○市町村における医療の実施事務の取扱いについて
(昭和五八年二月二一日)
(衛老計第二三号・衛老保第一七号)
(各都道府県・指定都市老人保健主管部(局)長あて厚生省公衆衛生局老人保健部計画課長・老人保健課長通知)
市町村(特別区を含む。以下同じ。)における医療の実施事務に関する疑義について次のとおりの取扱いとすることとしたので、これにより市町村における医療の実施事務が円滑に行われるよう管下市町村を指導されたい。
目次
第一 医療の受給資格(問1―問30)
第二 一部負担金の減免(問31―問37)
第三 審査支払事務の委託(問38―問42)
第四 医療費の支給(問43―問48)
第五 レセプトの取扱い(問49―問57)
第六 その他(問58―問60)
第一 医療の受給資格
問1 居住地の認定は従来の老人医療費支給制度における認定と同様の取扱いと考えて差し支えないか。
答 お見込みのとおりである。
問2 年齢計算に関する法律によれば、七○歳の誕生日の前日をもって七○歳に達することとなるので、二月生まれの者もその月から老人保健法(昭和五七年法律第八○号。以下「法」という。)による医療の対象となるのではないか。
答 法による医療は、「七○歳以上の者」が対象となるが、誕生日の前日には「七○歳以上の者」とはならないので、誕生日が月の初日であるときに限り当該月の一日から、それ以外は当該月の翌月一日から法による医療の対象となる。
問3 A市からB市に転出した場合、A市においては健康手帳を回収するのか。
答 B市への転出時に健康手帳を添えてA市に届け出ることとされているが、その際A市においては健康手帳の医療受給者証を回収する等の措置をとり、健康手帳本体とともに届け出た者に返還する。
問4 A市からB市に転出したにも拘らず、本人が届出を怠ったため、保険医療機関等がA市の健康手帳により診療を行ってA市に費用を請求した場合はどうなるか。
答 A市長は、保険医療機関等に対し医療に関する費用の額を支払い、当該額を医療を受けた本人から返還させる。なお、その者がB市の健康手帳を提示しなかったことにつきやむを得ない理由があると認められるときには、B市長は、その者の申請に基づき、医療費を支給することとなる。
問5 七○歳以上の者又は障害認定を受けていた者が、医療保険に加入した場合、法による医療はいつから受けられるか。
答 医療保険に加入した日から受けられる。
問6 A市からB市に転入した七○歳以上の加入者等はB市においては、法による医療をいつから受けられるか。
答 B市に居住地を有するに至った日から受けられる。
問7 七○歳以上の加入者等がA市からB市に転出した場合、A市における法による医療の受給資格はいつまで存在するか。
答 A市の区域内に居住地を有しなくなった日まで存在する。ただし、A市の区域内に居住地を有しなくなった日とB市の区域内に居住地を有するに至った日が同じ日である場合は、A市の区域内に居住地を有しなくなった日の前日までとする。
問8 七○歳以上の加入者等がA市からB市に転出した場合であって移動に一日以上の日時を要した場合には、移動中に発生した傷病に係る医療費の支給の請求はどの市町村に対して行うこととなるのか。
答 住民基本台帳、国民健康保険等においては転出日の翌日が転入地において住所を定めた日とすることとされており、本法においてもこれに準じて、設問のような場合には転出日の翌日からB市長が法による医療を実施するものである。したがって、医療費の請求はB市長に対して行うこととなる。
問9 七○歳以上の加入者等が医療保険の加入者でなくなった場合又は死亡した場合、法による医療の受給資格はいつまで存在するか。
答 医療保険の加入者でなくなった日又は死亡した日まで存在する。
問10 例えば、長期(おおむね六か月程度)にわたり臥床している状態にあるいわゆるねたきり老人等については、障害認定の対象となると解してよろしいか。
答 現在の症状が下肢又は体幹の機能に障害があり、それが原因で臥床の状態にある場合であって、その症状が医師により令別表に該当し、かつ長期にわたり、回復の見込みがないものと診断されたものについては、障害認定の対象となるものである。
問11 国民年金証書、身体障害者手帳等により障害認定を行う場合の事務処理はどのように取り扱うべきか。
答 国民年金証書、身体障害者手帳等は、確認後直ちに老人に返還しなければならないものであるので、障害認定申請の際あらかじめ当該国民年金証書等の写し又は当該年金証書等の交付を受けている旨の申立書を提出させ、国民年金証書等と照合確認することとされたい。
