
 正な収入の確保等に関する請願(第二三二四号
 外四二件)
○サービス利用の制限や負担増など介護保険の改
 悪に反対し、改善を行うことに関する請願(第
 二三三二号外四件)
○FOP(進行性骨化性線維異形成症)の特定疾
 患治療研究事業の対象疾患への指定(難病指定
 )に関する請願(第二三四三号外一件)
○てんかんを持つ人の医療と福祉の向上に関する
 請願(第二三六八号外一二件)
○いつでもどこでもだれでも医療にかかれる優れ
 た医療制度を守り拡充することに関する請願(
 第二五一八号外四件)
○患者・国民負担増計画中止、保険で安心してか
 かれる医療に関する請願(第二五四一号外五件
 )
○国の乳幼児医療費無料制度創設に関する請願(
 第二五四五号外四件)
○小規模作業所等の成人期障害者施策に関する請
 願(第二五七七号外一八一件)
○すべてのリハビリテーション対象者へのリハビ
 リテーションの継続と機会に関する請願(第二
 八一九号)
○いつでもどこでもだれでも医療にかかれる日本
 の優れた医療制度を守り拡充することに関する
 請願(第二八八〇号)
○安全・安心の医療と看護の実現に関する請願(
 第二九〇二号)
○患者負担増への反対と保険で安心してかかれる
 医療に関する請願(第二九七一号外三件)
○公的医療保険での十分な医療保障に関する請願
 (第二九七三号)
○最低賃金の時間額千円以上への引上げと全国一
 律最低賃金の法制化に関する請願(第三〇七二
 号外一件)
○医療改革法案の撤回と窓口負担の引下げに関す
 る請願(第三〇七五号)
○医療改革法案の撤回と医療制度改善に関する請
 願(第三一六四号)
○空前の患者負担の引上げをやめ、保険証一枚で
 安心してかかれる医療保険制度を守ることに関
 する請願(第三二〇四号)
○だれでも保険で安心してかかれる医療に関する
 請願(第三三九二号)
○医療費負担増反対、患者負担軽減に関する請願
 (第三四〇六号)
○継続調査要求に関する件
○委員派遣に関する件
    ─────────────
○委員長(山下英利君) ただいまから厚生労働委員会を開会いたします。
 社会保障及び労働問題等に関する調査のうち、精神病院の用語の整理等のための関係法律の一部を改正する法律案に関する件を議題といたします。
 本件につきましては、西島英利君から委員長の手元に精神病院の用語の整理等のための関係法律の一部を改正する法律案の草案が提出をされております。内容はお手元に配付のとおりでございます。
 この際、まず提案者から草案の趣旨について説明を聴取いたします。西島英利君。
○西島英利君 ありがとうございます。
 ただいま議題となりました精神病院の用語の整理等のための関係法律の一部を改正する法律案の草案につきまして、その内容を御説明申し上げます。
 我が国の精神障害者施策は、明治三十三年の精神病者監護法に始まり、昭和二十五年の精神衛生法制定後も、精神病院への収容主義の下で行われてきました。このような歴史的経緯から、精神病院という用語には、医療を行う施設ではなく精神病者を収容する施設というイメージが残っております。そのことが、精神科医療機関に対する国民の正しい理解の深化や患者の自発的な受診の妨げとなっております。
 精神障害者施策については、昭和四十年以後、入院医療中心の治療体制から地域におけるケアを中心とする体制へという流れの中で、精神医療における人権の確保、社会復帰の促進や精神障害者の自立と社会参加の促進という理念の下に、順次、改善・向上が図られてきたところであります。
 しかしながら、精神病院という法令用語については、精神病者の収容施設であるとのイメージが残ったまま、その後も変更されることなく今日に至っている状況にあります。
 そこで、精神病者を収容する施設というイメージを払拭するため、精神病院という用語を、患者や患者の家族が心理的抵抗を感じることが少なく、かつ、専門的医療を提供する施設であることが明らかな精神科という診療科名を用いて、精神科病院という用語に改めることにより、精神科医療機関に対する国民の正しい理解を深めるとともに、患者が受診しやすい環境を醸成することが必要となっています。
 本案は、こうした状況にかんがみ、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等における精神病院という用語を精神科病院という用語に改めるものであります。
 この用語の改正によって、うつ病などの患者が精神科を受診しやすい環境が醸成されることは、近年、大きな社会問題となっている自殺者の増加に対する対策としても重要であると考えられます。
 そのほか、警察官職務執行法には精神病者収容施設という用語が用いられておりますが、以上のような趣旨にかんがみると、法律で用いられる用語として不適当であると考えられますので、あわせて、この用語を削除することとしております。
 なお、この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行することとしております。
