秋元文庫との出会い

 秋元文庫との出会い。きっかけは”少ドラ”だった。

 NHK少年ドラマシリーズ「未来からの挑戦」。当時まだ小学生だった私にとって、あれほど夢中になったドラマは無かったと思う。主人公が中学生という自分に近い世代であるということやストーリーの面白さもハマッた要因には違いないのだが、圧倒的に私の心を掴んでいたのは、登場人物のひとり、「アスカ」だ。ちょっと暗めのキャラクターがとにかくカッコ良かった。当時どちらかというと感情をあまり表に出さないさめた子供”で通っていた私も、「アスカ」の登場シーンでは、照れまくって画面を直視できないほどだ。生まれて十年とチョッとしか経っていない私にとってそんなことは本当に初めてだった。

 ドラマが最終回を迎え、私は「アスカ」に会えなくなった(当時はまだそれほどビデオデッキが普及していない時代。我が家も当然ドラマを録画する術などなかった。)。そして少しでもドラマの余韻に浸りたくて思いついたのが原作本を手に入れることだった。ドラマのオープニングには確か”眉村 卓 「ねらわれた学園」「地獄の才能」”と表記されていたハズだ。1つのドラマに2つの原作。ちょっと不思議に思いながらも、私は仲のいい友達と二人で街の本屋を片っ端から探して回った。しかしそう簡単には見つからなかった。
 3軒目の本屋でも見つからず、がっかりしていた私達に、
 「こんなのならあるけど。」
と、本屋のおばさんが一冊の本を差し出してくれた。「二十四時間の侵入者」(眉村卓 秋元文庫)という本だった。「眉村 卓ならいいってもんじゃ…。」と思いながらパラパラと本を開いた私の目に思いもしないものが飛び込んできた。その本には数枚の絵が挿入されていた。
「これ買います」
私はとりあえず購入を決めた。なぜならそこに描かれていたのは、得体の知れない敵と戦う詰襟少年の姿、まさに「少年ドラマシリーズ」そのものの世界だったから。

 家に戻った私は、(目的の本は見つけることができなかったがせめて”それっぽい”世界に浸ろうと)早速買ってきた本を読み始めた。挿絵の中の詰襟少年に少しだけ「アスカ」をだぶらせながら。 ところが小説も中盤に差し掛かる頃にはもう「アスカ」どころではなくなっていた。私の心は小説自体にすっかりのめりこんでいた。決してドラマでは味わえないストーリー展開。そして実にタイミングよく挿入された依光隆のイラストが、まだまだ未熟な私の想像力を手助けしてくれた。そこにはもう「アスカ」の姿はなかった。私は「二十四時間…」をあっという間に読破した。

 それからというもの、私は完全に秋元文庫SFに夢中だった。本屋に行けば真っ先に”黄色く光輝く”秋元文庫の棚に向かい、念入りに未読のSF本のチェックをした…。
(caico)