この場合、照合事項、照合年月日等を明記するほか、当該照合を行った職員の記名捺印を付すことにより、照合確認の経緯を記録にとどめることとされたい。
なお、国民年金、身体障害者手帳、戦傷病者手帳、地方公務員共済関係等都道府県・市町村において、交付台帳等が保管されているものについては、あらかじめ関係者の協力を求め、名簿を作成しておくことなどにより対象者を把握するほか、対象者から申請があった場合にはこれらを活用して老人保健法施行規則(昭和五八年厚生省令第二号。以下「規則」という。)第二六条による添付書類の省略等の便宣を図るよう留意されたい。
問12 身体障害者手帳の記載事項のみでは、四級の下肢障害については、何号に該当するか明らかでないものがあり、この場合、福祉事務所長に照会して確認することとされているが、必ず福祉事務所長の証明によらなければならないか。
答 身体障害者手帳により四級の下肢障害者とされている者について、さらに窓口において、下肢障害の一号(両下肢のすべての指を欠くもの)又は三号(一下肢を下腿の二分の一以上で欠くもの)に該当するものであることが外見上確認できる場合には、福祉事務所長の証明は要しない。
なお、前記以外の場合で福祉事務所長の証明が得られないときは、医師の診断による個別認定の方法によられたい。
問13 国民年金証書により障害の状態にあることが確認できない者のうち、体幹機能障害等その障害が身体障害者福祉法施行規則別表第五のうちの一級から三級まで等に該当すると認められる場合には、身体障害者手帳により障害の程度を確認することとされているが、身体障害者手帳の交付を受けていない者についてはどのように取り扱ったらよいか。
答 できるだけ対象者に身体障害者手帳の交付を受けさせ、それにより障害認定をするものとするが、近くに身体障害者福祉法第一五条の指定を受けた医師がおらず、又は身体障害者更生相談所の巡回相談の活用も期待できない場合であって、かつ、ねたきりの状態にあるため遠方の指定医の診断を受けることが困難である場合には、一般の医師の診断書により個別に認定するものとする。
問14 昭和五八年一月二四日付け衛老計第八号通知第一の2の(3)に掲げる表に該当することの確認は、何により行うべきか。
答 厚生年金保険法、船員保険法による障害年金等の受給者については、障害年金証書等に障害等級等が記載されているので、これにより確認することとし、これ以外のものについては支給決定の際の支給決定通知書、認定権者の証明書等により障害等級等が確認できる場合には、これによって確認するものである。
問15 従来の制度における障害の程度の認定については、恩給法別表第一号表の二のうち特別項症から第四項症までに該当する者をねたきり老人等に該当するものとして取り扱ってきたが、これらの者について昭和五八年一月二四日付け衛老計第八号における第一の2の(3)に準じて取り扱ってよいか。
また、昭和四八年九月二七日付け厚生省発児第一五六号厚生事務次官通知に基づく療育手帳(重度障害の記載のあるものに限る。)の交付を受けている者についても、同様の取り扱いとしてよいか。
答 お見込みのとおりである。
問16 昭和五八年一月二四日付け衛老計第八号第一の2の(4)にいう「以上の方法により障害の程度を確認することができない者」とは、具体的にどのような者か。
答 国民年金証書及びその他の障害年金証書等によって障害状態の確認ができない者については、身体障害者手帳により障害認定を行うものであるが、老人保健法施行令(昭和五七年政令第二九三号。以下「令」という。)別表に定める障害のうち、精神障害、肝臓疾患、血液疾患、その他の複合疾患等については、身体障害者手帳の交付を受けることができないので、このような障害がある者の場合には医師の診断書により個別に障害認定を行うこととしているものである。
問17 障害認定に係る医師の診断書は、どのような様式によるべきか。
答 国民年金法の障害年金及び障害福祉年金の認定に使用される診断書の様式(国民年金法施行規則(昭和三五年厚生省令第一二号)様式第三号の(1)から(6)まで又は福祉年金支給規則(昭和三四年厚生省令第一七号)様式第一一号の(1)から(6)まで)に準じた様式を作成の上使用することとされたい。
問18 障害認定申請書に添付する医師の診断書は、医師であれば誰が作成したものでもよいか。
答 通常の場合、障害の種類に応じ、検査成績等所定の事項が記載された診断書であれば差し支えないものである。
ただし、精神障害については、原則として精神衛生法第一八条に定める精神衛生鑑定医の作成したものによることとするが、精神衛生鑑定医の診断を受けることが極めて困難な事情にある場合には、精神科の医師の診断書でも差し支えない。
