未来が壊れていく…




 その2

 

■国が国土が、海に沈む■
■世界規模で進む大異変■
  
 New!<温暖化ガス、2050年に半減が必須条件>
 国連の気象変動に関する政府間パネル(IPCC)第3作業部会は、07年5月4日、バンコクで開かれた会合で温暖効果ガスの削減についての報告書をまとめた。それによると、産業革命前からの温度上昇を、深刻な影響の少ない2度から2.4度で食い止めるためには、2015年までに排出量を減少に転じさせ、2050年には少なくとも半減させなければならない。(07年5月5日朝日)

 
  
 New!<今世紀末には最大で6.4度上昇>
 国連の気象変動に関する政府間パネル(IPCC)は、07年2月1日、温暖化は確実に進行しており、地球の平均気温は20世紀末に比べて1.1度−6.4度上昇する可能性があるという予測をまとめた。前回2001年の予測に比べて、最高値が高くなっており、温暖化の深刻さを浮き彫りにする報告書になっている。それによると、省資源で循環型社会を実現した場合でも1.1度−2.9度の上昇は避けられず、化石燃料に依存して高い経済成長を実現すれば2.4度−6.4度の上昇になる。温暖化に伴う海面の上昇は、19センチ−58センチと予測している。(07年2月2日各紙夕刊)
 
 
 New!<温暖化による被害額、2040年には年間1兆ドル>
 国連環境計画(UNEP)が06年11月に発表した報告書によると、洪水や巨大台風など、温暖化による異常気象の被害額は年々増え続けており、2040年ごろには年間1兆ドル(約118兆円)に達する可能性がある。それによると、世界の自然災害による被害額は、1950年から2005年までに間に、年6%ずつ増え続けており、平均気温が現在よりも少なくとも0.6度上昇するとみられる2040年ごろには、被害額が年1兆円を超えそうだという。(06年11月16日日経夕刊)
 国連環境計画が5年前の01年2月に発表した温暖化による損害総額は、2050年に農水産物被害や対策費用を合わせて、年間3040億ドル(約35兆4500億円)に上るというものだったが、06年の発表ではすでにその3倍もの被害額が見込まれている。

 
 New!<5度上昇までの衝撃プロセス>
 英国政府の諮問によって、英政府経済顧問で元世界銀行チーフエコノミストのニコラス・スターン氏がまとめた「気候変動の経済影響」と題する報告(スターン報告)が07年2月までにまとまった。
 それによると、温暖化による経済的な混乱は、世界大戦や20世紀前半の大恐慌なみ、としており、地球全体の気温は22世紀までに5度以上高くなる確立が5割を超えている。5度〜6度の上昇が起こった場合に世界の国内総生産(GDP)は5〜10%失われると予測している。
 具体的なプロセスとしては、世界の平均気温が1度すると、アンデス山脈の小氷河が消失し、5000万人が水供給の危機に直面する。
 2度上昇すると、アフリカで作物の収量が5〜10%落ち、マラリア感染の危機に直面する人が4000万人〜6000万人増える。ホッキョクグマを含む15〜40%の種が絶滅危機となる。グリーンランドの氷床が不可逆的に溶け始める可能性がある。
 3度上昇すると、アマゾンの森の消失が始まる。低い海岸地域で1億7000万人が洪水の危機に直面する。南ヨーロッパでは10年に1度の頻度で干ばつが起きる。
 4度上昇すると、豪州の一部で農業放棄となる。南ヨーロッパ、アフリカの広い地域で水不足となる。海岸地域に住む3億人が洪水の危機に直面する。北極海のツンドラの半分が消滅する。
 5度上昇すると、中国の人口の4分の1が水不足となる。ヒマラヤの巨大氷河が消える可能性がある。海の酸性化が進む。ニューヨーク、東京、フロリダでは高潮による被害。
 3度から5度の気温上昇は、今から12万5000年前の気温と同じで、この時の海面は現在より4〜6メートル高かった。こうしたことから、スターン報告では、「5度以上の上昇では、何が起こるかの評価は難しい」としている。(07年2月2日朝日夕刊)

 
 
 New!<ハリケーン急増、100年前の2倍に>
 米国立大気研究センターと米ジョージア工科大の研究チームは07年7月30日、北大西洋で発生するハリケーンが過去10年の間に急増し、100年前の2倍になっている、と英王立協会の電子版専門誌に発表した。最大風速が50メートルを超える強力なハリケーンも近年増えており、研究チームはこの海域の海面温度が100年間に0.7度上昇していることが原因だとしている。(07年8月3日朝日)

 
 <台風やハリケーンは凶暴化>
 気象庁気象研究所の推定によると、温暖化によって台風やハリケーンの発生数は地球全体で3割減るが、最大風速が毎秒45メートルを超すものは増える。米マサチューセッツ工科大のケリー・エマニュエル教授が05年夏に英科学誌ネイチャーに発表した解析によると、台風やハリケーンのエネルギーを表す指数は70年代以降、7割も増えている。同教授は、「温暖化でハリケーンの破壊力は増し、21世紀の損害は大きくなる」としている。(06年10月27日朝日夕刊)

