○戦傷病者特別援護法の運用について
(昭和三九年八月二八日)
(庶務第四五四号)
(各都道府県民生主管部(局)長あて厚生省援護局庶務課長通知)
標記のことについて別添のとおり問答集を作成したから、戦傷病者特別援護法の運用に資せられたい。
〔別添〕
戦傷病者特別援護法関係問答集(その一)
(注) この問答集において、戦傷病者特別援護法を「法」と、戦傷病者特別援護法施行事務取扱要領(昭和三十八年十二月二十七日援発第一二〇六号各都道府県知事あて厚生省援護局長通知)を「要領」と略称する。
第一 戦傷病者手帳交付関係
(問1) 法第二条第二項各号に規定する者で法第四条第一項又は第二項に該当するものが、犯罪等により傷病恩給等の受給権を失つた場合、戦傷病者手帳を受ける資格も同時に失うこととなるのか。
(答) 戦傷病者手帳を受ける資格は失なわないものである。
(問2) 戦傷病者手帳交付の際の障害の程度及び障害名は、いつの時点のものをいうのか。
(答) 現在の時点における公務上の傷病による障害の程度及び障害名である。
(問3) 有期の傷病恩給等の支給期間が終了し再審査を請求中であるが、未裁定の者に対する戦傷病者手帳の取扱いはどうするのか。
(答) あらためて傷病恩給等の裁定があるまでの間は、前に受給していた傷病恩給等における障害の程度により戦傷病者手帳を発行し、傷病恩給等の裁定があつた後において、裁定された障害の程度に改めること。
(問4) 有期の傷病恩給等の受給者の再審査の請求が、款症未到との理由で棄却されたが、障害の程度が第一目症又は第二目症と認められる場合は厚生大臣の公務上の認定を受けなくても戦傷病者手帳を交付できるものと解するがどうか。
(答) 法第二条第二項第一号に掲げる軍人又は準軍人であつた者については、戦傷病者手帳を交付することができる。
(問5) 傷病恩給等の裁定を受けていない者に係る戦傷病者手帳の交付については、厚生大臣に対し、公務上の傷病について認定を受けることとされているが、この場合に提出する書類のうち、履歴書については知事又は世話課長による奥書証明をする必要があるか。
(答) 貴見のとおりである。
なお、事実証明書、現認証明書等公務起因を立証する書類の写を添付する場合には、行政機関の長による奥書証明のあるものを添付されたい。
(問6) 終戦前から結核のため入院療養中の戦傷病者が、その後配給、選挙等のため入院中の医療機関の所在地を住所として住民登録を行なつているが、退院後は当然父母兄弟等の居住する他県へ帰り、生活することが確実視される場合、この者の援護の実施県はどこか。
(答) 現に住民登録をしてある市町村を管轄する都道府県である。
(問7) 戦傷病者が都道府県の区域をこえて、居住地を異動した場合、前の戦傷病者手帳の返還を受けた新居住地の都道府県知事は、新戦傷病者手帳の交付後、「要領」第九第二項により前の戦傷病者手帳を廃棄してよいか。
(答) 戦傷病者手帳の返還をうけた新居住地の都道府県は、当該手帳を、旧居住地の都道府県へ転送し、旧居住地の都道府県でその者に係る戦傷病者カードについて所要の整理を行なつたのち、手帳を廃棄すること。
(問8) 戦傷病者手帳記載事項の変更の届出があつた場合(都道府県の区域をこえて居住地を変更した場合を除く。)は、その内容を点検し、記載事項を訂正することになつているが、この場合の訂正印は知事印でなければならないか。
(答) 事務主管係長以上の者の印でよい。
第二 療養の給付関係
(問1) 認定外併発症に係る療養を要するかどうかの判断は医師にまかせて差しつかえないと思うがどうか。
(答) 貴見のとおりである。
(問2) 認定外併発症のうち歯科疾患についての療養の給付は、入院中の患者が、当該入院中の医療機関において受ける場合に限られているので、当該入院中の医療機関の診療科目に歯科がある場合とない場合とでは不均衡を生ずることとなるがどうか。
(答) 認定外併発症の治療は行政措置として行なうものであるので、現在の取扱いは、予算その他の事情からみて止むを得ないものである。
(問3) 療養の認定期間は、現在最高一年まで認められることになつているが、慢性疾患についてさらに延長することは認められないか。
(答) 慢性疾患であつても一年間程度の期間には症状の認られるのが通例であり、また、都道府県知事として常に患者の現状を把握しておく必要性からみて、この期限を延長することは考えていない。
(問4) 療養給付の認定のために都道府県本庁に医師を配置する必要があると思うが、どのように措置すればよいか。
(答) 都道府県本庁の生活保護法所管課の技術吏員を併任し、又は保険課の技官に事務を委嘱する等の方途を講ぜられることがのぞましい。