問19 昭和五八年一月二四日付け衛老計第八号第一の2の(4)により、市町村長から都道府県知事に協議する場合はどのような手続により行うのか。
答 市町村は、申請者から提出された医師の診断書の写しに原本証明を付し、これを都道府県知事に送付して協議するものである。
都道府県では、当該診断書の写しにより令別表に該当するか否かをできるだけ速やかに審査し、その結果に基づき、市町村長に対し令別表に該当するか否か、該当する場合には令別表の何号に該当するか、有期認定をする場合その期間等必要な事項を文書をもって通知することとなる。
問20 昭和五八年一月二四日付け衛老計第八号通知の第一の2の(4)により、都道府県知事が障害認定の審査を行う場合の取扱い如何。
答 障害認定は、医学的判断を必要とするものであるので、医師に審査を依頼しその意見に基づいて処理することが必要である。
特に、本制度における障害の状態は、国民年金法別表と同様であるので、各都道府県において国民年金法による障害認定の審査に当たっている障害認定審査医員又は過去においてこれに従事していた医師等障害認定について経験ある医師に依頼することとされたい。
なお、医師の選任に当たっては、各都道府県国民年金課と緊密な連携を図り、外部障害、内部障害、精神障害の各分野に適任者が得られるよう留意されたい。
問21 有期認定の考え方及びその取扱い方針について教示されたい。
答 有期認定は、提出された診断書の症状等からみて現に障害の程度は令別表に該当するが、その状態が永続するものとして認定することは困難であると都道府県知事において認めたときに、一定の期間を限度として障害認定を行うものであり、当該期間経過後に、再度、障害認定申請書とともに診断書を提出させ再認定しようとするものである。
なお、有期認定の期間は、障害認定を受ける者の症状に応じ、おおむね二年間をめやすとして設定するようにされたい。
問22 障害認定を期限をつけて行うとすれば、次の認定が遅れて空白期間が生じたときは、法の適用はないのか。
答 お見込みのとおりであるが、そのようなことのないよう期限到来前に対象者に対してあらかじめ障害認定の申請手続をとるよう教示する等適切な措置をとられたい。
問23 障害認定が行われた場合、法による医療を受けられるのは翌月からであるが、有期認定の場合において継続して再度の認定が行われた場合も翌月からとなるのか。
答 設問の場合、最初の障害認定が継続しているものとみなして差し支えない。なお、有期認定をする場合は暦月単位の期間によって認定することが適当である。
問24 障害認定を受けている者の居住地がA市からB市に変わった場合、改めてB市で認定を受ける必要があるか。また改めて認定を受けるとした場合、法による医療が受けられるのは翌月からか。
答 障害認定は居住地の市長村長が行うこととなっているので形式的にはB市長の障害認定が必要となるが、B市長においては対象者が引き続き医療を受けられない特段の理由のない限り転入した日においてA市長が発行した障害認定証明書により認定を行うべきである。
なお、この場合における医療の開始日は実質的に障害認定が継続しているものとみなして転入した日とする。
問25 ねたきり老人等に対する医療の給付は遡及適用はないのか。
答 法第二五条第一項においては、第二号の「認定を受けたもの」に該当するに至った日の属する月の翌月(月の初日であるときはその月)から医療を行うとされており、認定の日を基準として考えることとなる。これは、従来の老人医療費支給制度における取扱いと異なるので留意されたい。
問26 七○歳以上の加入者等が、健康手帳を提示せずに被保険者証のみで法による医療を受けることができるか。
答 健康手帳は、法による医療の受給資格を証明するものであり、被保険者証を提示しても健康手帳を提示しない場合には法による医療は受けられないこととなる。
したがって、対象者に対し、必ず被保険者証のほかに健康手帳を提示することを周知徹底されたい。
問27 七○歳以上で健康保険の継続療養を受けることができる者に対し、法の医療は行うのか。
その者が他の医療保険の加入者である場合はどうか。
答 七○歳以上で健康保険の継続療養を受けることができる者がいずれかの医療保険の加入者である場合には法の医療を行うこととなるが、生活保護の被保護者であること等により、医療保険の加入者でない場合には、健康保険の継続療養を受けることとなる。
したがって継続療養を受けることができる者であってもいずれかの医療保険の適用を受けることとなる場合には、速やかに保険加入の手続を取らせたうえ、健康手帳を交付することとなる。