  
 <CO濃度など観測史上最高に>
 世界気象機関(WHO)は06年11月、大気中のCO濃度が05年に前年より2.0PPM高い379.1PPMとなり、観測史上最高を記録したと発表した。18世紀後半の産業革命当時に比べると35.4%もの上昇で、ここ10年は平均1.9PPMずつ増え続けている。COと並ぶ温暖化ガスである1酸化2窒素(NO)濃度も05年には319.2PPBと観測史上最高を記録した。(06年11月4日日経夕刊)

 
 <今世紀末には海面が数メートル上昇か>
 温暖化によって今世紀末に海面が上昇する高さは、これまで予測されていた数10センチどころではなく、数メートルの上昇になると予測されることが分かった(06年3月24日付け朝日新聞夕刊)。米アリゾナ大学や米国立大気研究センター(NCAR)などのグループが、24日付けの米科学誌サイエンスに発表した。予測によると、今世紀末にはグリーンランドなどの気温が約13万年前と同じまで上昇することが分かり、これによって海面が2メートルから3メートル上昇する。この海面上昇が南極の氷床を不安定にして、さらなる海面上昇を招き、いまよりも4メートルから6メートルほど高くなって、約13万年前と同じ海面の高さになる、という。
 国連環境計画(UNEP)によると、モルディブなど海面上昇の危険にさらされる島国の損害額は、2050年には国内総生産(GDP)の10%を超える額になるものと懸念されている。
  
 <今世紀末には最大で5.8度上昇>
 気象変動に関する政府間パネル(IPCC)は、01年10月1日、世界の平均気温が1990年から2100年までに1.4度から5.8度も上昇するという報告書を発表した。「過去1万年以上に先例のない急激な温暖化」としており、これによる海水膨張と北極・南極の氷融解のため、海面は2100年までに最小で9センチから最大で88センチ上昇し、沿岸や島嶼地域では居住不能になる恐れがあるほか、旱魃による農業生産の低下、マラリヤなど病気の蔓延も懸念される、としている。
 とりわけ、日本付近の温度上昇は大きく、南日本で約4度、北日本で約5度の上昇が予想されている。
    
 
 <最初に水没する国ツバル>
 温暖化によって住民が消える最初の国は、南太平洋に浮かぶサンゴ礁の国、ツバルとなることが確実となってきた。人口約1万1000人。点在する9つの島の面積は合わせて26平方キロ、最も高いところでも海抜4−5メートルしかない。最近では高潮によって島の内部まで洗われるようになり、地下水が塩水化して生活と農業に深刻な影響が出ている。
 ツバル政府は、国そのものの水没に危機感を強めていて、10年ほど前からニュージーランドやオーストラリアに移民の受け入れを打診。ニュージーランド政府は年間75人を労働移民として受け入れることを表明したが、移住できるのは国民のごく一部にすぎず、このままでは大半の国民は島とともに海に沈むしかない、という。
 このためツバル政府は、温暖化防止に後ろ向きの米国などを国際司法裁判所に訴えるほか、温暖化に関係している大企業に対して損害賠償の訴訟を起こす準備を進めている。(02年8月9日朝日、8月11日日経)
 
 
  <バンコクは15年後に水没>
 タイ防災センターによると、温暖化による海水面上昇と地盤沈下などにより、1000万都市のバンコクは15年後には水没する可能性がある。少なくとも10月から4カ月間は水浸しとなって、都市機能がマヒする、という。(06年12月4日日経夕刊)
  
 
 <アフリカ諸国は大打撃に>
 国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)は06年11月、温暖化がアフリカ諸国に与える長期的な影響についてまとめた報告書を発表した。それによると、2100年までに海面が15〜95センチ上昇した場合、アフリカで最大7000万人が浸水や洪水による影響を受ける。ナイジェリアの商都ラゴスやエジプトのアレクサンドリアの一部は水没し、タイザニアでは約2000平方キロが水浸しになる。アフリカ経済の中心である農業も大打撃を受ける。(06年11月7日朝日)
 
 
 <米アラスカの小島は全村移住決定>
 ベーリング海峡近くにある米アラスカ州の小島シシュマレフは、温暖化によると見られる高波によって島の沿岸が年に15メートルずつ削られ、このままでは30年後に水没して消滅することが確実となっている。このため2002年7月、住民投票を行なった結果、500余人の村民全員が本土に移住することを決定した。移住費用は14億円と見積もられているが、予算のメドはついていない。アラスカの温暖化は世界平均の温暖化より10倍の速度で進んでいるという。(02年8月23日朝日夕刊)
 
