靴には様々な形のものがあり厳密ではありませんが、ファーマル向きのものとカジュアル向きなもの があります。(これは羽根仕様や底材、素材によっても変わってきます。) ここでは靴の形を写真で紹介するとともに上の方がよりフォーマルに合う靴、 下に行くほどガジュアルになるようならべています。
基本型
オペラ・パンプス:Opera Pumps パーティの際、タキシードとあわせて着用するリボン付きのスリッポンで エナメル素材のものが定番です。 尚、ディレクターズ・スーツの場合には、ストレート・チップを合わせるのが基本。
ストレート・チップ:Straight Tip 1920年代に広まったバルモラルの一文字飾りの靴で、 メダリオンが無く黒色のものが最もフォーマルとされています。
最近では、ブルーチャーのものも多く、よりカジュアルに履くこともできます。
英国ではストレート・トゥ・キャップと呼ばれます。
一文字にメダリオン(穴飾り)があるものをクォーター・ブローグ、プレーン・キャップ・トゥ、パンチド・キャップ・トゥなどと呼びます。
加えて、トゥ・キャップにメダリオンのあるものをセミ・ブローグ、メダリオン付きキャップ・トゥなどと呼びます。
写真はバルモラルのストレート・チップです。ウィング・チップ:Wing Tip W型のつま先飾りがあるものその形からこう呼びます。(英国では内羽根式のものをフル・ブローグと呼び、外羽根式のものはダービー・フルブローグと呼ばれます。)
16世紀から17世紀、アイルランドやスコットランドの高地で 履かれていた編み上げ靴に由来します。
ウィングは単なる飾りではなく、通気性や水切りをよくするといった目的が あり、ギザギザのカットのことをブローギングといいます。Campus Wing Tipと呼ばれる1920年代後半からある伝統的な靴もこの一種で、この靴の場合、ウィングがロング(ウィングが長く靴後部まで伸びている) になっています。
(別名ロング・ウィング・チップで米国式のウィング・チップ。通常のウィング・チップは英国式。)
また、特にフル・ブローグの爪先のメダリオンが無い(隠した)ものをブラインド・フル・ブローグと呼びます。
写真はバルモラルのウィング・チップです。プレーン・トゥ:Plain Toe 1810年代後半から広まった陸軍のハーフブーツが原形で、最も基本的な 形であるため応用範囲も広い靴です。
現在のプレーン・トゥは外羽根式のものが多く、写真もブルーチャーです。Uチップ:U Tip 1936年に登場、別名ノーウィージャン・オックスフォード、 米国ではオーバーレイ・プラッグ・シューズとも呼ばれています。 元々はゴルフの際に履かれていたもので、特にコンビネーションのモデル (一部分の革の色が違う)はゴルフ・オックスフォードと呼ばれることも あります。
日本ではモカシンがU字型であることからUチップと呼ばれます。
Alden社の靴の中には、U部分が尖っていてその先端から縦に縫い目が あることから、Yチップと呼ばれるものもあります。 (まれにVチップという呼び方をされることもあります。)写真はブルーチャーのUチップです。
モンク・ストラップ:Monk Strap 15世紀頃アルプス地方の修道士(モンク)が履いていたストラップのある靴が 起源で、英国で好んで履かれています。
最近ではストラップが2つになっているダブル・モンク・ストラップなども あるようです。チャッカ・ブーツ:Chukka Boot 起源はポロ競技用の乗馬靴といわれ、1930年代に米国で流行しました。
丈はくるぶしまであり、トゥはプレーン・トゥ、アイレットは2つか3つが 基本型です。ローファー:Loafer もともとノルウェーの農民、漁民が作っていたモカシン(Moccasin)縫いが 起源とされており、別名ノーウィージャン・フィッシャーマンズ・シューズ とも呼ばれ、1920年代英国で一般に履かれるようになりました。