問28 日雇労働者健康保険の七○歳以上の加入者等に対して健康手帳を交付するに際しては、日雇労働者健康保険被保険者手帳(日雇労働者健康保険印紙をはり付けるべき余白のあるものに限る。)の提示を求めるだけでよく、その者が受給資格者票又は特別療養費受給票を所持していることまで確認することは要しないものと考えるがどうか。
答 お見込みのとおりである。
問29 日雇労働者健康保険の加入者の場合、健康手帳のほかに、受給資格者票又は特別療養費受給票を提示して医療を受けることとなるが、受給資格者票に受給資格の確認印がある月に診療を開始した傷病については、当該診療開始日から五年以内の間は、受給資格者票にその月における受給資格の確認印がなくとも法による医療を受けられるものと解してよいか。
答 お見込みのとおりである。ただし、法による医療を受けることができる者は加入者(診療月において受給資格の確認印がある受給資格者票を所持している者)に限るので市町村においてはこの点に十分留意されたい。
問30 健康手帳の医療受給者証の有効期間はおおむね五年間とされているが、日雇労働者健康保険の加入者の場合、加入者である状態が永続しない可能性があると認められるときは被保険者手帳の健康保険印紙をちょう付すべき余白の残存する期間に合わせて有効期間を設定することとして差し支えないか。
答 差し支えない。
第二 一部負担金の減免
問31 規則第二○条の一部負担金の減免に関する規定中の次に掲げるものの取扱いはどのようにするのか。
(1) その他これに類する災害
(2) その他の財産
(3) 著しい損害
(4) 重大な障害
(5) 長期間の入院
(6) その他これに類する事由
答(1) 爆発・盗難等をいう。
(2) 主たる生業の維持に供する田畑、宅地、家屋、機械、器具その他事業の用に供する固定資産(鉱業権、漁業権その他の無形減価償却資産を除く。)をいう。
(3) 被害金額(保険金、損害賠償金等により補填された金額を除く。)がその財産の価格のおおむね二分の一以上である損害をいう。
(4) おおむね令別表に定める程度の障害をいう。
(5) おおむね六か月以上の入院をいう。申請時点において主たる生計維持者が現に入院中の場合は、入院時点からの入院見込期間がおおむね六か月以上をいう。
(6) 干ばつ、冷害、凍霜害等による農作物の不作、不漁等により著しく収入が減少した場合又は事業又は業務の休廃止、失業等により収入が著しく減少した場合をいう。
問32 一部負担金の減免申請における特別の事由に該当することを明らかにすることができる書類とはどういうものをいうのか。
答 市町村長の羅災証明書等をいう。
問33 一部負担金の減免の申請後、減免証明書が発行されるまでの間に支払った一部負担金については、市町村長はその額について医療費として支給することになるのか。
答 お見込みのとおりである。
問34 一部負担金の減免は同一人に対して再度行いうるか。
答 一部負担金の減免は、特別の理由により一部負担金を支払うことが困難となる場合においてその間医療が受けられないことのないよう設けられたものであるから、同一の事由に基づいて再度減免することはありえない。
問35 市町村においては一部負担金の減免に関して、条例規則を定める必要があるか。
答 一部負担金の減免事務は、機関委任事務であり、したがって条例の制定は不要である。また規則の制定も要しない。
問36 保険医療機関等における一部負担金の減免の取扱いが適正に行われているか否かをどのようにして確認するのか。
答 一部負担金を減免した旨記入された診療報酬明細書が審査支払機関から送付されてきた際に減免証明書交付簿の記載と照合することによって、減免が適正に行われているかどうかを確認することとされたい。
問37 一部負担金を減免した場合、その額は、国、県の負担金及び基金の交付金の対象となるか。
答 規則第二○条及び関連通知に基づき適正に一部負担金の減免が行われた場合の減免相当額については、国、県の負担金及び基金の交付金の対象となる。
第三 審査支払事務の委託
問38 審査支払事務の審査支払機関への委託については都道府県が市町村に代わって統一して行うことになるのか。
答 社会保険診療報酬支払基金との契約については、事務の輻湊が予想されるので、その軽減を図る意味から都道府県知事が市町村長から契約締結のための委任を受け、市長村長に代わって契約を締結することとしている。なお、その場合の委任状は、左記の委任状によられたい。
また、国民健康保険団体連合会に委託するにあっては、原則として、個々の市町村長からの委託書の提出をもって行うこととしているが、都道府県知事が市長村長から前記の委任状に準じた委任状の提出を受けたうえ、一括して委託しても差し支えない。
