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allein in Deutchland

97年9月21日 4日目
あるドイツの日曜日

山越えの国際幹線

朝食を取らずにドナウエシンゲンの駅に向かい、分水嶺を越えてきたディーゼル列車に乗る。時刻は7時31分、朝もやが濃く、車窓は真っ白で何も見えない。Tuttingenという駅で下車、30分ほど待って111型電気機関車の牽くStuttgart(シュツットガルト)行き普通列車に乗り換える。この路線もちょっとした分水嶺越えがある。幅1メートルほどの細い小川が線路沿いに流れており、単線のトンネルを2・3くぐる。もう9時になろうというのに未だ朝もやが立ちこめており、山も麓しか見えない。しかしそれがかえってよい雰囲気を醸し出す。途中で、FS(イタリア国鉄)の列車とすれ違った。この山間のローカル線が実はイタリアまでの直通ルートであるとは信じがたい。

日曜日

シュツットガルトに近づいても高低差のある車窓が続いており、そこに一戸建てが張り付いている。10時半シュツットガルト中央駅に到着。日曜の10時半と言えばそろそろ人通りが多くなるはずの時間帯であるが、ドイツでは商店の日曜営業が禁止されているため、ショッピング街も人通りはまばらである。誰もいない中心街の電話ボックスで茨城の実家に電話をかける。ちょうど向こうは運動会が終わった後の夜7時、にぎやかな雰囲気が受話機越しに伝わってくる。

急坂の住宅地を迂回して駅までゆくバス(ノンステップバス)で駅に戻り、構内食堂(駅構内の食堂・売店は日曜日でも営業が認められている)で昼食を取る。カウンターでウイナーシュニッツェルというカツレツみたいなものと炒めたジャガイモを食べる。しかしこの料理、日本で言うところの「トンカツ」とは似て非なるものであり、油がベチャッとしておりくどい。キャベツ(油による胃もたれを中和する作用があるらしい)が欲しくなる。駅構内に入り、偶然行き合ったSLによる特別列車を見送った後、地下鉄でベンツ博物館へ。ここでは地下鉄が地上に顔を出し、路面電車と同じ線路を使って平然と道路上を走る。

ベンツ博物館

ここシュツットガルトは「バーデン・ヴュルテンベルグ州の州都」である以上に「メルセデス・ベンツ」の企業城下町であり、中央駅の屋上にもベンツマークが掲げられている。せっかくなので見学する。地下鉄を降りてすぐのところにあるカウンターに行くと「20DM払え」とのこと、確かベンツ博物館は無料のはずで、入場料を払うようになったとしても法外である。タネを明かせば別の遊園地のカウンターであった。

今度こそ間違えずに博物館シャトルバス(塗装から見ると博物館専用車両ではなく、市営バスでもない、珍しい民営バスだった気がする)に乗車、無事オフィス内の博物館に着く。ここの展示はまずエンジンから始まり戦前のクラシックカーが十数台も並んでいる。その中には戦前ナチスが日本の昭和天皇に寄贈した溜色の車両もいた。ボンネットの長いクラシックカーはデザインがどれも同じに見えるのに対し、戦後の車はデザインが実に多彩である。その中の1台、1954年製、ガルウイング(側面ドアが横ではなく上に開く)で真っ赤なインテリアのSLクーペを見たときは衝撃を覚えた。日本で言う昭和20年代にこんな「とんでもなく美しい」車を作ってしまうとは・・・。

帰りはSバーンで中央駅まで戻る。駅に着く直前に電車が出てしまって30分も待つ羽目になったが、おかげで目の前の貨物ヤードと三脚を構える白人男性2人を観察できた。鉄分の濃い非とはどこにでもいるものだ。入ってきた電車(420-415、なぜか番号を覚えている)はプラグドア(日本では観光バスにのみ採用されている)の新型車であった。

地域間急行

16時、シュツットガルトからIR(地域間列車=日本の「新急行(国鉄末期、日本でも内装を改装した車両を専用する「新急行」なるものが登場した・・・が、普及することなく果てた)」にあたる)2563列車でニュルンベルグに向かう。車内は大改装を受けており、もともとコンパートメント(個室)だったところのしきりが外されて3列シートが並んでいる。自分の前の席は学生らしい女性が座っており、車内で本を読んだり新聞の旅行欄を見たりしている。そのうちオープンサンドとジュースで食事をとり始めた。途中で廃線の跡を見たが、ドイツ鉄道の総営業距離は4万km、まだ優に日本の2倍を保っている。

18時、Nuernberg(ニュルンベルグ)到着。この列車はここから非電化区間に入るため、ここで機関車交換。小柄な電気機関車が切り放され、代わりにやってきたのは「共産圏設計」の234型ディーゼル機関車である。スマートなIR客車に連結されるとその武骨さは一際であり、機関車交換を見ていた子供たちもはしゃぐ。しばらくして列車は勇ましく排気をあげながら出発していった。

和食が恋しくなる人に

日は深く傾いているため、さっさと日本から予約した「インターシティ・ホテル」にチェック・インした。日本から連絡が取れるようにこのようなホテルを予約したのだが、立地は駅のすぐ近く、反対側に線路が見える。夕食は駅でマリネを挟んだパンを買って、部屋で食べる。堅いパンにマリネという取り合わせは日本人には考えつかない取り合わせであるが、実際に食べてみると悪くない。この魚のマリネ、食べてみると「しめさば」に似た味である。逆に言えば、ごはんと味噌汁さえ用意すれば完璧な「和食」ができる(和食党に朗報!)。でもドイツに来てから本格的なレストランに来て「これは!」というものは食べないままで終わってしまいそうだ。ここ「インターシティ・ホテル」は新しいホテルであり、部屋は清潔で広いが、残念ながら線路側の部屋ではない。夕食を食べたら洗濯もせずにテレビを見ながら眠ってしまった。旅行中は「早寝早起き」になっている。

続き(9.22:ニュルンベルグに滞在します)


更新日 2005.1.26
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