 以上が、この法律案の草案の趣旨及びその内容の概要であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○委員長(山下英利君) 本草案に対し、質疑、御意見等がございましたら御発言願います。──別に御発言もないようですから、本草案を精神病院の用語の整理等のための関係法律の一部を改正する法律案として本委員会から提出することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山下英利君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたします。
 なお、本会議における趣旨説明の内容につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山下英利君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(山下英利君) 次に、戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法及び戦没者等の妻に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案を議題とし、政府から趣旨説明を聴取いたします。川崎厚生労働大臣。
○国務大臣(川崎二郎君) ただいま議題となりました戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法及び戦没者等の妻に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 戦傷病者等の妻等に対しましては、その置かれた状況にかんがみ、これまで特別給付金として国債を支給してきたところでありますが、今回、これらの方々に改めて特別給付金を支給すること等とし、関係の法律を改正しようとするものであります。
 以下、この法律案の概要について御説明申し上げます。
 第一は、戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法の一部改正であります。これは、特別給付金国債の償還を終えた戦傷病者等の妻に対して、改めて特別給付金として額面百万円、十年償還の国債を支給すること等とするものであります。また、特別給付金国債の償還を終えたときに、夫たる戦傷病者等が平病死している場合、その妻に特別給付金として額面五万円、五年償還の国債を支給することとしております。
 第二は、戦没者等の妻に対する特別給付金支給法の一部改正であります。これは、戦傷病者等の妻として支給を受けた特別給付金国債の償還を終えたときに、夫たる戦傷病者等の死亡により戦没者等の妻となっている方に対して特別給付金を支給するものであります。
 以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
○委員長(山下英利君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。──別に御発言もないようですから、これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法及び戦没者等の妻に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(山下英利君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山下英利君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(山下英利君) 次に、がん対策基本法案を議題とし、提出者衆議院厚生労働委員長岸田文雄君から趣旨説明を聴取いたします。岸田文雄君。
○衆議院議員(岸田文雄君) ただいま議題となりましたがん対策基本法案について、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。
 本案は、我が国のがん対策がこれまでの取組により進展し、成果を収めてきたものの、なお、がんが国民の生命及び健康にとって重大な問題となっている現状にかんがみ、がん対策の一層の充実を図るため、がん対策に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体等の責務を明らかにし、がん対策を総合的かつ計画的に推進しようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。
 第一に、がんの克服を目指し研究を推進するとともに、その成果を普及・活用し発展させること、がん患者がその居住する地域にかかわらず、科学的知見に基づく適切ながん医療を受けることができるようにすること等をがん対策の基本理念として定めること。
 第二に、政府は、がん対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、がん対策推進基本計画を策定することとし、厚生労働大臣は、基本計画の案の作成に当たり、関係行政機関の長と協議するとともに、がん対策推進協議会の意見を聴くものとすること。
 また、都道府県は、がん対策推進基本計画を基本とするとともに、都道府県におけるがん患者に対するがん医療の提供の状況等を踏まえ、都道府県がん対策推進計画を策定するものとすること。