問39 削除
問40 A県B市の区域内に居住地を有する七○歳以上の被用者保険の加入者等がC県において医療の給付を受けた場合の審査支払事務はA、Cどちらの県の社会保険診療報酬支払基金が行うのか。
答 C県の社会保険診療報酬支払基金が行う。
問41 都道府県国民健康保険団体連合会において、電算機による処理方式を採用しているため、老人医療費請求受給者別一覧表(連名簿)の様式によりがたい場合、当該受給者別一覧表の様式に掲げられた項目がすべて含まれるものであれば、異る様式を用いても差し支えないか。
答 お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
問42 審査支払機関に診療報酬の審査支払事務を委託する手数料は全額交付金として基金から交付されるのか。
答 当該手数料の額が、令第四条第二号に規定する厚生大臣が定める基準による額を超えない限り全額交付金として基金から交付される。
第四 医療費の支給
問43 法第三二条第一項の規定により医療費が支給される場合において、その受給者が支給申請後申請に係る医療費を受領しないで死亡したときは、当該受給者に係る遺産相続者に対して支払を行ってよいか。また、その受給者が支給申請を行わずに死亡したとき、その死亡後当該受給者に係る遺産相続者から支給申請が行われた場合も同様に支払を行ってよいか。
答 お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
問44 医療費支給を行う際に添える費用に関する証拠書類については、様式を統一的に示す考えはないか。
答 この証拠書類については、統一した様式を考えていないが、診療報酬明細書等を適宜補正して使用する等により、必要な事項が記載されたものであることが望ましい。
問45 海外旅行中の医療費は支給できるか。
答 市町村の区域内に居住地を有する者である限り支給できる。
問46 医療費の支給について審査支払機関に審査を委託することができるか。
答 医療費支給の決定に当たり、医師等の専門家がいる機関に対してその額の適否等について意見を聴くことは考えられる。ただし、その場合の委託費は審査支払手数料ではないから交付金の対象とはならない。
問47 保険者直営病院等においてその保険者の被保険者若しくは組合員又はその被扶養者以外の七○歳以上の加入者等が医療を受けることができるか。
答 保険者直営病院等においては、法第二五条第四項及び規則第一八条第二項により、その病院等に係る保険者の被保険者若しくは組合員又はその被扶養者のみが、医療を受けることができるものとされている。従ってその他の者については、いわゆる現物給付としての医療は受けられない。しかし、法による医療の受給資格を有している者が、やむを得ない理由によって保険者直営病院等で診療を受けた場合には、市町村は医療費の支給を行うことも認められる。
問48 はり・きゅう及びあん摩・マッサージに係る医療費の支給額は、施術料金から一部負担金に相当する額を控除した額を基準としてよいか。医師の同意を受けて最初に施術を受けた場合であっても、外来時一部負担金相当額を控除することとなるのか。
答 お見込みのとおりである。
第五 レセプトの取扱い
問49 被用者保険及び国保組合に係るレセプトの流れはどうなるのか。
答 被用者保険及び国保組合に係るレセプトは、保険者別医療費通知事務の委託契約において、審査支払終了後審査支払機関から老人保健連名簿(医療給付額内訳書)に添えてそれらの保険者に送付され、それらの保険者から一か月後に審査支払機関に返付されることとされている。その後それらの保険者から審査支払機関に返付されたレセプトは、審査支払委託契約に基づき、市町村に提出されることとなる。したがって、審査支払終了後直ちにレセプトが市町村に提出されることとならないため、審査支払機関はレセプトの代わりに市町村別連名簿を作成して市町村に提出することとなっている。
問50 市町村におけるレセプト点検は、具体的にはどのように行うのか。
答 受給資格の点検、重複請求、重複受信(多受診)の有無、請求点数(固定点数、縦計、横計)の確認、他法給付との調整の確認等を行うものであるが、詳細についてはレセプト点検要領(仮称)として示すこととしている。
問51 国保連から送付される当該市町村国保に係るレセプトの受付は、国保担当課、老人保健担当課のいずれになるのか。
