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小学生・早期英語教育の目的

 小学校での英語教育に、中教審からの提言が出ました。
 提言では、5年生から、週・1回の英語授業を組み込む予定です。年間、35時間ですが、はたして、これで どんな成果が期待できるのでしょうか? さらに、実施するための準備として、5〜6年を要するそうですから、その間は、月1回程度の、総合学習の時間を利用した英語遊びが続くわけです。 あまりにも、現状の子供達の英語力に対する危機意識が薄いと思います。
 現在、中学では、年間 105時間、週3回 の英語授業があります。 3年間で、315時間、家庭での学習時間を含めれば、500時間を越えます。
 しかし、この程度の学習時間では、国際化に対応できる英語力を獲得できないために、小学校からの英語学習を開始するのかと思いましたが、実際は、単なる 世論の批判かわしが目的のようです。まことに残念でなりません。
 こうなれば、もう 学校に頼ることなく、生徒 個々人で、英語学習に踏み切る以外に解決の方法は、ありません。
 では どうやって・・・?

 ここで、もう一度 スタート地点に戻って考えてみましょう。
 そもそも、英語を 公教育で小学生から学ばせる理由は何でしょうか?
 中学3年間では、現在の内容を習得させるには、時間数が足りないからでしょうか?
 そうではありません。
 時間数が足りないのではなく、内容そのものが不足しているからです。
 現在の中学生が学ぶ内容では、実用的観点から、足りない部分が多いからです。
 英語を聞く時間、英語を話す時間、 圧倒的に不足しています。
 現行の中学では、読んで、書いて、日本語に訳し、基本文を暗記する − これだけで目いっぱいの実態です。これさえできない子が数多くいます。
 聞く時間、話す時間が ほとんど無いために、英語の学習に成果が出てきません。当然、興味を失い、授業内容から取り残されていく生徒が多数出てきます。
 だから、小学校の段階で、英語を聞く時間、英語を話す時間を たっぷり取ることのできる学習カリキュラムを構成し、それに基づいて、学習を進める必要があるのです。
 そうすることによって、子供達が、英語に興味をもち、楽しさを覚え、中学に上がっても より一層、英語を学ぶ意欲を高め、文法の発展理解や、修得語彙数のUP によって、より高いレヴェルの英語力を獲得することが可能になってきます。

 ここで、具体的に、現行の中学での英語学習内容の問題点を考えてみるに、例えば、語彙数を例にとって考えてみましょう。
 現在、中学で割り当てられている語数は、1200〜1500 これを 先に小学校で覚えます。(内容的にみても、これらの単語の多くが、小学生の生活レベルです) そうすれば、中学校で さらに1500〜2000語を加えて、3000〜3500語が覚えられます。 これくらいの語数をもっていれば、日常会話には 十分なものになります。

 さて、ここで 重大な問題をひとつ指摘しておきたいのですが、以上の語句を覚えるのに、従来の中学英語では、文字中心に覚えていました。 これでは、文章を黙読、読解には 役立っても、リスニング、会話には 使えません。
 このことは、これまでの公立学校英語の学習法に 致命的な錯誤があったことになります。 英語は、言うまでもなく 言葉です。 言葉の中心・最初は 音でなければなりません。 この 音を ほとんど無視して進めてきたために、今日の惨憺たる結果、貧困な英語力を招いたと言えます。
 これからは、基本段階では、音中心に学習を進めます。 3500語のことばを 音から覚えれば、これだけで、かなりの英語力になります。
 今日の学習環境を見回すと、パソコン、CD、インターネット、 これらによって 容易に音からの学習が可能になりました。 3500語を 音から覚えるのに、なんら困難な点は見当たりません。 もし、あるとすれば、教える側の先生・教師に、そのような学習方法の経験が無いことだけです。
 時代の変化、環境の変化、これに 教える側、教育 そのものが対応する必要があるのです。
 “音”中心の 新しい学習法で英語を学んだ小学生・中学生は、やがて さらに高いレヴェルを目指して進む事ができます。
 7000語〜10000語、 12000語〜15000語 と 軽くステップアップ できるはずです。
 これは、今まで 特別、英語のできる人と思われていたレヴェルです。 しかも、音から覚えていれば、それ以上と言えるかもしれません。
 単語が音で理解されていない一例として、オペレイト、オペレイション、オペレイター があります。 音では、アパレイト、アパレイション、アパレイター と聞こえます。 この単語は、日本語でも そのまま使っていますし、ope の部分は、ローマ字読みになりがちです。 発音記号で、音を確認していても、実際 耳から聞くことが無いと、いざ聞いた時には、聞き取ることができません。
 現在の中学生、高校生は、このように ローマ字読みで覚えている単語が多く、まして 音として聞く時間が少ないために、正直言って 音に関しては お手上げの状態でしょう。 だから、学校の教科書以外の長い文章となると、音読すらできません。 発音に自信が無いからです。

 小学生、中学生、高校生が、 具体的に 自分の英語力を測る機会としては、英語検定試験があります。
 一般に 英検と呼ばれている 日本英語検定協会 が行う 実用英語技能検定試験を受けることによって、総合的な英語能力が判定できます。

 英検3級で 語句は 2100語、 準2級で 3600語、 2級で 5100語、 準1級で 7500語 1級は 10000語〜15000語 と なっています。

 これらの語句を、音で理解できれば、それぞれの級は、確実に合格できる力があります。 と言っても、今までの学習方法では、とても困難なことですが・・・。
 だからこそ、小学校からの英語学習が必要となってきます。 音を中心とした英語学習です。 これまでと全く違う英語学習方法になります。
 中学の英語を、前倒しして その補助とするような考えでは決してありません。 そのような捉え方で良しとする人は、時代の変化を理解できず、対応できない人と言わざるを得ません。
 日本の若者の英語力の弱さは、様々なデータから すでに世界の認めるところです。
 日本人として、教育先進国の国民として 実に不名誉な現実です。 そして、時代の激変は、私達を待っていてはくれません。 このままでは、多くの若者達が、国際社会から取り残されるやも知れないのです。
 もう、一刻の猶予もないことを自覚して、それぞれの責任で 問題解決に取り組みましょう。

 この深刻な問題を解決する手段は、現在までの公教育における英語の学習法の錯誤を改め、学習法そのものを 根本的に改革する以外にはありません。
 文章中心から、音中心へ、 そのために 小学校からの英語教育が絶対に必要なのです。
 しかし、これまでに述べたように、公教育の部分では、この転換は ほとんど期待薄です。 今回の中教審の提言をみれば、おそらく、今後、10年、20年 何も変わらないでしょう。ネイティブの“ALT”を強化したところで、授業での聞く時間、話す時間が、実効を生むためには、あまりにも少なすぎます。単なる外国人慣れで終るだけです。だとしたら、自ら 実用力のつく学習法を取り入れるしかありません。
 各々の家庭が、自らの責任と選択で、小学生からの 音を中心とした 英検3級レヴェルまでの基礎的な英語学習法に取り組むべきです。
 3600語段階まで、しっかりとカリキュラム編成された学習教材、これを基に、毎日 家庭で、音中心に、英語を学び続ける…
 これが、小学生からの英語教育に、今 最も必要なものだと思います。 これ以外に、日本の若者の英語力を実効あるものに向上させる道は無いと断言します。








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