 
 <モルディブは31万人が難民に>
 人口31万人のモルディブも海面上昇による国家消滅の危機に直面している。モルディブは1196の小島から成り、そのほとんどが海面からの高さが2メートル程度しかない。1987年、この国のアブドル・ガイユーン大統領は国連総会で「わが国は、温暖化によって絶滅に瀕している」と訴えたが、アメリカをはじめとして、二酸化炭素を大量に排出し続けている先進諸国の反応は冷たかった。1メートルの海面上昇の前にモルディブ国民はすべて移住を余儀なくされるが、31万人もの「温暖化難民」を、どの国がどれだけ受け入れることが出来るのか、問題は何一つ進展していない。

 
 <バングラデシュは数百万人が難民化>
 世界銀行が00年に公表した地図によると、海面が1メートル上昇すれば、バングラデシュの水田地帯の半分が冠水する。その場合、人口1億3400万人の同国で移住を迫られる人々は数百万人規模になるものとみられている。
 
 <上海の3分の1が水没、低地はどこも危機に>
 海水面の1メートル上昇で、上海は3分の1が水面下になり、中国、インド、タイ、ベトナム、インドネシアなど人口の多いアジア各地の低地、とりわけ稲作地帯は壊滅的な影響を受ける、と予測されている。
 
 <1ミリの海面上昇で海岸線は1.5メートル後退>
 米メリーランド大学環境科学センターの推定によると、海面が1ミリメートル上昇するごとに、海岸線は平均して1.5メートル後退する。海面が1メートル上昇すれば、世界各地の海岸線は平均して1500メートルも後退することになる。
 
 <海岸沿いの不動産は保険の対象外に>
 上記の場合、アメリカの場合だけでも、3万6000平方キロメートルの広大な土地が失われる。01年12月3日付けの読売新聞によれば、海面上昇を反映する最初の経済指標は、海岸沿いの不動産価格で、アメリカ・フロリダ州に家を保有する人たちは、家に保険がかけられないという事態が早くも始まっている、という。

 
 <オランダは国を挙げて水没対策>
 ライン川などスイスアルプスを源流とする河川の最下流に位置するオランダは、温暖化の影響がヨーロッパで最も深刻となっている。2040年から2050年までにライン川の水位は70センチ上昇し、異常気象によって降水量も6%増えると予測される。
 このためオランダでは、2015年までに550平方キロメートル分の水吸収地帯を建設し、2050年までにさらに550平方キロメートルを建設する。国土面積の3.3%にあたる大改造となり、政府が支出する費用は2020年までに日本円にして5200億円に上る。
 
  
 New!<砂漠化も地表の3分の1で進行中>
 国連大学は07年、世界各地で砂漠化が進んでいる地域は地表の3分の1にも達しており、農産物の減産などの被害額が現在でもすでに年間650億ドル(7兆7000億円)に上っているとする調査報告をまとめた。砂漠化の原因は、過剰な家畜の放牧や農地開発などだが、今後は地球温暖化の影響を受けて一層深刻になり、10年後には20億人が影響を受けて、5000万人が居住地を失うだろう、と報告は警告している。(07年8月2日日経夕刊)
 
 
 <世界の穀物生産量が急低下>
 国際稲研究所(IRRI)と米農務省農業研究局の研究によれば、穀物の成長期の気温が1度上昇するごとに、収穫量は10%ずつ低下していく。
 これを裏付けるように、世界全体の穀物収穫量の低下が近年、著しくなっている。2000年には穀物の不足分は1600万トンだったのが、2001年には2700万トンとなり、2002年の不足分は9600万トンとなった。2003年もこれに近い9300万トンが不足すると見込まれている。(03年10月19日読売)
  
 New!<開花も孵化も10年で14日早まる>
 デンマーク・コペンハーゲン大学などの研究グループによると、急激な温度上昇が進む北極圏のグリーンランドで、植物の開花や鳥の卵の孵化の時期が、1996年のデータと比較してこの10年間で平均14日余りも早くなっていることが分かった。調査対象となったのは、ヤナギ、ヒナゲシの仲間など植物6種、ハエ、蚊、クモなど節足動物12種、ハマシギなど鳥類3種の計21種の生物。植物の開花日は6種すべてで早くなっており、最も差が大きい種では21日早く、最も差が小さい種でも3日早くなっていた。鳥の卵の孵化も3種すべてで4日−10日早くなっていた。研究グループは「やがて北極圏の食物連鎖が乱れ、生態系に悪影響が出るだろう」と警告している。(07年8月20日日経朝刊)
 
  
 <渡り鳥の産卵時期に異変>
 温暖化の影響で、渡り鳥の産卵のタイミングに異変が生じていることが、オランダのフローニンゲン大学などの研究グループによって明らかになり、01年5月発行の英科学誌ネイチャーに発表された。調べたのは、西部アフリカの赤道近くで越冬し、春先に欧州に渡って繁殖をするヒタキ科の鳥で、過去20年に渡る温暖化に呼応して、産卵日が平均10日近く早くなっていた。
 研究グループでは、渡り鳥は産卵のリズムの狂いに加え、渡りをしない鳥が暖かい冬の間の個体を増やすことで、えさをめぐる争いが激しくなって生存が脅かされる、としている。

 

 
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