○更生医療の給付について
(平成五年三月三〇日)
(社援更第八九号)
(各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生省社会・援護局長通知)
標記について、先般、老人福祉法等の一部を改正する法律(平成二年法律第五八号)により、身体障害者福祉法の一部が改正され、平成五年四月一日より更生医療の給付事務が町村へ権限委譲されることに伴い、新たに更生医療運営要領を別紙のとおり定めたので、関係機関等に周知徹底を図られたい。
なお、昭和三三年一一月二六日社発第七〇七号本職通知「更生医療の給付について」は、平成五年三月三一日をもって廃止する。
おって、今回の改正により、昭和四五年一〇月二一日社更第八九号本職通知「先天性心臓疾患による心臓機能障害者に対する更生医療の給付について」、昭和五四年五月一〇日社更第五六号本職通知「じん臓機能障害者に対する更生医療の給付について」、昭和五五年五月二〇日社更第八二号本職通知「更生(育成)医療における形成外科的治療を担当する医療機関の指定について」及び昭和五七年三月二三日社更第四三号本職通知「音声・言語機能障害を伴う唇顎口蓋列の歯科矯正の更生(育成)医療を担当する医療機関の指定について」に定める更生医療の給付の決定等については、本通知により行うものであること。
別紙
更生医療運営要領
身体障害者福祉法(以下「福祉法」という。)に基づく更生医療の給付についての事務手続及び運営等については、法令及び別記通知によるほか本要領により行い、もって更生医療の適正な実施を図るとともに効率的な運営に努めること。
1 更生医療給付事務の委任
更生医療の給付の措置については、福祉行政の第一線機関である福祉事務所の長に事務を委任して行うこと。ただし、福祉事務所を設置していない町村についてはこの限りでないこと。
2 更生医療の給付申請
市町村長(更生医療の給付の事務を委任された福祉事務所の長を含む。以下同じ。)は、所定の手続による申請を受理した場合は、備付けの更生医療申請受理簿に記入し、かつ、申請者が申請の資格を有するか否かを検討し、申請の資格を有すると認められた者については、身体障害者更生相談所(以下「更生相談所」という。)の長に対し、更生医療の要否等についての判定(以下「判定」という。)を依頼するとともに、必要に応じ、申請者に期日を指示し更生相談所に来所させること。
なお、申請のあった者についてその資格を有しないと認められた場合には、「身体障害者福祉法施行細則準則について」に従って申請を却下すること。
3 更生医療の給付の判定
(1) 判定の依頼をうけた更生相談所の長は申請者について判定を行い、判定書及び付属書類(医療費概算額の算定基礎)を作成し市町村長に送付すること。
なお、更生相談所が行う巡回相談の際に判定を受けている者については、再度判定を行うことなく、巡回相談の際の判定結果を利用して差支えないこと。
(2) 判定は、申請者について、医学的、心理学的及び職能的に行うものであるが、特に医学的判定については、更生医療の給付の要否について的確な判定を行うことは勿論、更生医療の給付を必要とすると認められた者については、医療を実施する部位、具体的な治療方針、入院、通院回数等の医療の具体的な見通し及び更生医療の給付によって軽減される障害の程度について具体的に行うとともに、給付に要する費用の概算額の算定を行うこと。
なお、更生医療の給付に要する費用の概算額の算定は、指定医療機関に委託して実施する医療の費用(食事療養の費用を除く。)についてのみ健康保険診療報酬点数表によって行い、食事療養の費用については、健康保険食事療養の費用額算定表によって行うものとすること。また、老人保健法の対象者の更生医療の給付に要する費用の概算額の算定は、老人診療報酬点数表及び老人入院時食事療養費に係る食事療養の費用の額の算定に関する基準によって行うものとすること。
4 更生医療の給付の決定
(1) 市町村は、判定の結果更生医療の給付を必要と認められた申請者については、所定の調査書を作成し給付の決定を行い、更生医療券を交付すること。また、判定の結果更生医療を必要としないと認められた者については前記2の却下手続に準じて却下決定通知書を交付すること。