答 老人保健担当課である。なお、当該市町村国保に対する保険者別医療費通知の内訳にはレセプトを添付することとされているから、老人保健担当課で受け付けたレセプトは国保担当課に送付され、国保担当課において資格確認その他必要な事項に関し保険者の立場からするレセプト点検が行われることとなろう。
問52 保険者は、送付されたレセプトに疑義がある場合、どのように対処すればよいか。
答 保険者は、疑義のあるレセプトに附箋をつけて審査支払機関に返付することとされたい。市町村は、保険者において疑義附箋が付されたレセプトが審査支払機関から送付されてきたときは、それに市町村におけるレセプト点検の結果明らかとなった疑義も加えて、審査支払機関に過誤調整依頼をすることとなる。
問53 レセプトが保険者から疑義がある旨の附箋をつけて返付されてきた場合で市町村がその必要を認めて審査支払機関に対して過誤調整の依頼をしたときは、その結果について市町村が保険者に通知することとなるのか。
答 市町村から審査支払機関に対して提出された過誤調整依頼の結果については、審査支払機関から市町村のほか、保険者に対しても送付されるので、市町村から保険者に対する結果の通知は要しない。
問54 保険者が一か月後におけるレセプトの返付を遵守しない場合、市町村長はどのように対応すればよいか。
答 一か月後の返付が遵守されない保険者については、保険者別医療費通知事務委託契約第二条の規定に基づく市町村長の指定を行い、以降当該保険者に対しては審査支払機関からレセプトを送付しない取扱いとすることができることとなっているので、この点も踏まえ、医療保険担当部(局)とも十分連絡を取りつつ保険者の協力を得ることとされたい。
問55 レセプトの保管の方法はどのように考えているのか。また、その保存期間は何年か。
答 レセプトは点検上の利便や医療以外の保健事業への活用等を考慮して、できるだけ個人別に一年分程度を手元に整理、保管することが適当である。
また、医療費支給の際の証明書類についても同様の取扱いとされたい。なお、レセプトの保存期間は五年間とされたい。
問56 対象者が既に当該市町村から転出しており、健康手帳の医療受給者証も回収済であるにもかかわらず、その者に対して医療が行われた場合等、医療機関の責に帰すべき過誤についてはレセプトを医療機関に返戻することとなると考えてよいか。
答 お見込みのとおりである。
なお、受給資格を喪失していても、健康手帳の医療受給者証の回収等がおくれている場合には、医療機関の責とはならないのでレセプトを返戻する手続きをとることはできない。
問57 保険者から加入者でない旨の附箋をつけて返付されたレセプトで市町村で加入資格を調査してもなお不明の場合には、医療機関に返戻することが可能か。
答 医療機関の責に帰すべき事由がない場合には、医療機関にレセプトを返戻する手続きをとることはできない。
第六 その他
問58 法第四三条において、市町村長は、医療に関して必要があると認めるときは、受給者又は医療担当者に文書の提出等を求め又は依頼することができるとされているが、この場合において「医療に関して必要があると認めるとき」とは、どういう場合か。
答 医療費支給の可否及び額の決定、給付制限及び給付調整事由の確認、第三者求償、不正利得徴収の可否及び額の決定、その他レセプト点検に伴い明らかとなつた事実の確認等に必要な場合である。
問59 市町村長が医療機関の請求に基づいて一部負担金を徴収する場合の方法はどうするのか。この場合医療機関に立替払をすることができるのか。また徴収した一部負担金の取扱いはどうなるのか。
答 市町村長は、医療機関からの請求に基づき、当該医療機関が善管注意義務を果たしたか否かを審査のうえ、国税徴収の例により一部負担金を徴収し、医療機関に対してこれを交付するのであるから、市町村が立替払をすることは認められない。なお、この一部負担金は、本来医療機関の収入になるべきものなので市町村の徴収金とはならず、歳入歳出外現金として取り扱う。
問60 次に掲げる債権の時効の起算点及び時効期間は、どのように解すべきか。
(1) 法第三二条第一項の規定による医療費の支給請求権
(2) 法第二九条第一項の規定による医療に関する費用の支払請求権
答1 時効の起算日は、権利を行使し得るに至つた日の翌月であり、次のとおりである。
(1) 当該医療費に係る医療が行われ医療機関等にその費用が支払われた日の翌日
(2) 診療月の翌月一日
2 時効の期間については、次のとおりである。
(1) 法第八二条の規定により二年間
(2) 民法第百七○条第一号の規定により三年間。ただし、地方公共団体立の保険医療機関等の場合は、診療報酬が当該地方公共団体の使用料となるので、地方自治法第二百三六条第一項の規定により五年間