ピカーッ
なんだよこれ!目が開けられない…
きゃっきゃっきゃっ…
(…何だ?子供の声か?)
(うん…でもどこかで聞き覚えのある気が…)
きゃっきゃっきゃっ、
起きて起きて~…もう時間だよ~…
これ以上見てると
…死んじゃうよ。
どきっ!
はっ!!
くすくす…
お帰りなさ~い。
あ、何だ。戻ってきたんだ。
あ~、ひよこちゃんの声か…
あっ!そうだ!!
ちょっと、ひよこちゃんたち!何やってたの!?
ちゃんと見ててくれてたんじゃないの?
私たちが感情の渦に危うく取り込まれそうだった時だって、
あんなに呼んだのに全然返事しないし!!
……。
本当にすごく危険な状態だったんだからね!!
あらま~全然気づきませんでした。
こはげちゃんの話で盛り上がっちゃってて。
こはげだかなんだか知らないけどさ~、
引き受けたからには責任持ってちゃんとやってくれないと!!
私たちがどれだけ大変だったと思って……
こわ~い。
顔が鬼みたい~。超うける~。
きゃっきゃっきゃ
お、おに…
(…ていうか、何?もう元に戻っちゃったの?ひよこちゃんたち。)
くすくすくす…
(まぁ、こっちの方が落ち着く感じがするけど。)
よう、お疲れさん!
はるちゃんのお父さん…。
あ、おじさん!家で待機してたんじゃないの?
ん?ああ、そうなんだけど…
なんとなくわかったんだよね、終わったことが。
だからちょっと来てみたわけ!がははは!!
……。
(どうしよう…さっきあんなの見た直後だから
ちょっと話しづらい…)
見ちゃったよ、おじさんの心の中。
おかげでいろいろなことがわかった。なぁ?
えっ?う……ん。
そうかいそうかい。へぇ~。
お嬢ちゃんも…おじさんのこと少しはわかってくれたかい?
おじさんも、鬼じゃなかったろ?ははは…
はい…確かにそれは…わかりました。
ありがとうございました。
はは、そりゃ良かった。
おじさんもさぁ、お嬢ちゃん達が頭ん中にいる間
ずうーっと眠ってたんだけど、
目が覚めた時、かなりスッキリした感じがしたっつーかさ、
はるちゃんに対して素直な気持ちで向き合えるような…
そんな気になってたんだよね、不思議とさ。
あ~確かに、今回のことがおじさんの心の
ちょっとした癒しになったのかも!…なぁ?
えっ?ん~。
何だよ、お前さっきから
中途半端な返事ばかりして。
あ…ごめん。
…あの…
……。
えーと…
ごほん、あの…確かにそれなりの癒し効果が…
偶然というか結果的にですけど…
ただ…
…ただ?
ただ…えーと…
…ううん、やっぱりなんでもないです。
ふぅ…。
(最後に見たはるちゃんの寂しそうな姿…)
(あれがどうしても気になって……)
……。
(ひょっとするとおじさん、
はるちゃんのこと、まだ完全には…)
…あっ!そうそう!!
あのさぁ…
おじさんが一瞬、和太鼓姿で出てきたんだけど、
あれってどういうこと?
おじさんが和太鼓?はて…
ちょっとわからねぇなぁ。
くすくす…くすくす…しらばっくれて…
あんなの観てるからじゃない!ねぇ~。
あ~あ~あれ?あれのことか?
あの子達が心を見ている間は
眠っててくださいって、あれだけ言っといたのに…
あんなもの観ながら妄想にふけって…
…キモいったらありゃしない。
おじさん、昼間っから何観てんだよ~。
……。
(あ~やだ。全然聞きたくない。)
だって、そんなの言われたってすぐに眠れねぇしさ。
それにどうしても観たくなっちゃってさ。大好きなんだよ…
三船敏郎主演・「無法松の一生」。
なんだ、これかぁ。
いい映画なのはわかるけどさぁ…
何も今観なくたって。まぁ、おじさんらしいけど。
いやいや、映画は観てない観てない!
デー・ブイ・デーのケース眺めてただけだって。
で、名場面をいろいろ思い浮かべてたんだよ。
三船がさぁ…もう最高なんだよ。男の中の男って感じでさぁ。
ああ、確かに和太鼓のシーンとかも浮かべてたかな。
でもひよこちゃんたちが来て、
「すぐにやめてください!」って、もうすごい剣幕で怒られてさぁ…
お嬢ちゃんたちが混乱するからって…
だって、おじいさんの場合
三船敏郎と自分を重ね合わせて妄想したりするから。
あれなら映画を観てもらったほうがまだましよ。
ひとっつも似てないのにね~。ハゲハゲ男のくせに。
ちょっと待ってくれよ!ハゲハゲ男なんて
さすがにそこまで言われたことは無いぞ!
あれ?ひよこちゃんたち、随分と
おじさんに厳しくなってるじゃん。
あんなに慕ってたのにさ。
くすくす…
慕ってる?冗談…
あたしたちを裏切るようなヤツは
地獄に堕ちろっていうことです。
いっぺん死んでみる?裏切り者おじいさん!
くすくす…
お、「地獄少女」ですね!…じゃなかった、
裏切りって…それまさか、
眠らないで
無法松…のDVDの箱見ちゃってたこと?
うんうん♪
…あ、そうか!
だから元のひよこちゃんたちに
戻ってたのか。なるほどね。
しかし、
たったそれだけで「地獄に堕ちろ」とは…
なんとまぁ恐ろしい。
まぁ、あれだな。とにかく
お嬢ちゃんにおじさんのことが少しでもわかってくれりゃーさ。
それで万々歳ってとこだな。はははは。
はい、それはもう…
分かりすぎるぐらい分かりましたので。
分かりすぎるぐらい分かっちゃった?
それはそれでちと困っちゃうなぁ~おじさん。がはははは…
あ、そうそう、もうひとつ。
「火の車」って小料理屋のことなんだけど…
何?火の車だと?
坊主、お前なんでそのことを…
そんなところまで子供たちに見せるなんて、
おいひよこ!!
そいつはひどすぎやしねぇーか!!おいっ!!
ビクッ!
えっ?何?何?急に…
私たちだって事前にブロックしときましたよ。
あんなの見せられるわけないじゃない。ね~。
ほっ
ならいいけどさ…
キッ!
でもあんたたちは知ってるんだよな!な!
絶対に黙っててくれよ!!もししゃべったら…
あー、興味の無いことは明日になれば
すっかり忘れちゃうんで。ご心配なく。
ちぇっ!「火の車」はNGだなこりゃ。
大人になったら行こうと思ってたのに。
しかし、おっさんあの店で何やらかしたんだ?
ますます気になるんだけど…
お兄ちゃん…
このことはあまり深入りしない方が…
人には“他人が絶対に入っちゃいけない領域”があるんだと思う。
ああ、わかってるよ。
「もししゃべったら…」…あの言葉で
オレもそう思ったから。
つづきはこちら。
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