ローファーはぶらぶらする人といった意味があり、この呼び名は米国が はじまりのようです。 甲部のストラップ(サドル)部分の穴にコインを挟むことができるものを コイン・ローファー、ペニー・ローファーと呼びます。
また、ベロにピンキングというギザギザの飾りがあるものやアウトサイド・クオーターが スキー・モックという真一文字に盛り上がった補強になっているもの、 ストラップの端がビーフロールという盛り上がった形で縫い付けられているもの等 があります。
発展形
タッセル・シューズ:Tassel Shoes タッセルとはくつのバンプ部分についた飾りのことで、ここではタッセルが 付いたものの総称をタッセル・シューズと呼んでいます。
元々は宮廷の室内履き。サドル・シューズ:Saddle Shoes 靴を横から見た際、中央にデザインの切り替えがあり、馬の鞍(サドル)の ように見えることからこの名称で呼ばれます。
正式にはサドル・オックスフォード。バンプ:Vamp 1950年代後半に流行した飾りの無いスリッポンのこと。 紐無しのオーバーレイ・プラッグ・シューズのこともさします。
ホールカット:HoleCut アッパーが一枚革でできているため、レースステイがなく、紐通し用の穴もアッパーに空いている靴のこと。
別名ワンピースとも呼ばれています。デッキ・シューズ
船のデッキで履かれていたことからこの名前で呼ばれるようになりました。
アッパーには水や塩に強いオイルドレザーが用いられ、ソールは滑り難いスペリー・ソールになっています。
セメント/セメンテッド製法 アッパーとアウトソールを接着剤のみで貼り付ける。縫い目がないので耐浸水性に優れ、コストも抑えられるが、排湿性は劣り、足にもなじみにくい。
グッドイヤー・ウェルト製法
19世紀にC.グッドイヤーJrらが開発した製法でアッパーはウェルトを介してアウトソールに縫い付けられている。ノルベゲーゼ製法の発展型でアッパーよりコバが張り出している。マッケイ製法より耐水性に富み長時間履いても疲れにくいが若干重い。
ノーウィージャン/ノルウィージャン製法
雪道歩行目的で生まれた製法で 防寒用の厚いアウトソールを縫い付けるため太い糸が使用される。無骨な外観となるが耐水性に富む。手間のかかる製法。
ノルベゲーゼ/ノルベジェーゼ製法
ノーウィージャン製法のブーツを見たステファノ・ブランキーニがこれをドレスシューズに応用し開発された製法
マッケイ製法
アッパーの端が内側に折り込まれ直接アウトソールに縫い付けられている。グッドイヤー製法よりはコバの部分がスマートでかつ 軽量で反りは良いが、耐水性、耐久性では劣る。イタリアの靴に多く見られる製法。
ステッチダウン製法
アッパーを足型に沿って外側に引き伸ばしアウトソールに縫い付ける製法。軽く屈曲性も良いのでカジュアルな靴に多く用いられる。また、コストもかからない。
ボローニャ/ボロネーゼ製法
イタリア・ボローニャ地方に 古くから伝わるマッケイ製法の発展型。トゥ部分は、アッパーとインソールを袋縫いにし、アウトソールの内側に釣り込み、ヒール(踵)部分はラストに沿って釣り込み、ミッドソールに固定する。
トゥ部分が袋状となるため、足当たりが柔らかく、ミッドソールとアウトソールにできるすき間に、緩衝材を入れることができるので、ウオーキングシューズなどにも用いられる。
但し、マッケイ製法に比べ手間とコストがかかる。ブラック・ラピッド/ラピッド製法
アッパーからアウトソールまで一発で縫うグッドイヤーウェルトとマッケイの中間的製法で反りが良く軽快な履き心地が特徴。
チロレーゼ製法
グッドイヤーウェルトにマッケイを加味した製法。ウェルトをL字に曲げ、2回のダシ縫いで、内側はミッドソール、外側はアウトソールに縫いつける。