 第三に、基本的施策として、がんの予防の推進、がん検診の質の向上等のために必要な施策を講ずること、がんの専門医等の育成、拠点となる病院や連携協力体制の整備、がん患者の療養生活の質の維持向上及びがん医療に関する情報の収集提供体制の整備等のために必要な施策を講ずること、並びに、がん研究の促進、がん医療を行う上で特に必要性が高い医薬品・医療機器の早期の承認に資する環境整備のために必要な施策を講ずることを定めること。
 第四に、厚生労働省に、がん対策推進基本計画の案の作成に際し意見を聴くため、がん患者等を代表する者、がん医療に従事する者及び学識経験者から構成されるがん対策推進協議会を設置すること。
 なお、この法律は、平成十九年四月一日から施行すること。
 以上が、本案の提案理由及びその内容であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
○委員長(山下英利君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。──別に御発言もないようですから、これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 がん対策基本法案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(山下英利君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、津田君から発言を求められておりますので、これを許します。津田弥太郎君。
○津田弥太郎君 私は、ただいま可決されましたがん対策基本法案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党及び社会民主党・護憲連合の各会派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    がん対策基本法案に対する附帯決議(案)
  がんが日本人の死亡原因の三十一パーセントに上り、年間三十万人以上もの患者が命を失っている現状にかんがみ、国を挙げて「がんとの闘い」に取り組むとの意志を明確にするとともに、がん対策基本法の制定をもって、我が国のがん医療を改善する契機とするため、政府は、次の事項について、適切な措置を講ずるべきである。
 一、本法により創設される「がん対策推進協議会」については、政府の策定する「がん対策推進基本計画」の立案に積極的に関与する機関であるとの位置づけにのっとり、その機能が十分に発揮できるよう配慮すること。その際、がん医療に関連する他の検討会等との役割分担や連携の強化にも努めること。
 二、「がん対策推進基本計画」については、「健康フロンティア戦略」及び「がん対策推進アクションプラン二〇〇五」において、平成二十六年までの十年間に「五年生存率を二十パーセント改善する」との目標が確認されていることを踏まえ、関係府省との連携の下、速やかに策定すること。
 三、「がん対策推進協議会」の委員構成については、がん患者が初めてがん医療の政策立案過程に参画できるようになったことの意義を重く受け止め、がん患者の意向が十分に反映されるよう配慮すること。
 四、がん医療に関する情報提供については、がん患者が医療機関を選択する際に役立つよう、各がん専門医療機関の専門分野、専門的な知識及び技能を有する医師その他の医療従事者の数や設備の状況などの医療機能情報が、患者の視点に立って適切に提供される体制を整えること。
 五、がんの治療法に関する情報については、手術療法、放射線療法、化学療法その他のがんの治療法についての最新の情報を、できる限り平易な言葉で国民に提供する体制を整えること。
 六、病状、治療方法等について、患者が医師等の説明を理解し、納得した上で治療法の選択ができるよう、正確かつ適切な情報提供の推進、セカンドオピニオン外来・医療相談室の拡充に努めること。あわせて、セカンドオピニオンを受けるために必要な診療状況を示す文書やデータ等の提供について、患者の求めに応じて迅速かつ適切に対応するよう、医療機関に周知徹底を図ること。
 七、がん専門医等の養成と配置については、がん治療の水準向上のために確保すべき外科医、放射線腫瘍医、腫瘍内科医、病理医、麻酔医などの医師その他の医療従事者の養成や常勤での配置、並びに新たな診断機器や治療機器等の開発、配備等の諸課題を検討するため、厚生労働省、文部科学省等の関係府省による連絡調整を随時行い、その協議内容を「がん対策推進協議会」に報告すること。
 八、放射線療法及び化学療法については、がん医療における重要性が高まってきていることを踏まえ、卒前教育、卒後の臨床研修の各段階において、適切な教育、研修が行われるよう、必要な措置を講ずるとともに、これらの分野に関する人材の育成と専門的な教育研究体制の充実を図ること。また、放射線療法の品質管理が十分に行われるよう、適切な措置を講ずるとともに、あわせて、専門的な人材の育成に努めること。
 九、がん専門医の研修については、国立がんセンター等におけるがん専門医育成のための研修コースを拡充するとともに、効果的な研修を可能とするための方策を検討し、必要な措置を講ずること。
 十、がん医療においてもチーム医療による対応の必要性が増していることにかんがみ、看護師、薬剤師、診療放射線技師等のコメディカル・スタッフの専門的知識、技術の習得が促進されるよう、必要な措置を講ずること。
