いい加減が偶然、ある家に焦点を合わせてしまいました。
「あれ!」
見たことのない家です。
少し古いけれども板張りの外壁で、しっとりと落ち着いた感じの白い家です。
まわりに囲いがあるわけでもなく。目立つ家というわけでもありません。
チコは望遠鏡から眼を外して望遠鏡の先をみてみましたが 
そんな家はどこにも見あたりません。
もう一度よく見てみようと 望遠鏡に眼をあてました。
焦点はその家の玄関の扉にピッタリと合ったままでいます。
扉の真ん中に小さな白い紙がピンで止めてあります。何か書いてあります。
微妙にレンズを回して紙に焦点をあわせ操作していくと文字がみえました。
STと書いてあります。名刺のようです。
「STとはST氏のことかしら?」
チコはST氏のことは話で聞いたことがありました。
その紙に焦点が合うのを待っていたかのように その扉が開きました。
「お入りなさい」と扉の影から顔をだしたのはST氏その人でした。
あまりの突然に チコは驚いて望遠鏡からおもわず眼を離しました。
眼を離すと もとの自分の部屋です。
もう一度 望遠鏡に眼をあててみます。 ST氏が眼の前にたっています。
「お入りなさい視えずの部屋へ」ST氏は また優しく声をかけてくれました。
チコは望遠鏡を片眼につけたまま部屋に通されました。