なお、給付の決定の際に指定医療機関に委託して実施する医療以外に移送等を必要とすると認められた者については、それらに要する費用額の算定を行った調査書を作成すること。
(2) 更生医療の給付と他の法律による医療の給付等との関係は、更生医療の給付の対象となる障害は、臨床症状が消退しその障害が永続するものに限られるので他の法律による療養の給付等とは対象を異にし、原則として競合することはないこと。
ただし、例外的に他法によるものと更生医療の給付とが同時に行われた場合には、本人が直接負担する部分についてのみ更生医療の給付の対象とすること。
(3) 更生医療券の交付に当たっては、次の点に留意すること。
ア 入院による更生医療の給付を受ける者には、病院、診療所用更生医療券のみを交付すること。
イ 通院による更生医療の給付を受ける者には、病院、診療所用更生医療券及び薬局用更生医療券の両者を交付すること。
なお、指定訪問看護又は指定老人訪問看護(以下「指定訪問看護等」という。)の給付を受ける者には、更に指定訪問看護事業者等用更生医療券を交付すること。
ただし、特に病院、診療所に処方せんの交付を求めない旨申し出た者には、薬局用更生医療券の交付は必要ないこと。
ウ 入院して更生医療の給付を受けている者が退院し、その後引き続き更生医療の給付を受けるときは、アにより薬局用医療券若しくは指定訪問看護事業者等用更生医療券、又はその両者を交付すること。
(4) 更生医療券に記載する医療費概算額及び有効期限は、判定書及び調査書に基づき記入すること。
なお、病院、診療所用更生医療券と、薬局用医療券若しくは指定訪問看護事業者等用更生医療券、又はその両者を交付する場合における医療費概算額については、病院、診療所用更生医療券にのみ記入すること。また、有効期限については、診療開始の時期等を考慮のうえ記入すること。
(5) 「福祉法第三八条第一項の規定により支払うべき額」(以下「自己負担額」という。)について負担能力の認定を行った結果、医療費の一部を自己負担させることに決定(「更生医療の給付又は補装具の交付若しくは修理を受ける者の負担すべき額の認定方法実施要領」を参照すること。)された者については、交付する更生医療券の自己負担額の欄に各月毎の自己負担額及びその支払期日を記入すること。
なお、病院、診療所用更生医療券、薬局用医療券若しくは指定訪問看護事業者等用更生医療券、又はその両者を交付する場合における自己負担額は、病院、診療所用更生医療券にのみ記入する。
ただし、慢性腎不全に係る自己連続携行式腹膜潅流(CAPD)について、医療機関が院外処方せんを交付した場合は、薬局用医療券に記入することとすること。このほか、CAPDに関する更生医療券の具体的な取扱いについては、「高額療養費制度の改正に伴う支給事務手続き等について」(昭和五九年九月二九日厚生省保険局保険課長通知)第四特定疾病によられたいこと。
(6) 更生医療の給付を委託する指定医療機関は、医療の具体的方針(指定訪問看護事業者等用更生医療券に記入する訪問看護の具体的方針を含む。以下同じ。)、地理的条件、申請者の希望等を考慮の上、決定すること。
(7) 医療の具体的方針は、判定書に基づき詳細に記入すること。更生医療券の該当欄だけでは記入が困難なときは、別紙に調製のうえ添付すること。
(8) 更生医療の給付の範囲は、更生医療券に記載されている医療に限られること。
(9) 更生医療の給付期間が必要以上に長期に及ぶことは、予算の効率的使用等の見地から厳に戒むべきところであるので、入院期間が三か月以上に及ぶものについての給付の決定に当たっては、特に慎重に取り扱われたいこと。
5 更生医療の給付の実施
(1) 市町村長は、身体障害者を委託した指定医療機関に対し、必要に応じ、治療経過・予定報告書(以下「報告書」という。)の提出を求めること。ただし、当該指定医療機関が薬局の場合はその必要はないこと。
(2) 指定医療機関において、医療の具体的方針を変更する必要がある場合には、報告書に変更を必要とする理由を詳細に記入し提出させるとともに方針変更・期間延長承認申請書を提出させること。
なお、当該医療が指定訪問看護等であるときは、当該訪問看護等に係る指示書を交付した指定医療機関より当該申請書を提出させること。