インシーム製法
アッパーの裏革を袋状にし、中底面に縫いあわせる製法で屈曲性に富み足のあたりが自然なリーガル社独自の製法。
カリフォルニア・プラット/カリフォルニア/プラット製法
アッパー、裏革、中敷きを一体化して袋状に縫い合わせるソフトで屈曲性がある製法でG.T.ホーキンスが採用している。
オパンケ製法 ソールとアッパーの土踏まず部分を、ソール側を引っ張りあげあえて見える所で縫い合わせる意匠的な製法。
クレープ 表面が波打っているラバーソール。クッション性に富み滑りにくいが、柔らかい分減りやすい。レッド・ウィング社製ブーツのホワイト・トラクション・トレッドソールもクレープ・ソールとして有名。別名ウェッジ・ソール。
クレープ 生ゴムを収縮させて仕上げたラバーソールで、反りが良くクッション性に富む。クラークスのソールが最も有名で、トリッカーズの靴にも使用されている。 クレープ ラバーの表面が細かく波打っているソールで、オールデンなどのドレス・シューズに使用される。 ウェストン
J.M.ウェストン社の靴に用いられる 頑強なラバーソールでタイヤメーカーミシュラン社との共同開発。
ダイナイト
登山靴から発展した滑りにくく耐久性に富むダイナイト社製のラバーソール。
ドレス・シューズと合わせて用いられる事もある。
柔らかいため、革を一枚挟んでダブルソールとして使うのが一般的。ビブラム
アウトドアシューズに多用されるイタリア・ビブラム社製のソールで登山用から発展。
総称は、ラグソール。コマンド 名前の通り、軍用の靴に使用されたソールで、この凹凸パターンのものを呼ぶ。一般的にドレス・シューズにはあまり使用されないが、ビブラムに比べれば多く用いられている。 革
説明するまでもなく革底。 水にも弱く、滑りやすいが、排湿性に富み、足に馴染みやすい。
磨き板
リーガル社の靴底に使用される ラバーより固いプラスチックのような素材。
リッジウェイ・ソール
深めの刻みが入った英国製の ラバーソール。
スペリー・ソール 1935年ポール・スペリーが開発した細かな切れ目が入ったソールで、デッキ・シューズなどに用いられる。 チェーン・トレッド・ソール L.L.ビーン社で開発されたハンティング・ブーツ用のソール。
チャンネルソール 本底の周囲にU字型に溝を設け、その溝にだし縫いの糸を収めるように縫いこむ製法で、歩行時の糸の摩耗を防ぐ役目がある。 ヒドゥン・チャネル 本底の縁を極薄でめくり、だし縫いの糸を収める溝を掘ってから
だし縫い、その後この革をかぶせ、だし糸を隠す製法。カラス仕上げ 底一面を黒塗りした仕上げ。 半カラス仕上げ 底の地面にふれない部分のみを黒塗りした仕上げ。
「モカ」とはUチップなどで甲部分に縫い合わせるU字の革のことを言い、 モカの合わせ方によりそれぞれ縫製(モカ縫い)が異なります。
ちなみに、縫い合わされつまみあげられた部分を「モカ部」と呼びます。
乗せモカ縫い モカを本体甲部の上に乗せ、上下に縫製する方法。
落としモカ縫い
乗せモカ縫いとは逆でモカを本体甲部の内側から当て、 上下に縫製する方法。
合わせモカ縫い
モカを乗せ、本体甲部の革と裏面同士で合わせて、上部につまみあげて モカ部を横から縫い合わせる方法。
さらのこのモカ部に紐状の革を乗せ、合わせ部分を隠す場合もある。ヘビモカ縫い
まず、本体甲部の革を上に立て、次いで、モカの革の外周を折り曲げてから、 折り曲げた部分で本体甲部の立てた部分を左右から挟むようにして、 横から縫い合わせる方法。
すくいモカ縫い
モカを使用しないため、正しくはモカ縫いではないが、 プレーン・トゥの甲部をすくうようにして、モカ状のステッチを 入れる方法。
手縫いでは高度な技術が要求される為、高級な靴にしか見られない。