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allein in Deutchland

97年9月28日 11日目
アムステルダムから飛び出そう

雑然の町アムステルダム

アムステルダム中央駅を出る。東京駅の見本になったといわれるアムステルダム中央駅の本屋(駅舎)を見るが、どうもあまり似ていない。似ているのは煉瓦と白いブロック程度である。しかし「煉瓦と白いブロック」の外観は、建物自体が似ていなくても「似ている」と言わせしめるほどのインパクトを見る者に与える。

それにしても、ドイツの他の街に比べると圧倒的に多くの人があふれている。街の中も広告看板があふれている。少し横道に入ってみる。到着した時間が5時半と遅いこともあって、4〜5階建てのビルが幅4mの道路の両側にそびえており、路面が影になっており全く日が射さない。そして道ばたには目のうつろな青年がしゃがんでおり、下手に目を合わせると追いかけられそうである。建物の中はポルノショップやガンガンに音楽をかけているコーヒーショップ(大麻などオランダで合法化されている軽麻薬を扱う店)などが並んでおり、いかにも治安が悪そうである。地図を見てみると市内で最も危険な地区であることが分かったが、このあたりがアムステルダムで最初に開けた土地である。

アムステルダムの風景としてよく運河と赤白の煉瓦の建物が整然と並んでいる風景が出されるが、実際には半分本当であるが半分大嘘である。街には派手なネオンが溢れ、電飾看板が赤白の煉瓦の建物に載っかり、様々な人種の会話が聞かれる、雑然を極めた街であった。ここまでドイツのそれも整然としたところを回ってきたので、なおさら雑然感が強い。

最後の夜

今晩は唯一オランダでの宿泊である。駅から20分ほど歩いて日本で予約してきたホテルに入る。例によってカウンターにバウチャーを出してすぐにチェック・インする。このホテルは客待ちの人やら何やらでロビーが賑やかである。荷物を整理した後、手持ちのお金を数えるが、オランダ入国時に100DMを両替しただけでありあまり余裕がない。いろいろ思案したが、遊び半分で買っておいた米ドルを持っていたことに気づいて、街の両替屋で両替してもらって10ドルが18NLG(オランダギルダー:1NLG=約60円)に化ける。

オランダ料理といっても何があるのか思いつかない。昼はナシゴレン(インドネシア風カレーチャーハン、全然辛くなく粉っぽい味がする)を食べた。その代わりオランダが移民国家であるためか、アムステルダムでは世界各国の料理が揃っている。夕食はどうしようと思案するが結局イタリア風レストランと無難な選択をした。余りの無難さに自分でも呆れ返ったが、ここでビールと「夕定食(肉のソテー)」を食べる。23NLG(約1400円)。この旅行中はこれでもほとんど酒は飲まなかったが、まあ最後だったのでビールを頼んだ。8時を回って日が暮れてきたが、アムステルダムの喧噪は収まらない。この晩はまっすぐ帰ってホテルの部屋で荷物をまとめ、すぐに寝た。何人かでまとまって旅行に来ているのだったら、こんなに早く寝てしまうこともないであろう。

帰国の日

最終日の9月28日(日)朝、日記の続きを書いているうちに朝食の時間になる。近くの席で日本人観光客が「あぶない刑事」の話をしているのを聞きながら、質素なコンチネンタルの朝食を食べる。

今日は日曜日であり、どの店も観光名所も午前中は休みである。建物前に整然と並んだテーブルと椅子が所在なさげである。することがないので市電で街を一回りする。こちらの市電は車掌が乗っており、切符を持っていない時は一番後ろから乗り車掌から切符を買う。アムステルダムではセルフサービスはなじまなかったのだろうか。市電の路線は市内を網の目のように張られており、電車はこれらを縫うように走る。さすがに中心から離れると派手なネオンや看板などもなく静かな町並みが続く。運河のすぐ脇が道路になっており、自動車が運河に落ちそうなほど幅を寄せて駐車している。

今日は天気が悪く、霧がかかっている。今晩はロンドン廻りで成田まで帰国するが、ロンドンでの乗換時間があまりなく、飛行機がが遅れてしまうと帰国できない。そのことが不安になって、11時頃になって今日の予定を全て切り上げて空港に行くことにした。ホームに停まっている2階建て客車に乗り込む。

スキポール空港

午前11時半、アムステルダム・スキポール空港到着。駅構内にいくつも放置されているカートを1台借りる。ここスキポール空港は世界でも有数の大空港であり、滑走路が複数用意されている。カートを押しながら一通り空港内を見て廻る。搭乗予定のBA(英国航空)439便は予定通り運行する旨が出されている。