(3) 指定医療機関において更生医療券の有効期限を延長する必要がある場合には、報告書にその旨を記入して提出させること。この場合において単なる期間延長として認められる期間は、原則として、二週間以内でかつ、一回に限ることとする。この場合、更生相談所における判定は要せず、市町村長の判断により期間延長の承認を行って差し支えないこと。それ以上の期間を要するものについては、医療の具体的方針の変更として前記(2)の取扱いによること。
(4) 医療の具体的方針の変更又は期間の延長について指定医療機関より承認を求められた市町村長は、報告書に記載された内容について更生相談所等の意見を聴いて十分検討の上、変更又は延長が必要であると認められるものについては承認する旨を、変更又は延長を必要としないと認められるものについては承認しない旨を、それぞれ当該指定医療機関(当該医療が訪問看護等である場合は、当該指定医療機関及び当該訪問看護等を実施する指定医療機関。)に文書をもって通知すること。この場合において当初決定した自己負担額を変更する必要があるときは、受給者に対し文書をもって変更の理由並びに変更後の額及び支払期限を通知すること。
なお、変更又は延長を承認する旨の文書は指定医療機関において更生医療券に添付させ、また、更生医療の給付終了後の更生医療券は当該診療録又は指定訪問看護等の提供に関する諸記録に添付させておくこと。
(5) 医療費を支給する場合にあっては次によること。
ア 更生医療は指定医療機関に委託し現物給付によって行うことを原則としているので、給付に代えて費用を支給することは止むを得ない事情がある場合に限るようにされたいこと。
イ 移送費の支給は本人を移送するために必要とする最小限度の経費とすること。なお、家族が行った移送等の経費については認めないこと。
ウ 施術はマッサージのみ認めることとし、この場合は当該指定医療機関にマッサージ師がなく、かつ、担当の医師の処方に基づいて指定する施術所において施術を受ける場合にのみその料金を支給すること。
エ 治療材料費は、治療経過中に必要と認められた最少限度の治療材料及び治療装具のみを支給すること。
なお、この場合は現物給付をすることができること。また、運動療法に要する器具は指定医療機関において整備されているものであるから支給は認められないこと。
オ 移送費、施術料及び治療材料費の費用の算定は次によること。
(ア) 移送費の算定は、移送のために必要な最少限度の実費とすること。
(イ) 施術料は保険局長通知「はり・きゅう、あんま、マッサージにかかる療養費の支給について」により算定すること。
(ウ) 治療材料の算定は、その実費とすること。
カ 付添看護は原則認められないが、真にやむを得ない事情により付添看護料を支給する場合は、都道府県知事の承認を得たうえ、昭和三六年九月三〇日社発第七二七号社会局長通知「生活保護法による医療扶助運営要領について」別紙第6号「看護料の基準」により算定し支給すること。
ただし、本取扱いは平成八年三月三一日(健康保険法等の一部を改正する法律附則第四条第一項の規定による承認を受けた病院又は診療所にあっては、別に厚生大臣が定める日)までの間とする。
キ 更生医療の給付に当たり手術実施退院後医学的措置を必要とし、かつ、指定医療機関に通院することが困難である場合は、当該指定医療機関の処方により本人の近辺の専門医において給付を行うことは差し支えないこと。
なお、この場合は健康保険診療報酬点数表(老人保健法の対象となる者については、老人診療報酬点数表)により算定した請求書により、その医療費を本人に支給すること。
6 指定医療機関における診療報酬の請求及び支払
(1) 診療報酬の請求は、診療報酬請求書に診療報酬明細書を添付のうえ、当該指定医療機関所在地の社会保険診療報酬支払基金又は国民健康保険団体連合会(以下「基金等」という。)に提出させること。
(2) 自己負担額については、指定医療機関において本人又は扶養義務者から徴収させるものであるが、医療機関において徴収することができなかったときは、市町村長にその旨を報告させること。なお、当該指定医療機関における更生医療の給付に要する費用が自己負担額を下回った場合は更生医療の給付に要する費用を徴収させ、その旨を市町村長に報告させること。
(3) 指定医療機関において徴収できなかった自己負担額の全部又は一部を市町村において支払った場合には、市町村長は、その額を本人又は扶養義務者より徴収すること。