(問5) 「要領」第二五の第二号に、「診断書類の文書料の支払額は、健康保険において、結核予防法第三十四条による公費負担医療の申請に必要な診断書の記載を行なつた場合に支払う額と同額とする。」とあるが、具体的に御教示願いたい。
(答) 健康保険においては、結核予防法第三十四条による医療を受けるべき患者に対し、公費負担申請のために必要な診断書の記載を行なつた場合は、文書料として、慢性疾患指導料に相当する額の一〇〇分の五〇に相当する額を算定することとされているので、法による療養の給付(療養費の支給を含む。)を受けている者に係る診断書類の文書料もこれによることとしたものである。なお、戦傷病者である患者につきその請求手続に協力して医療機関が代行した場合は、健康保険の例によりさらに慢性疾患指導料に相当する額の一〇〇分の五〇に相当する額を算定することができる。
(問6) 看護の承認は、基準看護を実施していない一般医療機関に入院している患者について、「療養上特に必要がある場合」と限定されているが、具体的に御教示願いたい。
(答) 療養上特に必要がある場合とは、おおむね次のとおりである。
(1) 患者の症状が重篤であつて、絶対安静を必要とし、医師又は看護婦が常時監視を要し、随時適切な処置を講ずる必要がある場合。
(2) 患者の症状は必ずしも重要ではないが、手術のために比較的長期にわたり医師又は看護婦が常時監視を要し、随時適切な処置を講ずる必要がある場合。
(問7) 療養給付認定票により療養の給付を受けている者が略治等の理由で一且療養を中断した後再発した場合、療養の給付は受けられないか。
(答) 法附則第十一項の規定により当分の間戦傷病者と同様に療養の給付を受けることができる。
(問8) 体内にある弾の破片を摘出する場合、その戦傷病者の障害の程度が新五款以下であるため、更生医療は受けられないが、この場合療養の給付として、この留弾の摘出のための治療を行なわせてよいと思うがどうか。
(答) 貴見のとおりである。
(問9) あん摩、はり、きゆう、マッサージ及び柔道整復術の必要な患者に対して療養費の支給を認めてよいか。
(答) 健康保険の例により応急手当の場合を除き、医師の同意を得た場合のあん摩、はり、きゆう、マッサージ及び柔道整復術の施術について療養費の支給が認められる。
第三 更生医療の給付及び補装具の支給関係
(問1) 下顎盲貫銃創で更生医療を要する者について歯科治療(義歯製作)も必要とする場合は、更生医療券のほかに療養券も発行するのか。
(答) 貴見のとおりである。
(問2) 義手義足等については、常用および作業用があるが、常用のみを必要とする者については修理を行なう場合等を考慮し、常時常用を二個交付して差しつかえないか。
(答) 補装具の交付数は、原則として一種目につき一個であるが、障害の状態又は職業からみて、特に必要と認めた場合は、二個を交付することができる。
(問3) 交付した補装具の耐用年数経過前に、修理不能のため再交付の請求があつた場合は、その者の職業上等の理由によつて補装具の消耗度が高い場合等については、耐用年数経過前であつても再交付して差しつかえないか。
(答) 更生相談所の長の判定を求めたうえ、実情にそうよう再交付して差しつかえない。
(問4) 法第二十一条第二項の規定による業者との委託契約は、本法単独ではなく、身体障害者福祉法の規定による契約と合せた一つの契約として締結できないか。
(答) 単一の契約を結ぶことは技術的に困難であり、かつ、身体障害者福祉法の規定に基づく契約の場合とは、経費負担等の面において全く異つているので、別個の契約を結ぶことが望ましい。
(問5) 「要領」第四二によれば補装具の支給(修理)の請求があつたときに行なう更生相談所の判定は、特に必要がある場合に行なうとあるが、具体的に御教示願いたい。
(答) 初度請求については、補装具の種目にかかわらず、すべて更生相談所長の判定を必要とするが、耐用年数の経過等による再交付請求又は修理については、義手義足、装具、義眼等既製品によることができないものについてのみ判定を求めればよい。
第四 その他
(問1) 法第二十二条の国立保養所への入所を認められる重度障害の範囲はどの程度か。
(答) 恩給法表別表第一号表の二に掲げる第二項症程度以上の障害である。
(問2) 有期の傷病恩給等の支給期間が終了し、再審査を請求中であるが未裁定の者に対しては、とりあえず前に受給していた障害の程度により戦傷病者乗車券引換証を交付してよいか。
(答) 貴見のとおり実施して差しつかえない。
(問3) 戦傷病者乗車券引換証は、一二、六、四枚綴となつているが、誤記又は追加交付等の場合切り離して交付してよいか。
(答) 貴見のとおり切り離して交付して差しつかえない。