 十一、地域におけるがん医療の充実については、医療計画におけるがん診療体制の整備に関して、地域の医療機関が、それぞれの診療レベルに応じて機能分担し、連携を強化することによって、質の高いがん医療を適切に提供できる体制を整えること。
 十二、緩和ケアについては、がん患者の生活の質を確保するため、緩和ケアに関する専門的な知識及び技能を有する医療従事者の育成に努めるとともに、自宅や施設においても、適切な医療や緩和ケアを受けることができる体制の整備を進めること。
 十三、がん治療に係る新薬及び新規医療機器の承認については、海外で使用されながら日本国内では未承認のために使用できない抗がん剤等の医薬品及び医療機器について、早期に使用できるよう、多施設共同研究の推進や、有効性・安全性に関する審査の迅速化など、なお一層の促進策を講ずること。
 十四、抗がん剤の保険適用について、認められている効能以外のがんにも有用性が認められ、薬事法上の承認を得た場合は直ちに保険適用とすること。
 十五、DPC(診断群分類別包括評価)対象病院の拡大に伴って、最善の医療を提供できなくなることがないよう、診療内容を検証するとともに、適正な診療報酬の設定に努めること。
 十六、がん登録については、がん罹患者数・罹患率などの疫学的研究、がん検診の評価、がん医療の評価に不可欠の制度であり、院内がん登録制度、地域がん登録制度の更なる推進と登録精度の向上並びに個人情報の保護を徹底するための措置について、本法成立後、検討を行い、所要の措置を講ずること。
 十七、予防・早期発見体制の充実については、がんの早期発見のための知識や予防法の普及を図ること。また、最新の知見に基づき有効性が高いと認められるがん検診を地域における検診の項目に位置づけること。
 十八、がん検診については、最新の診断機器の効率的利用や撮影技師の技能向上等により、早期発見率を向上させるとともに、がん検診の事後評価を推進すること。
 十九、がんをはじめとする生活習慣病の予防を推進するため、革新的ながんの予防についての研究の促進及びその成果の活用、喫煙が健康に及ぼす影響に関する啓発及び知識の普及を図るほか、喫煙者数の減少に向け、たばこに関するあらゆる健康増進策を総合的に実施すること。
  右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○委員長(山下英利君) ただいま津田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(山下英利君) 全会一致と認めます。よって、津田君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、川崎厚生労働大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。川崎厚生労働大臣。
○国務大臣(川崎二郎君) ただいま御決議のありました本法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存でございます。
○委員長(山下英利君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山下英利君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(山下英利君) 次に、請願の審査を行います。
 第一三号進行性化骨筋炎の難病指定に関する請願外千三百四十二件を議題といたします。
 これらの請願につきましては、理事会において協議の結果、第九六九号腎疾患総合対策の早期確立に関する請願外八十六件及び第一三六一号難病、長期慢性疾患、小児慢性疾患に対する総合的対策に関する請願外八十件はいずれも採択すべきものにして内閣に送付するを要するものとし、その他の請願はいずれも保留とすることになりました。
 以上のとおり決定することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山下英利君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山下英利君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(山下英利君) 次に、継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。
 社会保障及び労働問題等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出したいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山下英利君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山下英利君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(山下英利君) 次に、委員派遣に関する件についてお諮りいたします。
 閉会中の委員派遣につきましては、その取扱いを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山下英利君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十時二十五分散会