7 診療報酬の審査、決定及び支払
(1) 診療報酬の審査については「更生医療の給付に係る診療報酬の審査及び支払に関する事務の社会保険診療報酬支払基金への委託について」及び「更生医療の給付に係る診療報酬の審査及び支払に関する事務の国民健康保険団体連合会への委託について」の通知によること。
(2) 診療報酬の額の決定は、都道府県知事又は指定都市若しくは中核市の市長が行うこと。
8 指定医療機関に対する報告の請求及び検査
別添の更生医療指定医療機関指導監査要綱によること。
9 施行期日
この通知は、平成五年四月一日から施行すること。
別添
更生医療指定医療機関指導監査要綱
1 目的
この要綱は、指定医療機関に対し、身体障害者福祉法第一九条の六及び戦傷病者戦没者遺族等援護法(以下「援護法」という。)第二〇条に基づいて、都道府県知事又は指定都市若しくは中核市の市長(援護法によるものは都道府県知事)が行う報告の請求及び実施検査の要領を規定し、もって、指定医療機関における診療及び診療報酬請求の適正化を図ることを目的とする。
2 計画
(1) 対象の選定については、原則として、更生医療を取扱った機関について、年一回以上実施することとし、その順位は取扱件数の多い機関より行うものとすること。
なお、指定医療機関において不正又は著しく不適当な取扱いがあったと疑うに足りる理由があったとき、または、他法による監査又は立入検査の結果、当該法律による指定の取消を受けたとき及び特に必要と認められたときは、随時実施すること。
(2) 時期については他法による指導、監査、立入検査等の計画との調整を図るとともに地域又は季節による特殊事情を考慮し、検査の効果を十分にあげることのできる時期を選ぶこと。
(3) 指導監査班の編成については医師たる技術吏員及び事務吏員各一名以上をもって編成し、必要に応じて関係職員の協力を求めること。
なお、特に必要と認めて実施する検査には、主管課長が直接あたるように努めること。
3 実施
(1) 実施の時期が確定したときは当該指定医療機関に対し、あらかじめその日時等を通知すること。
(2) 実施に当たっては、あらかじめ当該機関に診療を委託した患者についての判定書、診療報酬明細書等により診療結果に関する問題点を確認するとともに、他法による指導、監査及び立入検査の結果について検討を行い当該機関についてその実情を把握しておくこと。
(3) 実施前に、なるべくその計画を医師会、薬剤師協会等の関係団体に連絡し、その協力を得るようにすること。
(4) 実施については以上のほか次の点に留意すること。
ア 検査に当たっては、公正かつ懇切丁寧な態度を保持すること。
イ 結果について、その概況を作成し、当該医療機関の確認を得ること。
ウ 終了後は、当該指定医療機関の責任者及び関係者の出席を求め是正、改善を要する事項について、具体的に指導を行うこと。
4 検討及び措置
(1) 検査終了後は、速やかに復命書を作成させ、提出させること。
(2) 関係者全員により復命書を検討し、その問題点及び今後の改善策等につき討議するとともに事後の検査実施の際の資料とすること。
(3) 検査の結果行政措置を要する指定医療機関には、次により措置すること。
ア 診療内容及び診療報酬請求に不当又は不正のあった場合には都道府県知事又は指定都市若しくは中核市の市長(援護法によるものは都道府県知事)より文書をもって注意を与え、かつ、不当又は不正のあった部分にかかる医療費の全部又は一部について返還させること。
なお、当該部分の支払が未だ行われていない場合には社会保険診療報酬支払基金及び国民健康保険団体連合会に速やかに通知し支払を停止すること。
イ 診療内容及び診療報酬請求に不当又は不正があり、指定医療機関として不適当と認められるものについては、指定の取消を行うものとすること。
また、国が開設する医療機関については、厚生大臣あて指定の取消を求めること。
5 確認
是正、改善方を指示した場合には期限を付しその報告を求めるほか、必要に応じ係官を派遣してその実行を確認すること。
なお、当該指定医療機関について実施前と実施後とを比較し、その成果をも併せて確認すること。
6 報告
実施の状況は監査の実施の都度厚生省に報告すること。