空港内のバーガーキングで昼食を済ませ、スーパーに行ってお土産をいろいろ物色する。お土産は生活食品など日本では手に入らないもの中心に選ぶ。ドロッペというアメがあるが、これは日本に持ち帰って試食したところこの世のものとは思えないほどまずかった。こちらオランダでは魚の加工品が比較的多く売っており、その中に「ウナギの薫製」がある。日本に持ち帰って食べてみると、極厚ベーコンみたいな味がして結構おいしかった。ここでギルダーを使い切る。カードの使える本屋に行ってドイツの鉄道雑誌を買う。

午後2時半、BAのカウンターに行って搭乗手続きを済ませる。空港内の免税店に立ち寄るが、ここアムステルダムの免税店は世界最大規模だけあって様々なものを売っている。日本語の免税店ガイドなども用意されており、ここで日本人が買い物しまくる様が思い浮かんで苦笑する。食料品店でお土産を少し補給。

さらばヨーロッパまた来る日まで(来るのか??)

午後3時半、出国手続きを済ませて指定された搭乗口に行って搭乗券を改札に通す。スキポール空港ではここで金属チェックがある。どうということもなく機械をくぐったら、金属探知器が反応してしまった。一瞬パニックになるが、すぐに腹巻き型貴重品入れにコインを入れていたことを思い出す。係官は手を上げさせて触診で金属物を探す。態度は丁寧であるがチェックは厳重に行われる。結局係官にほぼ全身をなでられた後、金属反応の原因となったコインを見せて無罪放免となる。

アムステルダム−ロンドン線は1時間おきに出ているシャトル便であり、客室乗務員も男性中心である。日本では見かけないボーイング757は程なく離陸し、ヨーロッパに覆い被さる厚い雲を抜けて飛んで行く。すぐに機内食が配られる。生ハムを挟んだサンドであった。飛行機はエンジンをゆるめながら北に向かう。この飛行機は着陸態勢に入ると静かな音楽が流れる。ヘッドフォンなどステレオが使えない着陸時の退屈を紛らわすと共に、「これが流れている時は着陸がうまく行っている」というサインなのだろうか。ロンドン着陸。1時間もかからずに午後4時5分(現地)着陸。

ロンドン・ヒースロー空港はターミナルは4つに分かれてあり、この便はパリ・アムステルダム間専用の第4ターミナルに着く。搭乗予定の日本行き便が出る、遠距離線専用の第3ターミナルに向かうのだがこれがなかなか不便であった。まず飛行機が第4ターミナルの所定ゲートに辿り着き、そこから降りるのに30分ほどかかった。そのあと、第3ターミナルに向かうバス乗り場に行くが、乗換を示す「Transit」の案内が消されている。そうしているうちに入国カウンターに来てしまい、道に迷ったのではと一瞬たじろぐ(入国カウンターで「for Terminal1,2,3」という案内が見つかった)。さらにターミナルで連絡バスが来なかったりで第3ターミナル到着は午後5時15分になってしまった。搭乗手続きを全日空の国外カウンターでさっさと済ませる。一安心してハロッズ(時の人ドディ・アルファイドの父親が経営しているロンドンの有名デパート)の免税店がある待合室を抜けて成田行きの搭乗口に向かう。ちょうどバングラデシュ航空の飛行機が夕日に照らされながら搭乗口を離れるところであった。

搭乗口に着いてしばらくしてから機内への案内がある。11日前の経験から廊下側の席を希望したのだが、搭乗手続きが遅かったため希望していた廊下側の席は取れない。定刻午後6時、全日空202便は夕日の中を離陸した。新聞が提供されるが、日本国内のトップニュースが「ガルーダ機墜落」というのは気分が悪い。このフライトは成田に着くのが翌日午後1時半のため、日暮れと夜明けがある。1時間ほどしてドイツ上空を飛ぶが、ここではまだ日は暮れていない。そして日もとっぷり暮れた午後8時、夕食が提供される。東京−ロンドン線ではご飯がなく、少々物足りない。

翌日午後成田着。さすがにフラフラになりながらスカイライナーに乗って帰宅。直後、電光石火でご飯を炊いて口一杯に頬張り、そのた瞬間、初めての海外単独行が無事に終わったことを実感した次第である。

(「ドイツひとりぼっち」完。お読みいただきありがとうございます)


更新日 2005.1.26
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