南の島へ(2000.9.3-5)

第5話 遠出だ 

バスの中でこぐ舟

朝、散歩で那覇港まで歩いていたら、突然の大雨。この旅行中はずっと天気がよかったが、さすがに今日はダメかな、と一瞬思った。だが、通り雨のようで、朝食を食べ終わる頃には止んでいた。

雨上がりの市内を少し歩いて、那覇のバスターミナルへ向かう。今日は、せっかくだから那覇以外の街をどこか見てこようと思う。行先は・・・まぁどこでも良かったのだが、ガイドブック等を見比べて、嘉手納基地の門前町であるコザ(沖縄市)が手頃で面白そうだったので、そこにした。

コザ方面は、路線バスの便がよい。便が良すぎてどれに乗れば良いか分かりにくいのが、31番(那覇-国道58号-コザ-泡瀬・東陽バス)のバスが丁度入って来た。背もたれの高い座席にもたれると、眠くなってくる。強い陽射しを浴びつつ、ゴトゴトと揺られながら、うつらうつらと舟をこぐのが、この上なく気持ちいい。

思い出してみると、沖縄でバスに乗ったときは、たいてい居眠りしていたように思う。一昨日もそうだった(琉球バスの老朽車。居眠りついでに降りる予定のバス停を乗り過ごした)し、昨日もそうだった(那覇交通の市内線。渋滞でバスが動かなく退屈だった)。

寝ぼけ眼で窓の外を見ると、バスは結構なスピードで走っている。以前見たことのある映画「男はつらいよ寅次郎ハイビスカスの花」では、我が物顔で跳梁跋扈するジェット機の下を、地を這うようにバスが走ってゆくシーンがあったが、現実はちょっと違う。道路が根本的に良いこともあるが、前の車を追い越したり進路を譲られたりで、ジェット機もハダシで逃げるハイピッチで飛ばしている。

国道58号を右に折れる。左手は米軍嘉手納基地の住宅が広がる。広々した庭つきの一戸建てが何百棟と並んでいるが、どうも端から見ていると長屋官舎のようでもある。坂を上がりきり、沖縄自動車道をくぐるとコザ到着。

コザという街

コザの中心部は胡屋(ごや)という場所だが、降りそこなって行き過ぎてから、炎天下を歩きで折り返してくる。途中、「いかにも沖縄」の赤瓦やブロック積みの家や、まだ沖縄の道路が右側通行だったころのマイクロバスの廃車体を見かける。

他の沖縄の町にもあるようなアーケードがかかった商店街を抜ける。まだ午前中だからか、商店街自体が退潮だからか、全然人通りがない。歩いているうちに、「旅館フロリダ」等の看板を見かけたりして思わず脱力。何しに来たのかと一瞬思ったが、それでも歩き続けると、嘉手納飛行場から延びる空港通りに出る。

空港通りに出た瞬間、自分が日本にいるのかどうか分からなくなった。ちょっとアメリカ風というかアメリカになりきっていないというべきか、そんな感じの「無国籍」な店が並んでいる。売っているものもジーンズとかアーミーグッズとかが多く、だからといってそればっかりではない。

嘉手納基地を一瞥し、もう少し歩くと、中央パークアベニューというもう一つの繁華街に出る。ここの建物は、全て白い建物で統一されており、幅広い歩道には緑が植えられている。南ヨーロッパのリゾートを彷彿とさせる、なかなか瀟洒な通りである。その中の一軒に入り、タコライス(チリソース・チーズ等タコスの具が乗ったごはん。コザが発祥である)をかき込む。

コザは面白い街だったが、昼間に出向いたのは失敗だった。先の空港通りも、この通りの店も閉まっているものが多かったこと。コザに行くなら夜に限る(那覇から近いので、夕方出ていって終バスで帰ってくるのが良さそう)。また、嘉手納基地内でのフリーマーケットや各種イベントが頻繁に開催されるので、事前にそれらの情報を調べてから行くと、この街はもっと楽しめるだろうと思う。

嘉手納基地を一瞥

コザから先は62番のバス(砂辺〜コザ〜嘉手納〜読谷)で嘉手納に出る。途中の嘉手納基地を一望できる「安保の丘」に立ち寄る。この62番のバス、15〜20分おきに便が出ており、なかなか便利である。

左手に嘉手納基地の滑走路、上空に飛行機を見ながら、嘉手納運動公園で下車。三差路の突き当たりがちょうど小高い丘になっており、見学者用の階段も整備されているいる。ここからはだだっ広い嘉手納基地と基地から離発着する飛行機が見える。筆者の目の前を米軍の輸送機がタッチしていった。

引き続きバスで嘉手納ロータリーに向かい、折り返し那覇−名護間の長距離バスに揺られて舟を漕ぎながら那覇に戻る。

エピローグ

中心部には入らず手前の泊で下車、外人墓地を見ながら海の方に歩く。さらに、那覇港や那覇の街を見渡しながら、那覇港にかかる泊大橋の大きなアーチを歩く。下の写真のように、見晴らしがすごくいいので、是非歩いて渡りたい橋である。そのまま臨海道路を歩いてゆくと、小さなビーチ(波の上市民ビーチ)があって、海水浴客が遊んでいる。もう9月なのに、ここはまだ夏が終わっていない。夏の陽射しが、逃げ切れずにとどまっている。

陽が傾いてくるた。最後に、夕食を食べに再度牧志の市場まで行ってみるが、まだ5時半というのに店内は混んでいる。時間がかかりそうだったので夕食は断念、もう一度市場を見回して、サトウキビを買って帰る。端の方をピリリと剥いて噛んでみると、結構甘い。

6時半をまわり、市内は夕暮れ。3日間で10万歩近く歩きに歩いた旅行が、ここに終わろうとしている。空港ゆきのバスは、帰りの観光客で結構混んでいる。ほどなく那覇空港に到着。沖縄らしさの感じられない出発ロビーで夕食を食べ、飛行機に乗り、隣の人と話をしたりパソコンで日記を付けたりしているうちに、2時間ほどで羽田空港に到着。

モノレールで浜松町まで出て、降りてみてビックリ。とても涼しい、というよりも寒さすら感じる。

いい気になって沖縄を歩き回っているうちに、夏は東京から完全に消え去っていたことを痛感した。

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